第45話⁂小百合お嬢さん失踪!⁂
1973年4月某日、矢田静子は、学校での差別とモデル事務所での人間関係に疲れ果てて突如として行方不明となった。
母親の町子は近隣住民に静子が行方不明になった事を、涙ながらに吹聴している。
「静子がおらん!」
「どうしたと?」
「あの子はね~?学校でも朝鮮人だといじめられ、モデルの仕事でも行き詰まっていたのよ……静子ばかりに良い仕事が入るのでロ-カルモデル達から散々陰口を叩かれていたのよ、学校にも仕事場にも居場所をなくして……最近は家に籠りきりだったのよ!可哀想に!ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭そして急に家出してしまったのよワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」
「ばり気の毒い~」
実は静子は家出などしていない。
今井小百合として、今年度から東京で大学生活を送る為に、既に状況していたのだ。
矢田静子が今井小百合として生きて行くように仕向けた人物。
それはズバリ万里子お嬢様と幼い頃に行方不明になった父親で吉川会組長の忠なのだ。
万里子お嬢様にしてみれば、幸せな鎌倉での生活をメチャクチャに壊されただけでなく、おばあちゃんと母初美を精神的に追い詰めるだけ追い詰めて、早世(若死に)させた恨みは計り知れないものが有る。
それに(ATホ-ム)の継承者としての地位も追われ、こんな田舎に追いやられた恨みは想像を絶するものが有る。
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|小倉北区在住の幼少期から東京に出るまで✰矢田静子 |
|メジャーデビュー✰白崎緑 |
|結婚後✰山下小百合 |
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一方の静子の父吉川会組長は、静子が相談する以前に木村直樹から「静子にそっくりな娘がいる!」と聞かされていた。
そこで考えたのが{何とかこの小百合というお嬢さんと、娘の静子をすり替える事が出来ないか?}という事。
何故そんな無謀な企てを考えたのかというと、1970年代当時は、まだ朝鮮人や被差別部落というだけで就職や結婚に、かなりの障害があり静子の将来を案じて考えられた苦肉の策なのだ。
そんな差別も色濃く残る時代、様々な悲劇が起こった。
父の忠は、才能と美貌に恵まれた優秀な娘静子だが、朝鮮人男と被差別部落の女の間に生まれた静子の行く末を思うと、只々可哀想で、幾ら才能が有っても朝鮮人と被差別部落という事が分かってしまえば、きっと想像も付かない悲劇的な事が待っているに違いない、不憫で不憫で仕方が無い忠は切羽詰まって、横浜でも有数の富豪【ATホ-ム】の継承者で、静子にそっくりな小百合というお嬢さんと娘の静子をすり替えるという事を考えたのだ。
すると案外早くそのチャンスが巡って来た。
どういう事かというと、息子直樹の友達で、まだ高校生の万里子と言う女の子とグル-プ交際が続いているのだが、最近は何でも話せる関係で、家族事情も分かって来て、何ともとんでもない偶然が重なったものだ。
静子とすり替えたいと思っている小百合お嬢さんと、小百合の母を諸々の事情で、万里子お嬢様も恨んでいる事が分かった。
{これはチャンスだ!}
万里子お嬢様と吉川会組長の利害が一致した訳だが、小百合お嬢さんは、ある日突然行方不明になったのだ。
これは一体どういう事なのか?
ここにはとんでもないカラクリが隠されている。
すり替えようと思った矢先に、行方不明になってくれて手間のはじけた父の忠なのだが、その数年後に、やがてあの永田という毒牙に、静子共々金の無心で苦しめられる事になる。
そんな時に父の忠は、依然として吉川会の分裂騒動が続く中、とんでもない事を思い付く。
それでは、何故分裂が起きているのか説明しておこう。
戦後暫くは中堅暴力団だったのだが、先代の三代目組長吉川組長と現組長忠によって九州有数の指定暴力団に急成長した。
しかし、信望を一身に集めた三代吉川組長の死により、次期組長の継承問題が発生、直系組長たちは、それぞれ娘婿忠組長代行派と、若頭の林派に分裂しそれが現在も糸を引いている。
若頭の林にしてみれば{自分が戦後の混乱期から先代組長を支えてここまで急成長させた}と言う自負があり、昨日今日入って来た新参者なんかに譲ってたまるものかと徹底抗戦の構え。
そんな時に永田から「あの日本有数の不動産会社のお嬢様で、人気ミュ-ジシャン白崎緑が吉川組長と何か深い繋がりが有るかもしれません!」と聞いた若頭は{これは千載一遇のチャンス!何かとんでもない秘密が隠されているかも知れない!今度こそあの新参者の組長を蹴落としてやる!}
早速若頭はあの手この手を使い調べ上げた。
するととんでもない事が判明したのだ。
Kエージェンシ―に在籍していた水口静子を徹底的に調べて行く内に、吉川会組長が浮かび上がり、実は水口静子と吉川会組長は親子である事が分かり、尚且つ、そこから今井小百合のパスポートの写しを発見したのだ。
「何々~?そっくりじゃ~ないか?……ウッフフフ!これはとんでもない事だ!……組長もとんでもないドデカイ事を仕出かしてくれた者だ……面白い事になって来た!フフフ‼ワッハハハハ~!あの高慢チキな組長を今度こそ引きずり落して見せる!フフフ!今に見ていろ!」
「本当ですね!フフフ!」
こうして永田は吉川会若頭林の後ろ盾もあり、益々横柄な態度で緑を追い詰め金の無心をして来るようになった。
緑(静子・小百合)は度重なる金の無心に 心身共に疲れ切っている。
父の忠も心配になり四方八方手を尽くしている。
そこで考えたのが……?
{そう言えば静子は、大手芸能事務所ホープダッシュで永田と悪い意味での付き合いが続いている……だが誰も金の無心で繋がっているなど思っても見ない事…それはあんなとんでもない永田だが、外面がすこぶる良いので・・・そうだ!静子が失踪している事になっているから、以前から恋愛関係にあった2人は、静子の方は人間関係で疲れ、永田は金銭的に追い詰められて無理心中した事にして殺してしまえば良い?…行方不明捜索は今なお続いているが……どこかでめぐり逢い行方不明になった事にしてしまえば良い……もう10年以上も前に失踪した事になっている静子の身代わりの小百合お嬢様の遺体も、もう跡形もなく無くなって骨は雨に溶けるらしいから、雨ざらしで溶けて無くなっていくだろう?……だから証拠は残らないだろう。ましてや青木ヶ原の樹海の遺体の特定など出来る訳がない}
そこで息子の木村直樹に相談した。
どうして吉川会組長は小百合お嬢さんが、青木ヶ原樹海で亡くなった事を知っているのか?
やはり父の吉川会組長忠が、小百合お嬢さんを殺害したのか?
【優秀な国民である朝鮮人、今は差別はありません。
一方の被差別部落は、日本の【江戸時代の身分制度】1990年代になると、江戸時代の身分制度「士農工商」はなかったことが明らかとなり、2000年代には「士農工商」の記述は教科書から外されています。江戸時代の身分による上下関係を「士-農-工-商-えた・ひにん」という言葉で習った方も多いでしょうが、この認識も適切ではありません。現代では、職業選択の自由により、職業差別はありません。
江戸時代は、今の時代では考えられないような身分差別がありました】
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