第32話⁂試練!⁂
日本の歴史を紐解く上で戦争は重要なキ-ポイント。
日清戦争、日露戦争、第二次世界大戦
戦争で戦艦は重要な役割を果たした。
だが……1945年日本の落日。
日清、日露と勝ち進んできた日本は第二次世界大戦で長崎と広島に原爆投下されて、多くの死者を出して戦争の幕は閉じられた。
それにより造船業も縮小の一途を辿る事になる。
横浜の本郷の造船会社も大手の重工業(製鉄業・造船業の生産財を生産)に吸収合併させられて社長の座を追われてしまった。
時代の流れとは残酷なもの。
元来甘やかされて育った、お坊ちゃま育ちのこの本郷なのだが……父親から受け継いだ会社が、繫栄を極めていた背景には時代背景がある。
島国日本は大型戦艦が無くては攻撃はまかり通らなかった。
それと古参の幹部達の力あっての事だったのだ。
戦争が終わり、いきなり大海に放り出された形となった本郷なのだが、造船業で儲けた資金で、あれこれ事業に手を出したがどの事業も失敗に終わり、相当額の負債を抱えてしまった。
当然の事ながら若い妻は逃げてしまい、残されたのは借金と息子の満だけ。
大地主の婿養子に入っている本郷の弟も、見るに見かねて息子の満だけは仕方なく、弟の家の養子兼奉公人として貰われていった。
この本郷の弟はと言うと、兄の本郷とは大違いで非常に優秀な男で、大地主の一粒種のお嬢様と大恋愛の末結婚して今井剛が誕生していた。
養子兼奉公人といっても借金だらけの義兄の息子など、この家の跡継ぎにして妻佐和にしてみれば厄介者でしかない。
ましてやバックには、借金だらけの間抜けな父親が付いている。
手綱を緩めたら散々金の無心をされるに決まっていると考えた妻佐和は、満をまるで奴隷のように扱き使ったのだ。
それでも佐和の恩情で、あの時代珍しい旧制大学に通わせてもらった。
だが……扱いは目に余るものが有る。
時には奉公人や女中達に虐待まがいな事もさせていた。
要するに佐和にして見れば迷惑千万、ともかく気に食わない御荷物でしかないのだ。
散々虐めていびり出したいのだが、旦那さんの手前抑えている。
その代わりに奉公人に手荒い真似をやらせているのだ。
奉公人たちも辛い仕事で、朝から晩までタダ働き同然で働かされている。
そのストレスをこの満にぶつけている。
「ウフフ!オイ!この縄で縛り付けて蹴ってやれ!」
「フン!何だい!借金まみれの親戚の息子らしいが、お前だけ学校に通わせてもらって…憎たらしい!エイ!」
妬みと日頃のストレスを満に思い切りぶつける奉公人たち。
満を殴る蹴るが日常茶飯事となって行った。
余りの事にコッソリと引き戸の裏で泣いている満に気付いて、手を差し伸べるうら若い娘の姿が有る。
一緒に奉公人として働く裕子という娘。
「…グウウウウ~!(´;ω;`)ウッ…」
「…本当に気の毒な事だな~おら~何もしてやれねえだども‥ほら~番頭さんから働きが良いからと言って貰った煎餅だ~・・ほ~ら食べてけれ」
満も酷い仕打ちを受けながらも、この裕子という娘のお陰で何とか耐える事が出来たのだ。
また養子兼奉公人と言っても住む部屋は酷いもの。
奉公人たちと同じ屋根裏部屋で雑魚寝。
まあ~致し方ないと言ってしまえばおしまいだが、佐和にして見れば、案の定金の無心に来るようになった本郷に頭を抱えて、仕方なく鬼になるしかなかったのだ。
「何してるんだいサッサと起きてあちこちのアパ-トの掃除をしてきな!働きが悪いと飯抜きだからな!」
「オオオお前!何もそこまでやる事は無いじゃ~ないか~?」
余りの酷い扱いに婿養子の今井も黙っちゃいない。
「あなた!いい加減にして!どれだけ我が家が、あのお義兄さんのせいで酷い目に合ったか分かっているのですか?チッ!まったく!……それから‥あなたが受け取れる筈の遺産まで食いつぶされて黙っちゃ~いられません!ん~もう!悔しい!」
「…そういってもだな~?何も満に当たること無いじゃないか~?」
満の少年期、青年期はまさに地獄のような試練の連続だったのだ。
この事がきっかけとなり後々恐ろしい事に……。
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