第10話⁂徐々に真実が⁈⁂


1972年5月27日に福岡球場で行われた試合を見に行ってからと言うもの、時間が空くと木村と静子と万里子お嬢様とめぐみの4人は、食事に出掛けたり木村の愛車ランボルギーニでドライブに出掛けたり、まさに青春真っ盛り。



そんな、ある日の万里子お嬢様宅での一コマ。


「……私があの静子に目を付けたのには訳があるのよ、めぐみあなたも分かるでしょう?」

「本当に初めて見た時は私もびっくりしたのよ?……何故最初から言ってくれなかったの?」

「今に見てらっしゃい!母の仇を取ってやる!絶対に!」


万里子お嬢様とめぐみちゃんは、何やら意味深発言をしている。

過去に一体何が有ったのか……?


あんなに物静かで、虫一匹殺せないような優しい万里子お嬢様の仮面の裏側には、どんな恐ろしい秘密が隠されているのか?


それでもまだ少女なので、あんな恐ろしい事を言っていたかと思うと、また直ぐその口の先から、万里子お嬢様は又もや嬉しそうな表情で、めぐみちゃんに自慢げに話している。


「アアアア!でも~あの木村さん本当に素敵!…わたし…私ね!フフフ……付き合って欲しいってフフフ…言われたんだ!」


「本当に?・・・それは良かったわね・・・?」


めぐみは内心穏やかではない。

それと言うのも……実は、めぐみもあの木村の事が好きなのだ。


実は2か月前の、あの夏の日に4人は、木村の愛車ランボルギーニを飛ばして、三重県にある最大級のレジャー施設、長島スパーランドに出掛けた。


真夏という事も手伝って4人はお化け屋敷に入った。

だが、その時はどういう訳か…?めぐみと木村が偶然にも一緒に先に入って行った。


めぐみが怖がって余りにも「キャ~!キャ~!」言うので木村も心配になり

「大丈夫かい?」と言ってめぐみを強く抱きしめてくれた。


その時にめぐみは、暗がりの中、手で木村の唇を探し当てて、自分の唇を木村にそっと押し当てたのだ。


すると直樹は「……ダメだよこんな事しちゃ~!」とめぐみを押しのけた。


「イヤイヤ直樹さんは、私のもの!」

またもや強引にキスをすると、直樹も観念したのか、キスに応じて暫くの間口づけを交わしていた。


するとその時、後ろの方から万里子お嬢様と静子のキャ~キャ~騒がしい声に、2人はキスを中断して、何事も無かったように2人と合流したのだった。


それでも木村も、万里子お嬢様の事が気になっているにも拘らず、めぐみちゃんともこのような事をするなんてとんでもない女たらし。

本当に最悪!


それが、またこのめぐみちゃんも魅力的な娘なのだ。

実はめぐみちゃんは性格はきつくて最悪だが、ファッションセンス抜群で、モデル体型の動くマネキン人形そのもの。


木村も誰でも良い訳ではない。

あんな可愛い娘に強引にキスされれば木村も男だから、我慢できない。

この優柔不断な性格が災いして、大事件に発展していく事になる。


スタイル抜群のめぐみは、何の変哲もないチェックのミニワンピ-スを、さりげなく着こなしているのだが、小顔の浅黒い肌に長い手足を惜しげもなく晒した、どこか垢抜けたハイカラさん。


めぐみが強引だった事も有るが、木村も罪な男。

やがてこの恋愛問題はとんでもない事になって行く。



「…それより万里子、直樹さんから付き合って欲しいって、いつ言われたの~?」


「つい最近よフフフ・・・」


めぐみは、あの夏の日の思い出を、あれが噓だったとは絶対に思いたくないのだ。

{あの時、直樹だって一瞬私の事を愛してくれていたに違いない!このまま引き下がる事なんて出来ない!}



*****************


一方の1972年5月27日に福岡球場で行われた試合の時に、最前列に座っていた中年男は、あの木村直樹を巻き添えにして何やら企んでいる。


この中年男は木村とどんな繋がりが有るのか?

又静子との関係は何なのか?


「あの静子は才能に溢れている!その才能を開花させる為には、直樹お前の協力なしには成立しない。頼むぞ!」


「幾ら静子の為だからと言っても・・・?止めなよ!そんな事しなくても静子は実力で花開くさ~!」


一体何を言っているのか?












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