第26話 萌さんとセクシー下着②
「わあ、いい匂い! 帰りに買ってきたのね」
「はい、いっしょに食べましょう」
なぜいると思ったのかは内緒だ。部屋の広さと間取りこそ同じだが、僕の部屋とは全く違っている。置いてあるものの違いなのか色合いが明るく、温かい感じがするし、フリルの着いた小物やら小さなぬいぐるみやらがあちこちに置かれている。
二人掛けのソファに案内され座る。前にはローテーブルが置かれている。ブラジャーは、しまわれていて見えるところにはない。だが、慌ててはおったバスローブの胸元からは、ベージュのブラジャーのひもが見える。それから深い谷間もばっちりと……。
「はい、食べましょう。飲み物も持ってきました!」
「わあ、気が利くわあ。美味しそうねえ」
「一緒に食べた方がきっとおいしいです。いただきま~す」
「私も遠慮なく、頂きま~す!」
隣に座って焼き芋を二つに割っている。時間は経ってしまったが、まだ冷たくはなってはいない。
「もう覚めちゃったかなあ……」
「いいわよ、うんっ、美味しいっ!」
ペットボトル入りのドリンクをカップに注ぐ。
「飲み物がないとむせちゃうのよね、ありがとう」
「どうぞ」
「私が部屋にいるってよくわかったわね。帰る時間は不規則なのに」
「なんとなくいると思ったんです……勘です」
「そう……勘がいいのね」
「あのう、萌さんはブラジャーの研究家なんですか?」
「ええばれちゃったもんね。会社で研究してるの」
「へえ、変わった会社ですね」
「下着メーカーの開発部で、新商品の開発などをしてるのよ」
「ああ、そうだったんですか」
これで彼女の行動に納得がいった。一人で興奮してしまったが、れっきとした仕事でやっていたのだ。
「いろんな下着があるんでしょうね」
「そりゃあねえ、スポーツタイプのものや飾りのまないシンプルな物から結構セクシーなものまでいろいろあるのよ。特注品のもあってそりゃあもうきりがないくらいあるんだから」
「へえ、セクシーなのかあ。特注品なんて頼む人もいるんですね」
「そうなの。特別な日に着ける下着や、プロがステージに上がる時に着ける下着なんかは特注品なのよ」
「興味が沸いてきました」
「でしょう」
「はい、見てみたいなあ、そんな素晴らしい下着。でもだめですよね、男には、見せられませんよね」
「それはね、恥ずかしいじゃない」
「でも、男の人の目で見ると違うかもしれません、セクシーさが。無理にとは言いませんが、見てみたいです……素敵なんでしょうねえ」
「そんなに見たい? う~ん、それじゃあ、特別に見せちゃおうかな。でも、まずは焼きいもを食べてから」
「そうですね。慌てることはありません」
萌さんは二つに割った半分をじっくり味わいながら食べる。時折カップに注がれたドリンクを飲を口に流し込む。僕が持ってきたのはスポーツドリンクであまり焼き芋には合わないが、気にせず飲んでいる。皮をむくとほっこり焼けて柔らかくなった芋の甘みが口の中に広がる。
「さて、と……」
萌さんが立ちあがった。本当にバスローブを取ってくれるのだろうか。
「見てもいいけど、興味本位じゃダメよ。これは私がデザインしたものなの、感想を言ってもらうからね」
「萌さんの仕事のためです、どんなのがセクシーか一緒に研究します」
「それでは……これはあくまで研究のためよ、いいわね夕希君!」
「もちろんです!」
「さあ!」
決死の覚悟をしたのか、萌さんは窓際へ行き後ろ向きになる。いつも水着姿になるあの場所で。すぐ前に姿見があった。
縛っている紐をほどいている。僕は身を乗り出す。広い部屋ではないので彼女との距離は三メートル位か……。
はらりとバスローブが落ちた。
後ろ姿全体が見えた! 背中のラインが美しい……。
そして、振り向いた!
「素敵です……」
こんなに至近距離から……萌さんの下着姿を……いやほとんど裸を……みられるなんて……。
ぽかんと口を開けてしまった。
「どう、セクシーかなあ?」
赤や黒よりずっとセクシーだとは言えない。
えっ、これって乳首まで透けて見える。こんなの……。下は……パンティーの上からでも三角形の部分がうっすらと見える。上と下を交互に見ているので目玉が上下している。
「これを着た人はすっごくセクシーに見えるはずです。男だったらもうメロメロになるはずです。間違いありませんっ!」
「わあっ、よかった! いいこと言ってくれる! 研究の甲斐があったわ。こんなありふれた色じゃ、ちっともセクシーじゃないって言われたのよ。若い男の子にそういわれれて自信が持てた!」
「凄く新鮮で素晴らしいです。」
萌さんは満足げにくるりと体を回転させる。胸が揺れながら回る。背中には細い紐一本しかついていない。肩から腰までのラインがすっきりしている。
「さあ、もういいわね」
萌さんは後ろ向きになりバスローブを羽織る。スローモーションのような動きだ。こちらへ向きなおり歩いてくる。
あと少しでソファにたどり着きそうな距離まで来た、その時何かに躓きつんのめった!
「あっ、危ないッ!」
「わああっ」
萌さんの体がふわりとこちらへ倒れ僕は両腕で彼女を支える。
そして……。
―――彼女は僕の方へ倒れ込んだ。
気が付くと、体の上に萌さんの体が乗り……僕の唇は彼女の胸の谷間へぴったりくっついていた。
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