第12話 毎日が発見④
シェアハウスに来て数日が経ち、生活のペースがだいぶつかめてきた。だれがいつ食事を摂るか、風呂は何時ごろなら渋滞しないで入れるかなど、ちょっとしたコツをつかめば快適に生活できる。
―――そして、誰かに会いたくなったら頃合いを見計らって共有スペースに来ればいい。
保育士の春風かおりさんと自称会社員の夏目萌さんは、同じ時間に食事をして仕事に出かけていくようだが、萌さんは帰りが遅いことがよくある。看護師の秋沢ひかりさんと冬馬楓さんは、日勤の日もあれば夜勤の日もあり、生活リズムは不規則だ。
大学が始まってからは、僕と日南ちゃんの生活リズムはほぼ同じになるだろう。それからドアの向こうの亜里沙ちゃんも。
一人になりたいときは、部屋に入れば自分だけの時間が持てる。ここでの生活は限りなく魅力的に思えてきた。
今日は久しぶりに外食をしよう、と駅前の食堂へ出かけ夕食を済ませて戻ってきた。
外は既に暗くなっている。
あ……二階のカーテンがほんの少し開いている。
あそこは夏目萌さんの部屋!
初日の記憶がフラッシュバックする。
美しくグラマラスな裸体を披露してくれた萌さん!
あたりに人影がないかどうか確かめる。誰もいない! この辺りは人家は間隔を開けて建てられていて、空いている場所は畑が多い。立ち止まって彼女の部屋に目を凝らす。外から見られているなんて、思いもしないのだ。
動いてる……人影が……カーテンが少し……いや、だいぶ開いている。外から見られているとは思っていないんだ。またもやお風呂上りか?
そうじゃないな……たぶん。
昼間何度も会っているので、今は萌さんだとはっきりわかる。
今日は、パープルのブラジャーをつけている。素晴らしいプロポーションだ。ゴクリ。彼女の巨乳は、そこいらのブラジャーでは三分の一ぐらいしか隠れない。はみ出た胸がこれでもかと盛り上がり主張している。その姿で一回転する。
鏡の前で自分の裸に見とれているのか、凄いなあ!
ブラジャーを両手で押さえると、くいっと胸が持ち上がる。
おお、深い谷間!
ブラジャーの下にはくびれたお腹と、同じ色のパンティーが見え隠れする。足を上げて見たり、両腕を上げたりしている。体操しているにしては動きが不規則だし。やっぱり自分の下着姿を鏡に映して見とれているのかなあ。
首をかしげてから、パープルのブラジャーをはずしたっ!
ブラで押し付けられていた豊満な巨乳が解放されて、ゆらゆらと揺れる。
ほおおおお~~~~素晴らしい! 感動的だ!
パンティーも……脱いだっ!
くるりと後ろを向くと、丸くて弾力のありそうなヒップが現れた。触ったことはないから、感触は分からない。
ヒップの谷間も・か・な・り・深い。お尻を振りながら部屋の奥へいったん引っ込んだ。視界から消えてしまってから、再び姿を現した時には……スケスケのネグリジェ一枚になっていた!
な……なぜ、こんな格好をするんだ! これから誰かが来るのか!
よし、まだ大丈夫だ。誰が来るのか見ていよう。
ネグリジェ姿の萌さんは体をくねらせたり、ポーズを取ったりする。あの下は裸だ。スケスケの布を押し上げるように二つのふくらみが主張し、てっぺんは二つの乳首がそびえ立っている。全部見えた時より、さらにセクシーな雰囲気を醸し出している。
男心をくすぐるなあ。あのポーズ。ず~~っと見ていたい。
だけど、こんなことをしている僕の事を誰かが見ていないだろうか。隣の二つの部屋の窓にはカーテンがかかっていて、自分の姿は見えないだろう。萌さんの隣は保育士の春風みのりさんで、その隣は冬馬楓さんだ。見られていたら、後で何を言われるかわからない。冷やかされるどころじゃない。
ひとしきりポーズを決めて、萌さんは視界から消え、次に現れた時はキッチンでも見たことのあるパジャマを着ていた。
あれ、着替えは何の意味があったんだろうか。勝負下着の出番はいつなのだろうか。
僕はパジャマ姿を見届けて家に入った。
キッチンには電気がついている。
「ただいまあ」
「おかえりなさ~い! オ~~スッ、夕希君!」
冬馬楓さんの声だ。今日は夜勤じゃないのかな。
「楓さん、今日は夜の仕事は?」
「もうっ、いつも夜ばっかりじゃないわよ。今日は昼間の仕事だったの~~。だから、夕飯を食べて、あとはゆ~~っくりお風呂に入って、部屋で寛ぐってわけっ!」
「そうなんですかあ」
キッチンに大家さんの吉田真砂さんの孫娘である亜里沙ちゃんが来ている。エプロン姿が新鮮だ。
「あら、お邪魔してます」
「そんな……亜里沙ちゃんたちの家じゃないですか」
亜里沙ちゃんははにかんだようにいった。
「おかずをたくさん作ったから、皆さんにおすそ分けです。口に合うといいんですけど」
すると、楓さんがすかさずコメントする。
「もう、口に合うなんてもんじゃないわよ。ばっちり私の好みを知り尽くしたお味! 美味しいよ。夕希君も食べてみなよ!」
まるで自分が作ったように勧める。
「はい!」
わあ、わかっていたら食堂なんか行くんじゃなかったなあ。だけどまだ食べられる。
わお~~、肉じゃがではないか。ほっこりと煮えたジャガイモと肉のハーモニーが絶妙だ。
「うんっ! 美味しいです。懐かしい味、泣きそうです……」
「よかった~! 上手くできて」
保育士の春風みのりさんも食べ終わったようで、お茶を飲みながら僕の反応を見ている。
「ねえ、美味しいでしょう、夕希くん。私た~くさん食べちゃったんだけどお、夕希君と光さんの分は残してあるのよお」
「ありがとうございます、みのりさん。亜里沙ちゃんは料理が上手ですね」
「わっ、また褒められちゃった」
隅の席には日南ちゃんが座っている。
「美味しかった……です」
「よかった。日南ちゃんも褒めてくれた!」
「私も料理しなきゃ……」
「日南ちゃんもきっと上手よ」
「そう……かな」
一応聞いてみよう。
「ところで……萌さんは?」
「もう先に食べて戻ったみたい
「そうか」
萌さんは食事をしてから、一人部屋に戻り勝負下着を着ていたんだ……。
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