第7話 新生活始まる⑦

 すると、最初にキッチンで出会った冬馬楓さんが下りてきた。


「オ~~スッ、二人で歓迎会やってるの、いいわね。私も参加したいところだけど、これから仕事」

「夜のお仕事ご苦労さまっ」

「いやあ、がんばるよ。行ってきま~~す」

「いい男がいるといいわね」

「いるわけないでしょ。おじさんばかりよ。じゃあね、夕希くん!」

「はい、行ってらっしゃい」


 楓さんは黒のパンツ姿で元気よく出て行った。夜の仕事って、どんなことをしてるんだろうな。


「あのう、楓さん、夜の仕事ってどんなことをしてるんでしょうか?」

「それがさあ、私も知らないのよねえ。昼間出かけるときもあるけど、シフト制なんじゃないのかなあ」 

「大変なんですね」

「お互い知ってることと、内緒にしてることがあってね。話したがらないことは、あまり聞かないことにしてるの」

「そうかあ。そうですよねえ」


 団体生活にはいろいろなルールがあるんだ。誰にも触れられたくないことがあるものなあ。


 そんなことを言いながらも、ビールが減るにしたがって萌さんの目はとろんとしてきた。体も力が抜けて時々パジャマの胸元が開き、黒いブラジャーが見えている。ブラジャーの谷間は深く、胸のふくらみがくっきりわかる。どうしてこんなセクシーなブラジャーをしてるんだろう。デートでもないのに。


「夕希くんっ、これから頑張ってねえ。応援してるよ~~」

「はいっ、がんばりますっ。それにしても、ビール美味しいです」

「うんっ、いい子だねえ、あんたは~~。また付き合ってねえ」

「いつでも声をかけてください」

「よしっ」


 萌さんは既に二缶目のビールを開け、ナッツをつまみながら上機嫌になっている。


「カノジョはいるの?」

「いませんっ!」


 僕はきっぱりという。


「あらあ~、もったいないわねえ。こんな素敵な男の子を放っておくなんて、いまの高校生は見る目がないわね。あたしだったらす~ぐカレシにしてあげるけどなあ」

「僕なんて、萌さんに比べたらほんの子供ですよお」

「そんなことないって、自分で気が付いてないだよけよお。大学へ行ったら女の子が寄ってくるわよ!」

「どうも、ありがとうございます。そんなふうに言ってくれる人、あまりいなかったから」

「ん、ちゃんと飲んでる?」

「飲んでます、ほら」


 缶ビールを持ち上げ、口に含む。まだ半分ぐらい残っている。


「今日は嬉しいなあ。可愛い男の子が入ってきて」

「あんまり飲みすぎないでください」


 だいぶ呂律が回らなくなっている。二缶目も飲み干してしまったようだ。


「美味しかった、ふう~。夕希くんっ、わからないことがあったら何でも訊いてよ。私201号室にいるから、いつでも声かけて!」

「はい、僕は206号室にいます」

「あらそう。このパジャマどうお?」

「素敵です。よく似合ってます」

「そうでしょ。私が選んだんだもん、素敵よね」


 薄いピンクの地に、小花柄がちりばめられている。セクシーな下着とは対照的にかわいらしい。


「そうだわ、夕希君には今度パンツをプレゼントしてあげる。下着を選ぶのなら任せて」

「あ、あ、ありがとうございます」


 うわっ、下着のプレゼント。受け取っていいんだろうか。


「遠慮はいらないのよ、お姉さんからだと思って」

「は、はい……」


 立ち上がった萌さんはおぼつかない足取りで歩き始めた。


「僕につかまってください!」

「うわあ、頼もしいなあ。よいしょっと」


 彼女は僕の肩につかまりながら歩き、階段を上った。パジャマ越しにバストが胸に押し当てられる。巨乳の圧力が伝わってきた!


 やっぱり大きい! 見たとおりだ。僕の目もとろんとしてきた。

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