第23話 決着
キュピレー家の犯した罪が王宮裁判に掛けられたのは、白い結婚から2か月後の事だった。
当主であるドルトン・キュピレーは神官を口封じしたと思って安心していたが、裁判の途中で殺したはずの神官と送り込んだ暗殺者らの証言で窮地に追い込まれ、自ら自滅した。
他にも前王太子である第一王子にした閨教育で王子の心の傷を作った原因がキュピレー家の寄越した乳母にあり、王族に対する侮辱罪や不敬罪、横領等の罪を追加され、絞首刑が決定した。
キュピレー家は家門断絶。嫡男は去勢され、ある公爵家に仕える事になった。第一王子が一代限りの新公爵家を許され、臣下に下ったのでその公爵家の執事にさせた。これは別の意味での厳しい罰則。王子は同性にしか興味がないので、子を残すことは出来ない上、愛人を侍らせているのを生涯見続けることになるのだから。
愛する者が自分以外の者と床を共にする姿を見ることが彼に課せられた罰。
バーナードは遠い辺境地の鉱山送りとなり、アメリアは修道院送りとなった。その他、この事件に関与した者は、概ね罰を与えられたが、その為騎士団は1/3程が何らかの処罰を受け、人員確保と教育のやり直しで大忙しの毎日を送っている。
「おい、アレクセイお前も毎日、ご苦労だな。たまには休暇をとって、領地に妻の顔を見に行けばいいのに」
アイゼンが無責任な事を言ってくる。行けるものなら行っているが、顔を見るだけで呪いが反応する体では会いたくても会えない。そんなもどかしい思いをしながら、アレクセイは毎日、領地に手紙とプレゼントをせっせと贈り続けている。
「言われなくてもそうしたい。でも後、半年は我慢なんだ」
最近では、以前の様にコーネリアの事を『お飾りの妻』と呼ばなくなった。寧ろ社交界でも好意的な尊称の様な呼び名に変わっている。
理由は、彼女が領地にいる叔父から聞かされた異国の風習や特産品を紹介した本が先週販売された。あの事件の当事者が纏めた本という事で、王都では販売開始の初日には店頭に行列ができる程の人気ぶり。
その上、今女性の地位向上の為の法案が可決されることになり、夫や婚約者から蔑ろにされたり虐待から身を守る法ができた事によって、女性の社会への進出を促していた。その筆頭に王妃マデリーナが挙げられている。
またコーネリアもその一人になりつつあった。
世に新しい風が吹く中でもアレクセイの愛情だけは、変わらずコーネリアに向けられているのだが、半年後、二人は白い結婚の意味を知る事になる。
つまり結婚が無効になるのだ。社交界では既に多くの者が気付いている。
世間で注目されている事に気付かない当の本人らは、半年後の新婚生活に向けて準備を進めているのだった。
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