第24話 一年後のやり直し
あの一騒動から一年たった。
アレクセイはコーネリアを迎えに晴れ晴れとした気分で領地に向かう。領地の屋敷に着いて出迎えてくれたのは叔父夫妻。肝心のコーネリアの姿が見えない。
「やあ、アレクセイいらっしゃい。待っていたよ。やっと来れたね」
気さくな叔父が笑顔で出迎えてくれるのは嬉しいが、アレクセイは上の空でそわそわと目線でコーネリアを探し回っている。それに気が付いた叔母が
「コーネリアさんならまだお部屋よ。なんでも本の締め切りが近いので慌てて仕上げているのよ。貴方とゆっくり過ごしたいからだそうよ。だから怒らないであげてね」
そう言われてもアレクセイはコーネリアのすることに腹をたてた事は一度もなかった。しかも自分と過ごす時間をゆっくり取りたいからだと言われれば、どれだけ待たされようと全く苦にならない。その後、コーネリアと過ごす事を思い描きながら、サロンで待っていた。
「でも、ちょっとびっくりさせようかな」
アレクセイはほんの悪戯心でコーネリアの部屋をこっそり覗いてみると、何やら呪文のような言葉を紡ぎ出していた。
「何を書いているの?」
横から声を掛けると、コーネリアは勢い余って椅子から転げ落ちそうになったのを、アレクセイは抱きとめた。
「あ…アレク様、いついらしたのですか?」
「つい今しがただ。君が本の締め切りを前倒しして、僕との時間を作ろうとしている姿が見たくて、こっそり入ったんだが、すまなかった。驚かせるつもりはなかったんだ」
「私こそ申し訳ありません。出迎えもせずに…」
コーネリアが言い終わる前に、彼女の唇はアレクセイの唇と重なっている。コーネリアはうっとりと恍惚した表情を浮かべながら、
「アレク様、そ…の、か…体の方は大丈夫なのですか?」
はしたないと思われるかも知れないが、夫婦にとっては大切な事だ。コーネリアは言葉を濁しながら聞くと、羞恥心を隠す様に下を向いてしまった。
彼女の耳は真っ赤になっている。きっと顔も熟れた果実の様に紅く染まっているのだろう。
アレクセイは久々の可愛い新妻を堪能することにした。
「ああ、こんなに触れ合っても体に傷みが走ったりしなくなった。呪いは全て解けたよ」
「良かったです。もしあのままならどうしようかと思っていました」
コーネリアの満面の笑みにつられてアレクセイも笑っている。
「コーネリア、君に話しておくことがある。実は、先に神殿によって神官長から直に聞いたんだが、白い結婚をした者は本来、同じ相手とは再婚出来ないそうなんだ。だが、僕たちは策略によって仕組まれたものだったから、再婚できるが、手続きには時間がかかるそうなんだ。少なくとも半年はできない。だからこれを君に渡したい」
「こ…これは…」
アレクセイがコーネリアに渡したのは、オリーブの王冠。騎士が御前試合で勝利した証。つい先日行われた御前試合で、勝ち取った王冠をコーネリアに捧げる為に、領地に来たのだ。勿論、コーネリアを迎えに来たついでだが。
「コーネリア、君ともう一度初めからやり直したい。僕と結婚してほしい」
アレクセイはコーネリアの前に跪き、手に口付けて求婚する姿に、コーネリアは一度目よりも胸が熱くなって、知らない間に涙が頬を伝っている。
「コーネリア、ダメかい?返事をもらいたいんだが…」
少し、躊躇うような声のアレクセイにコーネリアは椅子から立ち上がって、思いっきり抱き付いた。
「勿論、アレク様と結婚します。一生離さないでくださいね」
「ああ、一生離さないと約束するよ」
二人は再び、互いの唇を重ねた。
二度目のプロポーズも成功したアレクセイ達だが、残念ながら二人の甘い蜜月はまだ始まらないのだった。
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