第11話 私、お飾り妻になります
コーネリアは言われていることが、まだ良く分かっていなかったので、補足を父であるオルフェ侯爵がした。
「いいかい、ギャロット伯爵は今、お前と一緒に生活出来ないし、公の場にも共に出席できない状態だ。そういう扱いをされたお前が社交界で、嘲りや蔑みを受けることになるだろう。彼自身も既に嫌な噂が流れている。だから、もし、一年後に離婚を望むならこのまま侯爵家に帰り、結婚を無効にできる。しかし、このまま結婚を続けるなら今も流れている不名誉な【お飾りの妻】と陰口を叩かれる事を耐えなければならない」
「結婚のやり直しは利かないのですか?」
「残念ながら、やり直しは利かない。既に契約書にサインしているからな。その上、彼に掛けられた呪いも解けないんだよ。全ては一年後に終わるが、我慢比べになるだろう」
「では、一緒に居られなくても、王都の実家にいてはダメでしょうか?」
「実は彼の提案なんだが、お前に伯爵領へ行って欲しいらしいんだよ」
「どうしてですか?私が邪魔なんですか?」
「そうではなく、お前が王都にいると彼は抑えが利かなくなるだろう。それにこれはお前にとってもいいことだと私は思ったんだ」
「どういう風に…」
「彼の叔父上が書記を探していてね。あちこち行った外国の良い所を紹介する書物を作りたいそうなんだ。それをお前に手伝って欲しいと言っているんだよ。それに彼も今回で、酷い目に遭ったから領地経営を叔父上に習う予定なんだ。一年後には二人でやり直せるということだ」
コーネリアは本が好きだったし、自分で書物を作る作業に拘れることに心を揺さぶられていた。
それと同時に王都に残るアレクセイの事も気がかりだった。
「コーネリア、一年後、君との新婚生活をやり直したい。それに君が書いた物を僕も読んでみたい。お願いだ。僕の提案を受け入れてくれないだろうか?」
静かに懇願するようなアレクセイの声に背中を押され
「分かりました。私はアレク様の【お飾り妻】になります。但し、一年だけですよ。きっと領地に迎えに来て下さいね」
「ああ、約束する。ここにいる全員が証人だ。必ず、君の元に帰るよ」
アレクセイはコーネリアに向かって破顔した。
こうして、二人は一年限定の【白い結婚】となったのだった。
だが、問題はまだ残っていた。アレクセイを貶めた黒幕にはたどり着いていなかった。
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