第10話 白い結婚の秘密
コーネリアが帰って来たという知らせは、アレクセイに直ぐに知らされた。
二人の再会はギャロット公爵家の大食堂で行われた。両家の家族が一堂に会して、アレクセイとコーネリアはお互いにテーブルの端と端に座り顔が見えない様に仕切りを置き、筆談しているというおかしな状況なのだ。
最初、コーネリアは久しぶりに会えたアレクセイに、嬉々として抱擁しようとしたが、家族に止められた。瞳が潤んで泣きそうになっているコーネリアを見て、アレクセイは突然蹲った。
何も知らないコーネリアからすれば、突然股間を抑えて苦しみだすアレクセイに戸惑うのも当たり前。しかも周りの対応も微妙。男性陣は我がことの様に痛そうに顰め面をしているし、女性陣は顔を赤らめて、目のやり場に困っているようだった。
「大丈夫なの。アレク」
「だ、大丈夫だ…。それ以上、ち…か近づかないで…」
アレクセイの拒絶の声にコーネリアは驚きを隠せなかった。アレクセイを信じられなかった自分を、拒絶しているのかと不安がよぎったのだが、夫人らに別室でアレクセイの体に付いて説明を受けて納得した。
アレクセイが神官から【白い結婚】の呪縛を受けていることを。
その呪縛の内容を細かく聞いて、初夜も迎えていない初心なコーネリアは全身赤くなっている。
筆談にしたのは、コーネリアの声を聞き、姿を見ただけでアレクセイが反応するので、仕方なくそういう手段を取ったのだ。
この【白い結婚】とは、通常の男女の白い結婚ではなく強制的なもので、これを神官から受けることは重い罰。アレクセイは結婚式の最中に、謂れのない冤罪をかけられ呪を受けてしまった。
これは呪いの様なもの。アレクセイが性交渉出来ない様にするための処置だった。万が一でも、コーネリアと性交渉しない様に、彼にかけられた呪縛なのだ。彼がコーネリアに反応した場合、下半身に激痛が襲う、男性にとっては痛ましい恐怖の呪縛。
実際に神殿での【白い結婚】を受けた男性は数える程いなかった。だから、誰も知らなかったのだ。アレクセイ自身もコーネリアの声を聞くことも姿を見ることも出来ない程だとは思っていなかっただろう。
言い換えれば、コーネリアにとっては喜ばしいことなのかも知れないが、つまりその位、コーネリアを愛しているという証明になる。
アレクセイ達の話はここからが肝心なのだ。コーネリアがこの提案を受け入れられるかどうか。その事だけがアレクセイの心をかき乱していた。
「コーネリア、君は僕の妻として【お飾りの妻】になる覚悟はあるかい?」
震える声で、アレクセイは愛するコーネリアに告げた。拒絶されるかもしれないという不安を抱えながら、アレクセイはコーネリアの次の言葉を待っている。
どうか、僕と一緒に歩む一年後の未来を選んで欲しい。
祈る気持ちで、仕切りの向こう側にいるコーネリアを見つめていたのだった。
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