#18 気晴らし




 しばらくベンチに座ったまま缶コーヒーを飲みほして、スマホを取り出した。



 生徒会のグループチャットを開き『今、池内カナと別れました』と打ち込んで、カナちゃんに投げつけられたファンタグレープを拾う。



 来栖先輩と岸本さんから

「元気だしなよ」

「ごくろーさまー」

 と返信があった。


 セツナさんと安井君からの反応は無かった。


『詳しいことは、明日報告します』と最後に打ち込み、ファンタグレープを持って家に帰った。



 冷蔵庫にファンタをしまいながら母親に『カナちゃんと別れたから』と一言報告すると「え!?なんでなんで?」と聞かれたので、正直に『カナちゃん、浮気してた』とだけ教えると、凄い微妙な顔して「元気だしな」と励ましてくれた。



 そのままお風呂に入り湯船に浸かっていると、ドっと疲れが出てきた。


 風呂を出て自室に戻って勉強を再開したけど、1時間ほどで睡魔がやってきたので、いつもより早い時間だけど就寝した。









 翌朝、セツナさんと一緒に登校する為早い時間に家を出て駅へ行ったが、セツナさんはまだ来ておらずしばらくそのまま待つことにした。


 10分ほど待っても来ないので、セツナさんに『今駅です。遅れそうですか?』とメッセージを送ると、「ごめん、今日は先に行ってて」と返信が来たので、一人で電車に乗った。





 この日、カナちゃんは休みだった。


 まぁ、昨日のことでサボったんだろうな



 休憩時間、岸本さんと喋っていると、杉村がやたらと僕を睨んでいる様だった。

 岸本さんもそれに気が付いていたようで「なんか睨んでるね」と小声で話していた。



 お昼休憩、生徒会室に行くと、セツナさんと来栖先輩が先に来ていたけど、セツナさんはいまいち元気が無さそうだった。


 お昼ご飯を4人で食べながら、簡単に昨日のことを報告した。



『ほとんど僕から一方的に話す感じだったんですけど、杉村のこと好きかって聞いたら「好きじゃない」って言ってて、でも「1回だけエッチした」と自分から白状してました』


 来栖先輩は、食べていた唐揚げを噴出してた。

 岸本さんは、飲んでたお茶を噴出してた。

 セツナさんは、目を見開いて固まって、持ってた箸を落としてた。


『因みに、3日まえに教室でイチャついてたあの日だそうです。あの後でしてたらしいです』


「うわぁ・・・」


『それで、それ聞いたあと頭に血がのぼっちゃって、今までの不満全部吐き出して、別れるってはっきりと言い渡したら、怒って帰っちゃいました』


「やっぱりー、真っ黒だったんですねー」


「と、とりあえず、生徒会の方は今日から平常に戻るってことでいいのかな?」


 来栖先輩がセツナさんに確認すると


「そ、そうだね」


 やっぱりセツナさん、なんか元気ないな



 弁当を食べ終えて少し雑談をしていると、予鈴が鳴り席を立つと


「ごめん、今日の放課後用事あるから、生徒会はお休みにしよ」とセツナさんが言い出した。


 それ聞いて来栖先輩も「そうだね、最近色々あったし、今日はみんなお休みにしようか」と。




 教室へ向かって岸本さんと歩いていると「今日お休みならー 放課後一緒に遊びに行かない?」と誘ってくれたので『了解。 僕も気晴らししたい気分だし、丁度いい』と返事をした。


「じゃー、放課後教室まで迎えに行くから待っててねー」と言って、教室の前で別れた。




 放課後になると岸本さんが迎えに来てくれたので、どこ行くのか聞くと「特にないからー 駅の辺りでてきとーにあそぼっかー」とのことで、一緒に学校を出てお喋りしながら駅に向かって歩いた。



「なんかー 今日の杉村、ムギのこと睨んでたでしょー? あれって多分、杉村も池内さんにフラれてるねー」


『え?そうなの? てっきりカナちゃんと杉村は付き合うんだと思ってた』


「んー、池内さんは杉村のこと好きじゃないっていってたんだよね?」


『そう言ってたね』


「たぶんだけどー 池内さん、ムギのことまだ好きだったと思うんだよねー それでムギにフラれたのを杉村のせいだとでも言ったんじゃないかなー」


『なるほど・・・』



 そんなことを話しながら、駅前のショッピングビルに入り、岸本さんのウインドショッピングに付き合った。


 1時間ほどウロウロして、休憩しようということになり、マックに入ってジュースとポテトを買って、お喋りを続けた。



「そういえばー ムギは会長とほんとに付き合うの?」


『うーん、そうなるのかなぁ・・・』


「えー ムギは会長のことどう思ってるの?」


『好きか嫌いかで言えば、好きだよ。 面倒見いいし、今回のことも凄く助けてもらったし、それに美人で話してても面白いし』


「そっかー でも1こだけ言わせて貰うと、よく考えたほうがいいと思うよー」


『やっぱりそうかな・・・でも今更付き合えませんって言うのも言い辛いし、それに最初「私の彼氏だ」って言われた時は、何言ってんのこの人?って思ったけど、次の日くらいには普通に受け入れちゃってたから、アリなのかな?と思ったりしてて』


「まぁ、せっかくフリーになったんだし、焦らなくてもいいってことだよー」


『うん、そうだね。アドバイスありがと』


「いいよいいよー ふふふふ」



 同じ生徒会でいままでも結構話す方だったけど、今回の一件で岸本さんとの距離が更に縮まったと思う。でも、セツナさんとの関係を正直に話すことは出来なかった。


「そういえばー、今日の会長、なんか変だったねー」


『そういえば、元気なかったみたいだね』


「ね。ムギが別れたって聞いたら、絶対に「これで交際解禁!」とか言うと思ったのにー」


『実は僕もそれ思ってた。 だから余計に大人しく見えちゃったね』



 結構な時間になったので、マックを出てそのまま解散となった。

 別れ際「しばらくは休憩時間にムギのとこ行くの続けるからねー 明日からもよろしくー」と言って岸本さんは帰っていった。


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