#17 別れ話



 19:55になったので、勉強を止めて、スマホとサイフをポケットに突っ込んで、家を出た。


 カナちゃんの家の前に来ると、凄く緊張してきた。


 思い切り息を吐いてからインターホンを押して、カナちゃんを呼んで貰う。


 カナちゃんが出てきたので『急にごめんね。 どうしても話したいことがあったから』と声をかけた。


 いつものように「ん」と返事があったので『行こうか』と声をかけて歩き出した。


 公園までは2~3分の距離だけど、お互い無言で公園が遠く感じる。



 公園の入り口の自販機でカナちゃんが好きなファンタグレープを買ってカナちゃんに渡し、自分に缶コーヒーを買った。




『ベンチに座ろ?』


「ん」



 ベンチに並んで座る。

 特に意識してなかったけど、二人の間は微妙に空いてる。

 いつもこのくらいの距離があった。

 杉村と居る時の距離を思い出してしまい、無駄にダメージを受けた。



 缶コーヒーのプルタブを開けて一口飲んでから話し始めた。


『色々聞きたいことがあるんだけど、いいかな?』


「ん」


 カナちゃんは、ジュースのフタを開けずに両手で持ったまま下を向いていた。



『カナちゃんって、ぶっちゃけ、僕のこと好きじゃないでしょ?』


 カナちゃんは僕の言葉を聞いて、顔を上げて僕の方を見た。

 でも薄暗くて、表情が読み取れなかった。


『急にこんなこと聞いてごめんね。 昔から僕と居る時はずっとクールでベタベタしたりしなかったから、あまり気にしてなかったけど、でも最近クラスの男子と仲良くしてるでしょ? それ見てたら、なんか自分が情けなくなってね・・・』


 なんか言ってくれるかと思ってしばらく待ってみたけど、何も言わないので再び僕から話し始めた。


『カナちゃんが杉村と楽しそうに話してて、あいつに笑顔を向けてるの見るのが凄く辛かった・・・ 僕はカナちゃんのそんな笑顔、今まで見たこと無かったからさ。 でも、色々悩んでたら、自分が笑わせてあげることが出来ない、たまにエッチするだけのつまんない男なんだって分かっちゃって、それで自己嫌悪しちゃって・・・』


 カナちゃんの顔が見れず、手に持った缶コーヒーを見つめながら喋った。


 カナちゃんは、まだ何も言ってくれない。

 やはり何を考えてるのか、さっぱり分からなかった。


 仕方が無いので、核心を突くことにした。


『杉村の事、好きなの?』


 今度はカナちゃんの顔を見て、聞いた。


 しばらく間が開いた後、ようやく口を開いてくれた。


「別に好きじゃない。 よく話しかけてくれるし遊びに誘ってくれるし、一緒にいると気分よくしてくれるから」

「でも、エッチは気持ちよくなかった。 ムーくんのが良い・・・」


 思わず飲みかけていたコーヒーを噴出した。


『杉村とセックスしてんの!?』


「ん、一回だけ」


 なんだコイツ

 真っ黒じゃねーか

 しかも悪びれも無く自分から白状しやがった!


『因みに、それっていつ?』


「二日くらい前」


 二日前って、放課後教室でイチャついてた日か・・・あの後かよ!


『それで、杉村と付き合うの?』


 話の流れで思わず聞いてしまったけど、そんなこともうどうでもいいことだと気が付いて、慌てて言い直した。


『あ、やっぱりいいや。 杉村と付き合おうが、好きにすればいいよ。 とりあえず、僕はカナちゃんと付き合ってく気はもう無いから。 今日も別れるつもりで話をしたかったし』

『それに、いくら興味なくされてるからって、僕の目の前で他の男とイチャイチャされて、無茶苦茶ムカつくし、カナちゃんが何考えてるのか今まで以上にさっぱり解んなくなってたから、もう無理だから』


「なんでよ・・・」


『いや、それ僕が言いたいよ。 なんで他の男と平気でイチャイチャ出来るの? なんで好きでもない杉村なんかとセックス出来るの? なんでそれを僕に言えちゃうの? 罪悪感とか無いの?』


 頭に血が登って、興奮しながら捲し立ててしまった。


 カナちゃんは下を向いて、僕の言葉にじっと耐えてるように見えたけど、急に顔を上げたかと思うと、持っていたファンタグレープを僕に思いっきり投げつけてきた。


「うるさい! ムーくんなんてもう知らない!」


 そう叫んで、走って帰ってしまった。




 最後まで何考えてるのか分からないままだったけど、ようやく別れることが出来た。


 しかし、杉村とやってたか・・・



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