#05 覚悟








 セツナさんが「セックス、セックス」と連呼した喫茶店を出て二人で駅に向かうと、カナちゃんとイケメン男子の姿はもう無かった。


 僕は内心ホッとしつつも、鼻歌歌いながら僕と腕を組んでるセツナさんに頭が痛い思いだった。


 電車に乗っても腕を組んだままだし、地元の駅で降りてからも組んだままだった。


 改札出て『それでは、さようなら』と別れようとすると


「何言ってるのよ、家まで彼女を送っていきなさい」と再び命令が下った。


 まぁ、確かに夜道を一人は危ないしな、と自分に言い訳をして、腕組んだままセツナさんの家まで送って行った。


 家に着いて今度こそ『それでは、さようなら』と別れようとすると


「キス、忘れてるわよ」と


 忘れてませんよ

 ワザと逃げるつもりだったんですよ


 と内心ツッコミを入れたけど、セツナさんは僕の腕を力一杯掴みながら、目を閉じてキス顔のまま待っている。


 はぁと溜息を漏らしてから、セツナさんのおデコにキスした。


「おデコじゃなくて、クチでしょ! マウス・トゥー・マウス!」


 やっぱりダメか・・・


 もうやけくそになって、クチにキスして、クチの中に舌を捻じ込んで、ぐちょぐちょのディープキスした。


 セツナさんは一瞬目を見開いてビックリしたけど、すぐに目を閉じて舌を絡ませてきた。


 1分ほどぐちょぐちょとキスしてからクチを離して


『今度こそ帰ります。 今日は色々とありがとうございました。おやすみなさい』と言って、帰った。


 セツナさんは蕩けた顔のまま「うん、おやすみ・・・・」と一応反応はあった。











 家の近くまで来てカナちゃんの家の前を通ると、カナちゃんの部屋に明かりが点いていた。


 立ち止まって部屋の明かりを見つめていると、さっき見たイケメン男子と楽しそうに笑うカナちゃんの笑顔が思い浮かんできた。



 嫉妬と悔しさが溢れそうで、この場で叫びたくなる

 あの光景を見て僕がどんなに辛かったか、大声あげてカナちゃんに分からせてやりたくなる


 でも叫ばない、大声あげない

 今ここで僕が叫んでも、多分カナちゃんは部屋から出てこないだろうし、窓からも覗こうとはしないだろう


 きっと自分が更に惨めになるだけだ




 今日何度目かの溜息を吐いて、再び歩き出して家に帰った。




 家に帰り晩御飯を食べてお風呂に入る。


 シャワーを浴びてたら、覚悟が決まった。


 お風呂から出ると、スマホにセツナさんからメッセージが着ていた。


「ムギくんのキス、見直したよ。 明日からもよろしくね、ダーリン」


『覚悟決めました。 セツナさんの彼氏にしてくれて、ありがとうございます』と返信した。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る