#02 遭遇
クラスでは、一応僕達が付き合っていることは知られているけど、そのことが話題になることはほとんど無い。
まずカナちゃんが自分から僕のことを話題に出すことは無いし、そんな彼女に気を遣って僕が話題に出すことも、彼氏ヅラして話しかけることも無い。
クラスメイト達も、僕たちが付き合ってること知ってるクセに、男子は平気でカナちゃんを放課後遊びに誘うし、彼女もそれに応じてよく遊びに行ってるらしい。
そんなやり取りを見てると、嫉妬心が湧いて嫌な気分になるので、そんな時は用事が無くても生徒会室に行って、暇をつぶす。
だって、僕は彼女とカラオケに行ったこと無いし、彼女の歌声だって聞いたこと無いんだよ? それをクラスの男子に誘われれば、断ることなく楽しそうな顔して遊びに行っちゃう姿なんて、見たくないし。
放課後、生徒会室に行けば、ほぼ毎日生徒会長と副会長は居る。
生徒会長は、
副会長は、
セツナさんは、カナちゃんのことも知ってて、僕たちが付き合っていることも知っている。
なんなら、僕たちが冷え切った関係であることも知ってて、よく気にかけてくれる。
「ムギくん、今日もカナちゃんはムギくん置いて遊びに行っちゃったの?」
『・・・そうですね。 彼女は友達沢山居るので、放課後は忙しいんですよ』
「それでいいの?」
『良いですよ』
「はぁ・・・・」
生徒会室でのこんなやり取りも、最早定番となっている。
心配してくれるのは有難いけど、それはそれで惨めになるんだよね。
下校時間になると、同じ方向のセツナさんと一緒に帰る。
セツナさんとの帰りは、普通にお喋りしながら帰る。
話題は、生徒会のほかのメンバーの話、趣味の話、今夜のおかずの話、見たい映画の話、恋愛の話、中学の頃の思い出話と何でも話す。
この日もセツナさんとお喋りしながら歩いて駅前に着くと、カナちゃんが居た。
カナちゃんは、クラスのイケメン男子と二人きりで、カナちゃんの方からボディタッチして楽しそうに会話をしている。
僕には見せたことが無い笑顔を向けて、まるで恋人同士の様だった。
もしかしたら、既にそういう関係なのかもしれない、と思ってしまい、今ココに僕が居ることを気付かれてはいけないと考えた。
『セツナさん、ちょっと用事があるので、申し訳ないですが僕はここで』
「え? 急にどうしたの?」
セツナさんもカナちゃんが居ることに気付いているので、なんで声掛けないの?と思ったのだろう。
『すみません、急用ですので・・・また明日』
そう言って、駅前のショッピングビルに向かって歩き出した。
歩きながら(電車2~3本後ならもう居なくなってるかな)と考えながら、ショッピングビル内の書店へ向かった。
一人でトボトボ歩いて書店に入ろうとしたところで「待って!」と声を掛けられ腕を掴まれた。
ビクっと驚いて振り向くと、セツナさんだった。
『え?セツナさん、帰らなかったんですか?』
「ちょっと来なさい」
有無も言わさぬ迫力で、強引に僕の腕を引っ張っていった。
腕を掴まれたまま喫茶店へ連れて行かれ、強引に座らされた。
セツナさんはコーヒーを2つ注文すると、相変わらず迫力ある眼差しのまま
「カナちゃんとは別れなさい」と言い出した。
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