第29話 ダンジョンへ

王都へ向かい、居場所が分からない妹と合流する。

次の俺の目標は決まった。

俺としては今すぐにでも王都へ向かいたい気持ちもあるが、それは一先ず置いておき、せっかく4人集まったのだから今まで行かなかった強いモンスターが居そうな場所を冒険したり、難易度の高そうなクエストを受けたりする方が良いなと考える。

王都はナナバの西にあるそうだが、どこまで進めば良いか等の情報が無い。

それに、カッセイラからそちらに向かう場合、ポータルを使えばナナバまではすぐに行けるのだが、ゴブリン族であるミコブがポータルを使えるかは不明だ、警備兵に怪しまれ、正体がバレれば最悪町に入れなくなる可能性もある。

そこまで遠くないので徒歩で行く事も可能であるが、移動に時間を使いすぎるのもな。

そういった考えもあり、では何をしようか?と話題に上げる。

すると二つの案が出た。

一つはカッセイラ城址草原の奥へ行き、探索する事。

もう一つはナナバ東の森のを攻略する事、だ。

その二つの案に絞り、話を詰める。


「城址草原で何か見つかったとかいう話は聞かんな、聞くのは夜になると奥地でもスケルトン系が出現するという情報ぐらいだ」


「そーカ、城址の情報は無いガ、森のダンジョンの場所なら大体分かるんだナ」


「・・・わたくしは特には・・・ジンさんにお任せしますわ」


「えっ・・・と・・・、そうだなぁ、まだ経験した事が無いし、ダンジョンが良いかな?」


噂だけは聞いていて、前から興味があったので、そう提案する。

3人とも快く了承してくれ、ナナバ東の森のダンジョンを攻略しに行く事になった。


「ナナバの森のダンジョンは確カ・・・だったナ、それなら人目に付かないシ、新しく入荷した武器に新調したいんだナ、魔法主体と言ってもさすがに初期装備じゃどうかと思うしナ」


インスタンスダンジョン・・・ダンジョン内部がPTごとに生成され、他のプレイヤーと会わない貸し切り状態のようなダンジョンの事だったっけ。

するとミコブのその言葉にバンが反応する。


「ん?武器屋に新商品が入荷したのか?ならば私も武器を新調したい」


わたくしは防具を新調しますわ」


シヨコは防具を買い替えるようだ、PTでは回復を担当してもらう事になりそうだし、攻撃面より防御面を重視しての事であろう。

ウルフリーダーのクエストの報酬でバスタードソードをもらった俺は、武器を新調する必要は無いよな。

だが、リーダー戦で受けたダメージは大きかった、ダンジョンでは強敵が出現すると思われるので、皮装備では心もとない、皮装備を揃えたばかりだが、俺も防具を買い替えるか。

話がまとまり、まずは4人で武器屋に行く、こんなに頻繁に入店したらもう常連みたいなものだ、実際はまだ二日目なんだけど・・・。

毎度のように店主に挨拶し、各々リストを開く。

防具を新調すると言っていたシヨコも、一応リストに目を通しているようだ。

俺はそうする必要も無く、手持無沙汰になってしまう。


「うーん?私のリストには新しい商品が入荷して無いようだな・・・」


店主は腕の良い冒険者には売ると言っていたが、どうやらバンには表示されていないようだ、何か条件でもあるのだろうか?あれ、まてよ・・・それなら。


「バン、それなら俺が代理で購入しますよ!」


ミコブにしたように、俺が買ってトレードでバンに渡せばいいのだ!


「おお!すまないが頼めるか?とはいえ何が入荷されたか分からない、500Gの鉄シリーズ以上のを教えてもらえるか?」


俺は了承し、バンに売り物を教えていく。


「おお!ツーハンデッドソードか!・・・・・む!鉄刀!?」


バンは両手剣であるツーハンデッドソードと鉄刀で悩んでいるようだ。

そこで俺が鉄刀は限定商品だと告げ、両手武器なので俺は買うつもりが無い事を伝える。

するとバンは鉄刀に決めた。

購入し、トレード渡して代金をもらう。


「ジンのお陰で良いものが手に入った!ありがとな!」


この辺りでは珍しい鉄刀を手に入れ、嬉しそうなバン。

俺もクエストの報酬を有効活用出来て良かった。


「スキル書で新しい魔法を覚えるつもりだったガ、せっかく珍しい武器を売ってもらえるんダ、オデはこの[錫杖]を買うカ」


ミコブも決めたらしい、有り金殆ど使ってしまうそうで、新しい魔法を購入するのは保留する事にしたそうだ。


武器屋から出た俺たちは防具屋へ入店、先程何も購入しなかった俺とシヨコはリストを見るが、持ち金が心もとないバンとミコブは店の前で待っている。

そこで俺は[鉄の鎧 上・下][鉄の兜]にその下に着る肌にピッタリくっつく黒い[インナー]と、初期装備のズボンのワンランク上の品である[ジーンズ]さらに鎧の上に羽織る茶色の[マント]を購入。

皮シリーズより重厚な鉄の鎧を装備し、防御力の高そうな重戦士となる。

視界が狭まるわけではないが、頭の装備は非表示にする。


「まぁ!ジンさん、ステキですわ」


「ははは、ありがとうございます、シヨコさんも似合ってますよ!」


シヨコは[鉄の胸当て]と[絹のシャツ]に足首まである[スカート]、それと[絹手袋]肩にかける[ケープ]を購入したようだ。

装備が変わると冒険者風のズボン姿だったシヨコがより女性らしい姿になった。

防具を新調した俺達は店を出て、待っていた二人と合流する。


「おう!ジン![タンク]らしくなってきたな!似合ってるぜ!」


「ありがとうバン!」


「良いじゃないかジン!シ、シヨコも色気が増したナ!かわいいゾ!グヒ」


「・・・・・はぁ、どうも」


装備を新調し終えた俺達は、ダンジョン攻略のため[ナナバ東の森]へ向け

[カッセイラの町]から出発する。

道中、数組のPTとすれ違った、[カッセイラの町]も最初に比べると大分賑わってきたな。

森の中もプレイヤーがぽつぽつ居て、そのほとんどが同じ方向を目指していた。

俯き、顔を隠したミコブが先頭をあるき、マップを確認しながらダンジョンを目指す、その後ろに俺が追従する事で、万が一にもミコブがモンスターと間違われないように気を配る、俺の後ろにはシヨコが居て、最後尾はバンだ。

森を進んでいくと、開けた場所に出た。

そこには大きな洞窟があり、入り口であろう場所には門がついていて、その前にポータルに似た大きな台座のような物があり、周りを囲うように遺跡のような石造りの柱等がある、まさしくダンジョンの入口という感じであった。

周りには多くのプレイヤーが居て、賑わっている。


「ついたゾ、あの台座から侵入できるみたいだナ」


「おお!これがダンジョンかぁ!楽しみだね!」


「そうだな!強いモンスターにお宝!わくわくするぜ」


「ウフフ、回復は任せてくださいね、ジンさん・・・」


初めてのダンジョンにテンションがあがる!

・・・シヨコの距離がやけに近いのは気のせいだろうか?

そういえば・・・と一瞬先程妹に言われた言葉が頭によぎる。


(「なるの事なんてどうでもいいんだね」)


うぐっ!胸が締め付けられるような感覚が俺を襲う!・・・

って、これじゃない!えーと、何か言ってたよな?・・・

なんだっけ、それを言われる直前の言葉がショック過ぎて思い出せない。


「ジンさん?どうされました?」


直後すぐ横に顔を寄せてきたシヨコに、「な、なんでもないです」と返すと、胸の痛みを引き釣りながらもミコブに続いて台座へ向かう。

歩きながらチラリと様子を窺えば機嫌が良さそうにほほ笑むシヨコと目が合う。

・・・シヨコを見ると必ず目が合っている気がするのは気のせいだろうか?

そして、なぜだろうか、最初はそうじゃなかったのに、なんともいえない警戒心のようなを、シヨコへ感じる。


「よし、いくゾ!」


不意にミコブの声が聞えると、すでに台座へ到着していた。

瞬間、俺達4人を除き、周りの人々が消えると共に目の前の門が開き、その中へ体が吸い込まれた。

気が付けば俺達4人は、薄暗い洞窟の中に居た。

後ろには入口にあった台座を小さくしたような物がある、ここから外へ出入りできるようだ。

俺は気持ちを切り替えるように、深呼吸し


「よし、いこう!」


と先頭を歩き出す、俺はPTの[タンク]役なので、モンスターが出てきたら[アピール]ですぐにヘイトを稼げるようにする為だ。

ダンジョン内の隊列は事前に話し合って決めてあり、俺の後ろに[アタッカー]であるバン、その後ろに二人並んで[デバッファー]のミコブと[ヒーラー]のシヨコだ。

バランスの良いPTだ、俺とミコブとシヨコはアタッカーとしても動けるので、弱い敵は全員で総攻撃し、素早く処理、強い敵に大しては役割通りに動く事で手堅い戦いが可能だ。

また、ミコブの情報でこのダンジョンは大体10レベル程度の実力が必要という事だ、街での募集もレベル10以上が多かったのでその情報の裏付けになった。

その点も俺たちは全員10以上、ミコブなんかその倍のレベル20だ。

レベルも足りていて編成も良いという好条件がそろっている。

これならばいけるんじゃないか?という事で、初見でダンジョン攻略クリアを目指す。

ダンジョンクリアの条件は最奥のボスを倒すという物だ。

噂ではこのダンジョンを攻略したPTはすでに居るらしい。


最初に攻略すると何か特別な報酬があるかもな、等と話しながら奥へ進む。

まぁ、その話の結論を出せる程情報が有るわけじゃないので分からないが、別のVRMMOではそういった事も多いらしく、多くのプレイヤーが見つかっていないダンジョンを探していて、それを最初に攻略する事を競い合っているらしい。

カッセイラ城址草原が良い例だ、今の所ダンジョンが見つかったという話は聞かない、けれど何かありそうなフィールドだから初攻略目的にダンジョンを探すプレイヤー達が噂を聞きつけて徐々に集まっているのだろう。

まぁたとえ見つかっていても見つけた人が攻略するまで情報を流すことは少ないだろうけど、もしかしたらすでに発見され、攻略されている可能性だってある。

だがそれを確認できない以上まだ見つかっていない可能性もあるのだ。


城址草原は広いし、他のプレイヤーを差し置いて俺達がダンジョンを見つける可能性も低い、例え探しに行くとしてもまずは情報のあるこの森のダンジョンを攻略してからだ。

薄暗い洞窟を会話をしながらも警戒しつつ、奥へ奥へと進んでいく・・・・。





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現在のPTメンバー装備メモ


[ジン]

          鉄の兜(非表示設定)

インナー(黒)   鉄鎧上  マント(茶)

ジーンズ      鉄鎧下  ポーションホルダー

バスタードソード  皮の手袋  鉄盾

          皮のブーツ

    

[ミコブ]

          フード

          ローブ

布切れ(初期装備) ローブ

錫杖(両手持ち)  グローブ

          皮のブーツ


[バーンズ]

          皮の帽子(非表示設定) 

シャツ       皮鎧上

ズボン       皮鎧下

鉄刀(両手持ち)  皮の手袋

          皮のブーツ


四余子シヨコ

          皮の帽子(非表示設定)

絹のシャツ     鉄胸当て  ケープ

スカート      皮鎧下

鉄剣        絹の手袋

          皮のブーツ

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