第28話 集結

食事後の時間、片付けを終えた俺は妹とリビングでTVを見ながらまったり会話していた。

妹は前から甘えんぼであるが、最近は特にそれが強くなっており、今も俺の膝上に乗りながら俺の胸にすりすりと顔を押し付けている。


「まだ合流できそうにないかぁ、残念、あ!そうそう、今日また新しいフレンドが出来てさ!一緒にウルフリーダーを倒したんだけど、その時ね―」


「んー?まって、おにいちゃん、新しいフレンドってどんな人?」


胸から顔を離して俺に質問する妹。


「シヨコさんっていう女のひ――」


「女の人!」


話の途中に声を被せ、さえぎる妹、見れば可愛い顔でジッと俺の目を見ている。

この顔はちょっと怒ってる時の顔だ、ん、なんだ?俺何かしちゃいました!?


「な、なるちゃん・・・どうしたの?」


「・・・・・・」


声を掛けても無言で見つめられている・・・・。


「ふーん、おにいちゃん、なるの事なんてどうでもいいんだね」


「え!?なんで!そんな事あるはず無いじゃないか!」


唐突にあり得ない言葉を掛けて来た妹、やはり何か怒っている様子だ・・・


「だって、おにいちゃん言ってたよね?ゴブリンとアタッカーの男の人とフレンドになったって、で?今回その女とフレンドになったらおにいちゃん含めて4人だよ・・?なると一緒に組めなくなっちゃうね、ふーん」


感情のこもってない声でそっぽを向いてしまった妹。

確かにフレンド全員と組めばPTは4人までだ!そうなってしまう!なんたる事だ!そんなこと考えもしていなかった!いや、しかしフレンドになったからといって毎回組むわけでもないだろうし、俺の一番の目的を果たせなくなるから妹と組まないなんて事一瞬でも思った事はない!そんな感じで、いろいろと頭に言い訳がめぐる。

俺は焦ったように妹へ気持ちを伝え、そんな事は絶対無いと分かってもらおうとする。


「くすくす、ちょっとからかっただけだよ、なるも早くおにいちゃんと合流したいなぁ~・・・あ、でもVRゲームにも悪い人って居るから、特にその女の人には気を付けてね、おにいちゃん」


なんと!からかわれていただけだったみたいだ、良かった。

だが悪戯っ子な笑みをした後、後半ちょっと顔が笑って無かったような?気のせいかな・・・。


「それじゃあ・・・そろそろGMOしに行くね、早くおにいちゃんと合流できるようにしないと・・・・ね・・・」


「あ・・・うん・・・」


ひょいと俺の膝から離れて自分の部屋へ行ってしまう妹。

その後ろ姿は少し寂しそうに見えた、俺が妹と一緒に遊びたいと思うように、妹もきっと俺と遊びたいと思ってくれているのだ。

だが妹は凝り性だから、納得するまではひたすら自分の道を進み続けるのだろう、そもそも現在地さえ分からないようだし、俺と合流しようがないのだ。

・・・・・・・

ウルフリーダーを倒して一段落したが、次の目標が決まった気がする。


俺から妹を探して合流すればいいのだ!!






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ついにおにいちゃんにが付いた。

ただでさえ、一匹のが居るのに・・・・

あのおにいちゃんの事だ、放っておいたらどんどん悪い虫が増えるに違いない。

せめて、では私がそばに居て、守ってあげないと・・・

まだ納得できる状態じゃないけど、もうできない。

戻って来た私は、モンスターを始末しながら全速力で移動する。

まずは街を見つける、そこで情報収集してなんとかを・・・


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――








諸事を済ませ、GMOにログインした。

するとすぐに通話が来る、ミコブかな?いや、シヨコさんだ。


「ウフフ・・・ジンさん、こんばんは、先程ぶりですわ・・・」


「どうもシヨコさん、先程ぶりです!」


何かいいことでもあったのだろうか?シヨコさんは機嫌が良さそうな感じだ。

先程の冒険のお礼や、雑談等をしているとメッセージが飛んできた、ミコブからだ。

内容は今からまたPT組もうぜ!的なモノだったので、了承する旨を返信する。

丁度通話中だったシヨコさんも誘い、カッセイラの酒場で合流する事になった。


「わかりました、ではまたあとで・・・ウフフ」


機嫌が良さそうなシヨコさんと通話を終える。

確認するとバンもログインして居たので、通話しても良いかメッセージを送ると、返信の代わりに通話が来た。


「おう!ジン!昨日ぶりだな!調子はどうだ!」


「こんばんは、バン!」


顔は見えないが威勢の良いバンの声が聞えると、白い歯を見せニカッと笑う頼れる男の顔が浮かんできた。

今から一緒に遊ばないか聞くと、「おう!いいぜ!」と快く承諾してくれた。

丁度カッセイラに戻って来た所だったようで、冒険者ギルドの前で合流する事にした。

通話を終え3分もたたない内に、鋭い眼光をした赤髪の男が歩いてくる。

手を上げると、あちらも手を上げ小走りで駆けて来る。


「バン!昨日ぶりです!」


「おう!ジン!なんだ?強そうな格好になったじゃないか!」


「バンこそ!」


1日ぶりなのになんだか、久しぶりに会った気がするのはGMO内の時間の流れが遅いからかな?

互いの装備を褒め合う俺達、今の俺は街中なので、剣と盾はしまってある。

設定で背中に括ったりもできるみたいだが座る時に邪魔になるので、俺は非表示にしている、街の外に行ったときや、戦闘時には念じればすぐ出てくるのだ。

バンと会ったときは皮の鎧上以外は初期装備だったが、今は全身皮装備+ポーションホルダーだ、初期装備のシャツとズボンも中に来ている為、前より強そうにはなっている、まぁバンも同じ格好なので強そうな格好といえばバンもそうであろうが。


「仲間が二人ギルドの酒場で待ってるんです、PT誘いますね!」


バンがPTに加わる、なんとバンはlv12に上がっていた!


「お!ジンはlv15か!差を付けられちまったな!」


最後に会ったときは俺が10、バンが8だったので1レベル差が開いたと言えるが、バンがいない間に結構冒険したのでそれを考えるとそこまで差が広がっていない気がする。


「ああ、ジンが落ちた後ちょっとばかし夜更かししちまってな、おかげで今日は一日眠かったぜ!ま、今はバッチリ元気だけどな!」


と言う事らしい。

二人並んでギルドの酒場へ入店、すでに座っていた二人を見つけ、そちらへ向かう。


「お待たせしました!」


「ウフフ、ジンさん、お待ちしておりましたわ」


にこりとほほ笑むシヨコさんはやはり機嫌が良さそうだった。

ミコブは目立つのを気にしてか無言でうなずく。


「こちら俺のフレンドの、バーンズさんです」


「バーンズだ、よろしく頼む」


軽くバンを紹介して、席に座る。


「ミコブだ、よろしく頼むんだナ」


「・・・四余子しよこですわ」


ミコブは俯いてシヨコさんはどこか素っ気なく自己紹介する。

・・・・・・・

一瞬沈黙するテーブル、何か話さなくては!


「あ、ああ!バン!ミコブはゲームの知識が豊富で魔法で攻撃したり足止めをするのが得意な[デバッファー]なんだ!あと、ちょっと驚かないで欲しいんだけど・・・」


「おう、そうかそいつは頼もしいな!・・・・ん?」


「あア、いいジン、見せりゃ分かるんだナ」


そう言ってミコブは顔を少し上げ、バンにだけ見える様にフードを少しめくった


「な!へぇ!人族以外のプレイヤーは初めて見たぜ」


「見ての通りゴブリン族だガ、種族柄あまり目立ちたくなイ、その辺察してくレ」


「わかった、怪しい姿にも納得いったし、ジンのフレンドだしな、気を付けるぜ、

ああ、ちなみに俺はアタッカー志望だ、敵を倒すのはまかせてくれ!」


ゴブリン族という事に対して、バンはあまり気にして無さそうだ、だが怪しい恰好については思う所があったのだろうか、その理由も納得したようで問題無さそうだ。


「こちらのシヨコさんは回復魔法が使える上に、剣も使えるんだ、役割としては[ヒーラー]兼[アタッカー]かな?」


するとバンではなくシヨコさんから声がかかる。


「ジンさん、私だけ さん付け は要りません、シヨコと呼んでくださいな」


ぐいっと顔を寄せるシヨコさん、俺は圧倒され「は、はい・・・」としか言えなかった。


「お、おう・・・そうなのか、いやしかし、[ヒーラー]が居るのは助かる!今は[ヒーラー]が不足しているみたいだしな」


俺は少し疑問に思った。

町でスキルを買えばだれでも回復魔法を覚えられるはずだ。

なぜ[ヒーラー]が不足するのだろうか、それを話題に上げると。


「性格的な事もあるがナ、どうも行動が成長に関わるっていうのが広まりつつあるらしイ、まぁやってりゃすぐに分かる事だからナ、アタッカー志望の奴が回復魔法ばかり使っていたラ、どっちつかずな成長をしてしまうってのヲ、皆恐れてるんだろうヨ」


「そうだな、私もそう思って今後魔法関係を取るつもりは無いな、敵を直接攻撃するのが好きなんだ」


「成長限界なんてのもあるかもしれねーしナ、ひたすら攻撃的な成長をした奴と攻撃と回復を両立して成長した奴を比べたラ、分かるんだろうガ、ステータスの詳細が見えねーしナ」


ミコブとバンはVRMMO経験者という事もあり、やはりゲーム知識が豊富で話が弾んでいる、俺は「なるほど・・・」と相槌を打つ、ふと視線を感じ、見るとシヨコが無言で俺を見つめていて目が合った、シヨコはほほ笑むが・・・・

なんだろう、最初と比べてなんだか・・・シヨコの様子がおかしい気が・・・

おっと、そうだ!

俺はGMOについて語り合っている二人に質問した。


「ちょっといいかな?俺の妹もGMOをやっているのだけれど、どこにいるか分からないんだ、合流するにはどうしたらいいかな?」


「おオ!例の可愛い妹ちゃんカ!」


「居場所が分からない・・・てことは、人族では無いという事だよな?」


「・・・・・・」


相変わらず無言のシヨコはひとまず置いておき、二人に状況を説明する。

しかし、サービス開始二日目という事もあるし、人族以外の情報はここにいるメンバーはあまり知らなかった、とはいえ・・・


「あー、王都を目指したらどうダ?確か人族・エルフ・ドワーフの合流地点が王都だったロ」


「そうだな、その情報なら聞いたことがあるぞ」


ミコブの情報にバンも頷く、そういえば妹から合流地点の大きな街の話を聞いた事があった、それが王都か。


妹と合流するために、まず人が集まりやすい王都へ向かう。

そこでなら妖精の初期地点の情報も得られるかもしれない。

妹と合流する目標に一歩近づいた気がした。

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