第24話 リーダーの決断
「シヨコさん、レベルアップおめでとうございます!」
「ありがとう、ございます・・・」
ウルフ達を狩りはじめて、少しして、シヨコさんのレベルが10に上がった。
「おウ!おめでとサン!」
「これでジョブを取得できますね!」
「ア?ジョブ?おいジン!どういう事ダ?」
lv10になるとメッセージが届いて、街の神殿でジョブを取得できる。
あれ、そういえばミコブは今lv15だけど、ジョブは何にしたんだろう?
シヨコさんはメッセージが届いたらしく操作をし、確認している。
「ミコブはジョブ何にしたの?」
「いヤ!だかラ!ジョブって何だヨ!」
「え!?」
ミコブはジョブを知らない?・・・あれ、俺が戦士になった事話さなかったっけ?
・・・・話してないや、ん、という事はメッセージを確認してないとか?
ジョブについてミコブに説明する。
「そんなの届いてねーゾ!!はァ!?ゴブリンにジョブは必要ねーってカ!?」
グギャグギャと怒るミコブだが、ゴブリン族はジョブを取得できないのだろうか?
でも、ゴブリンファイターだとか、明らかにゴブリンの上位ランクの奴もいるし、普通に考えてそいつらはジョブ持ちな気がするけど・・・うーん?
少し気になって考えてみる、ジョブを手に入れるにはlv10になった後、街の神殿の像の前で選択し、取得する形だ・・・あ!
「ゴブリン族は普通なら街に入れないし、神殿の前には門番さんが居てチェックが厳しそうだった、だから・・・ゴブリン族でも入れて、神殿のある街に到達する必要があるとか?」
「・・・そうだナ、確かに取得できても取得する場所に行った事が無いんじゃ取得できないのと同じカ・・・だとすリャ・・・・森の奥に行く必要があるのカ」
少しの間考え、そう結論付けたミコブ、森の奥には規模の大きいゴブリンの集落があるそうなので、そこに到達するのが一つの条件としてありそうだ。
だとしても、人族は最初に降り立つ街なのに、ゴブリン族はそういう面でも難しい種族なんだなぁ、と感じる、その代わりレベルが上がるのが早いというメリットもあるが。
「ジョブを取得するために、一度街へ戻りますか?」
俺がそう提案するが
「お気遣いありがとうございます、ですが、後で大丈夫ですよ・・・まだ方向性も決めかねていますので」
シヨコさんがそう言うなら・・・と、狩りを継続する事にした。
一人旅をする前提で装備を整えてきたが、シヨコさん自身は回復や支援をする方が好きらしい、今は俺達と組んでいるが、自分からPTに参加する事は無く、かといって誘われても参加するかは気分次第だそうだ。
そういう事もあり、回復系のジョブか、戦闘系のジョブか悩んでいるそうだ。
詳しいことはまだ判明していないが、選んだジョブによって能力や取得するスキルに影響がある事から、慎重になる気持ちはわかるが・・・
確か、ジョブにレベル等は無いし、取得後も気軽に変更できたはずだから、とりあえず取得しておいても良い気もする。
俺はそんな考えをしつつも、そうする事が正解なのかは分からないし、シヨコさんの意思を尊重しておこう、と口には出さないでおく。
またしばらくウルフ狩りをした俺達。
回復魔法を使える人が居ると休憩をとる必要が無くなり、また、3人になった事で負担が減って戦闘が楽になったので、効率が上がっているのを感じる。
俺達のレベルも上がり、現在俺が13、ミコブが18、シヨコさんが12だ。
ウルフの討伐クエストはとっくに完了しているのだが・・・[ウルフリーダー]はまだ姿さえ現していない。
「いヤー!しかシ、PTに美人が居ると華が合っていいナ!」
「はぁ?・・・どうも?・・・」
狩りの合間、ミコブがシヨコさんとしきりにコミュニケーションを取ろうとするのだが、当のシヨコさんは最初とは逆にミコブと目を合わせず、そっけない態度である。
かと思えば俺がシヨコさんに話しかけると・・・。
「シヨコさんが入ってくれたおかげでウルフも楽々倒せますし、ダメージを受けても回復魔法で癒してくれるのですごく助かってます!」
「あら、それは光栄ですわ・・・ウフフ」
と、優し気な顔でほほ笑むのだ。
それだけなら問題無いのだが、その時、一瞬で距離を詰められ、顔を近づけて目を見開き、俺の目をジッと見つめるのだ。
俺は驚くと共に、なんだかよくわからない・・・・恐怖のようなモノを感じた。
まるで、ゲームの俺のキャラの目を通して・・・中身を覗かれているような・・・
い、いや、もちろんそんなことはあるはず無い、無いのだが・・・!!
思わず目を逸らして、助けを求めるようにミコブを見ればミコブと目が合う。
「み、見た目は優しい感じなのにナ・・・なんか雰囲気ガ・・・」
と言いながら俺から目を逸らすミコブ、ちょっと!?ミコブ!?
狩りはじめはそこまででは無かったが、段々様子が変わってきたシヨコさん。
とはいえ、狩り自体は順調に進んでいるので、問題はな・・・いよな?
「見た目は違いますが・・・どうしてでしょうかね、ジンさんからは何かを感じるのですよ・・・ウフフ」
離れ際にシヨコさんが俺にしか聞こえないくらい、小さな声でそう呟いた。
何かを感じ取られたらしい俺は、それが何かも分からないため、たぶんそれ気のせいですよ!とも言えず、離れていくシヨコさんの後ろ姿をぼーっと眺めていると
「うーン、だガ、ポニーテールが揺れてチラチラ見える綺麗な天然モノのうなじハ・・・グッドなんだナ!」
ミコブが横でよくわからない事を口にしたおかげで、ようやくハッと我に返った俺は、よくわからない恐怖のような感情を振り払うため顔を振り、とにかく今はモンスターと戦闘でもして気を紛らわせよう!と、索敵に入る。
しばらく進みながらウルフを倒していると、街道脇の森が途切れ、その先に十字路が見えてきた。
その十字路に到着すると、付近にはモンスターが居ないようだった。
「東の街道はここまでみてーだナ」
マップで方角を確認すると、十字路の北側は草原になっており、東側と南側は
再び森に入っていく道のようだが、南側の森の先にはうっすらと山が見える。
「どうしようか、先に進む?ウルフリーダーは倒してないけど・・・」
「私はジンさんにお任せしますわ」
「グギャギャ、オデもジンに任せるとするカ!」
皆の意見を聞こうとしたら判断を任されてしまった。
うーん、そうだなぁ・・・
ゲームだと俺は隅から隅まで冒険してから次に行くタイプだ。
先に進むとしても、まずウルフリーダーのクエストを完了してからが良い。
そう思い、そのまま伝えるとミコブもシヨコさんも頷いてくれた。
だが、街道を進んで飛び出してきたウルフをすべて倒してきたのにウルフリーダーが出ない、どういう事だろうか。
門番さんは狩り続ければでるんじゃないか?と言っていたが・・・ああ、でも居場所は知らないとも言ってたしな・・・
それこそ、皆の意見を聞いてみよう。
「んー数が足りねぇんじゃねぇカ?」
「森の中に縄張りがあるのではないでしょうか?」
なるほど、どちらも可能性としてはあり得る。
「・・・・・ん?」
ふと気づくと、二人が俺を見ていた。
「ジンさんはどう思いますか?」
「引き返してウルフを狩るカ、森の中へ入るカ、他に何かあるカ?判断は任せるゼ!リーダー!」
「ええ!?」
いつの間にかPTのリーダーにされてしまった!?
二人の方が経験豊富なのに・・・でもまぁ、シヨコさんはミコブに対して妙に素っ気ないし、PTに入ってもらった立場のシヨコさんをリーダーにするのもおかしいか。
頼られた以上、決めるしかない・・・!俺は・・・・
「森の中を探索しながら、ウルフを狩って行きましょう!」
一度通った道より、未知の場所を探索する!森からウルフが飛び出してくるので、森の中にもウルフが居るだろうし、それならどちらの可能性も探れる!
そうして俺を先頭に3人で森の中に入っていった・・・。
のだが・・・
その決断は間違えだったかもしれないと、後悔する事になった・・・。
「おイ!後ろからまた来てるゾ!」
「くそ・・・!俺が相手だ!こい!」
今、俺たちはウルフの群れに囲まれていた!
最初は1匹だったウルフが、遠吠えで仲間を呼び、3匹に、それだけなら問題無く倒せる、実際最後の一匹までは順調だった・・・が!
さらに2匹ウルフが飛び出してきたのだ!
驚いた俺達であったが、それでも何とかなるはずだった。
先に居た1匹を倒し、飛び出してきた2匹を相手にしようとすると、さらに2匹飛び出してきて、合計4匹に!現在そのうちの1匹を倒し、3対3の状態で、後ろから1匹追加ときた!
「グギ!連戦はMPがきつイ!ジン!とにかく1体づつ処理するゾ!オデも棍棒で加勢すル!ヘイト集め頼ム!」
「分かった!ウルフの攻撃は俺が受け持つ!」
「追撃と回復はお任せください!ジンさん!無理なさらないように!」
俺はウルフが出てくるたびに声を上げ、アピールし、ヘイトを受け持つ!
攻撃したい所だが・・・数が多い!ガードするので精一杯だ!
盾を構え、剣で牽制するが、それでもウルフに隙をつかれてダメージを受ける!
その間にミコブとシヨコさんが1体のウルフに集中攻撃!が!倒しきれなかった!
攻撃を受けたウルフのヘイトが・・・まずい、シヨコさんに向かった!
くそ、間に合うか!?
「グルァ!」
「お前の相手は俺だ!!」
駄目だ、ウルフがシヨコさんに飛び掛かる方が速かった!まずい!
「大丈夫ですわ!視えております!」
まるでウルフがどこへ攻撃してくるのかを分かっていたように、避けるシヨコさん
シヨコさんの持つスキル[直感」が発動したんだ!
そのスキルは相手の行動を瞬間的に察知するスキルらしく、今のように攻撃を察知し、回避する事もできるようだ、話には聞いていたがウルフ狩りを始めてからシヨコさんは攻撃されなかった為、実際に見るのはこれが初めてだ。
ホッとしたのも束の間、強い振動を受ける!
「ぐぁ!・・・この!」
「ジン!心配なのは分かるガ、オデもシヨコも1発食らったぐらいじゃ死なねーヨ!こっちは任せロ!少しの間耐えてくレ!」
ミコブの言う通りだ、逆に俺が死んだり、複数のウルフがミコブやシヨコさんに行く方がまずい!手負いの1匹は任せてこちらに集中しなければ!
そこで後ろから来たウルフが加わり、俺は3体のヘイトを受け持ちつつ、ひたすらガードに徹する、防具と鉄盾のお陰でなんとか凌げているが、油断はできない!
「はっ!ジンさん!今行きますわ![光癒]!」
手負いのウルフを倒したのか、二人がこちらに向かってくる!
さらにシヨコさんはこちらに向かう前に回復魔法[光癒]を詠唱、発動する!
光の玉が俺にぶつかると、俺の傷が癒え、HPが回復した!
「ありがとうございます!ははは!これでまだまだ戦えます!!」
これならイケる!すこしハイになり、勢いよく鉄剣を振り回すと、丁度飛び掛かって来たウルフにヒット!ダメージを与える!軽く吹き飛んだウルフへ二人の追撃が入り、消滅!残り2体!
「長引かせるとまた来るかも知れないんだナ!」
「ええ!私のMPはまだ残ってます!ジンさん!その調子で攻撃を!」
「分かった!さっきまでのお返しだぁ!」
守り重視から一転し、攻撃に転じた俺は、飛び掛かって来たウルフにシールドバッシュ!ヒット!そこでもう1体からダメージを受けるが剣で反撃!くそ!外れたか!
俺が一発与えたウルフが処理され、最後のウルフもダメージを受けつつ強引に攻撃を与え、二人が追撃し処理、合計8匹のウルフとの戦闘に勝利した俺達。
シヨコさんのおかげでHPは回復したが、連戦は精神的にきつく、3人とも疲れてしまっていた。
「はぁ・・はぁ・・・一度戻りますか?」
「グギ・・・そうしたいとこだガ、戻ってる最中に襲われないとも限らんしナ・・・」
「すぅ・・・ふぅ・・・今の所はウルフの気配はしないようです」
そこまで進んでないとはいえ、街道が見えないくらいには森に入ってきてしまっている、俺たちは警戒しながらも、この場で少し休む事にした。
木を背に3人で腰かける、辺りを見れば木々の間から薄暗い森へ木漏れ日が差し込んでいて、先程まで戦闘していた場所とは思えない程、綺麗だ・・・・。
・・・それは、丁度俺達休憩を終え、移動するかと考え始めた頃の事だった。
森の中に、複数のウルフの遠吠えが響き、草葉の擦れる音がしたのは・・・。
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