第17話 門番の依頼

無事、戦士のジョブに就いた俺は神殿を出て、力試しをするため、ナナバ東の森にでも行こうかと、東門へ向かう、途中、先日HP回復ポーションを買った店で、ポーションを買う。

門が見えてきて、いざ草原へ!と門番さんに会釈した時に不意に


「おい、ちょっとまて」


「えっ!?」


門番さんに呼び止められてしまった、昨日も会った態度こそぶっきらぼうだが、優しい門番さんだ。


「冒険者、頼みたい事がある、いいか?」


「いいですよ、あ!俺の名前はジンです!」


「・・・アズバンだ、最近近くでゴブリン共が多数発見された、

その討伐を頼みたい」


ゴブリンか、多数というとどれくらいだろうか?あと、棍棒以外の武器持ちだとちょっときついかもしれない。

門番さんに詳細を聞く。


「情報では剣や弓を持ったゴブリンは見つかっていない、正確な数はわからんが、10匹以上群れているようだ、場所は受けるなら教える、どうだ?」


ウォリアーやアーチャー、スナイパーは居ないのか、それならば大丈夫かな?


「分かりました、受けます!」


「助かる、今はどこも人手不足でな、では、頼むぞ、場所は[ナナバ東の森]だ、今位置情報を送る」


すると、門番さんの前にウィンドウが出て、操作をする、俺の前にもウィンドウが出て、マップが表示された、ナナバ東の森の、未到達の場所にマークが付く。

NPCでもウィンドウが使えるのか、初めて見た。

ギルドや武器屋の人は使って無かったな、受付や棚の前ではウィンドウ出てきたけど・・・。


「では、頼むぞ、期限は[3日]だ、討伐を完了したらオレに報告してくれ、気を付けろよ」


「はい!ありがとうございます!」


すると、ピコンと機械音がなり、メッセージが表示された。


クエストを受注しました。


[ナナバ東の森] [複数]の[ゴブリン][討伐]


期間[3日] 報酬[?] 残り時間あと[71時間]


依頼者 [ナナバの街] [東門 門番 アズバン]


おお、クエスト!ギルドでも受けられるそうだが、町の人から依頼される事もあるのか!確認し、依頼された地点へと向かう。

昨日に比べてプヨンを狩っている人は減ったとはいえ、それなりにプレイヤーが居る草原を進み、森に到着。

マップを見ながら目的地へと進む。


途中、モスピーや、ゴブリンが出たが、今の俺の敵ではなかった。

鉄剣で一撃加えれば消滅、素材を拾っていく。

前より相手の動きが遅くなった気がするのは、レベルアップのお陰だろうか。

攻撃力だけじゃなく、動体視力とか、そういうものも上がるのかな。

盾やアピールを使うまでもなく、モンスターを蹴散らしながら、順調に進む。

森の中は薄暗いとはいえ、昼間なら気にならない程度だ。

モンスター以外にも、プレイヤーがそこそこ歩いていたりして、前に来た時より気を楽にして進めた。

森の中をどんどん進み、マップに表示された地点へとたどり着いた。


そこは、木々が多く、似たような景色が続いた森の奥、情報が無いと見つけるのが困難だと思われる場所にあった。

崖の下に洞窟があり、見張りだろうか、3匹のゴブリンがその前に座っている。

棍棒と布切れしか装備していないだ。

厳しそうなら引き返して、仲間を集めようかと思ったけれど、これならいけそうだな。

俺は堂々と正面から、洞窟に向かう。


「グギャ!?」「グギャギャ!」「グギャグギャ!」


3匹のゴブリンが、こちらに気づいたようだ。


「ははは、来いよゴブリン」


格下だとわかっているからこその余裕、俺は今PTを組んでいる訳じゃないが

[アピール]を使った。

理由?

3匹が一斉に飛び掛かってくる、遅い遅い・・・・!!

一匹を鉄剣で一閃、同時にもう一匹を[木盾]で[ぶん殴る]

一閃されたゴブリンは消滅、木盾で殴られたゴブリンは吹っ飛んだが、まだ消滅してはいないようだ、とはいえダメージが大きいのか仰向けに大の字で倒れて動かない。

これじゃあもう一匹の攻撃を盾で防げないぞ、仕方がない。

俺は鉄剣でゴブリンの棍棒を受け止めようとしたが油断からか反応が遅れ、腕に棍棒がヒットした、軽い振動を受ける。


HPを確認・・・なんだ、この程度か。

最悪HP回復ポーションを使う事を考えたが、ほとんど食らっていなかった。

鉄剣で一閃、ゴブリンは消滅した。

ジョブのお陰か?いや、たぶんレベルアップのお陰な気がするなぁと考えつつ、盾で殴って倒れたゴブリンの所へ行く。

白目をむいてピクリとも動かないゴブリン、気絶しているのかな?

生かしておく理由も無いし、鉄剣を刺すと消滅。


うーん、特に血が出るとかでもないから普通に倒しちゃってるけど、もしこれがリアルだったら、相当やばい事してないか?

いくらモンスターだから、敵だからといっても、ちょっと気が引けるなぁ

とはいえ、これはゲームだ。

倒さないとレベルアップしないし、ゴブリンを生かしておいたら町の人が襲われるかもしれないんだ!と、自分に言い聞かせた。


3匹のゴブリンの冥福を心の中で祈ると洞窟の入口に立つ。

高さ2~3m、横幅3~4mの近くで見ると割と大きな洞窟の入口に入っていく。

洞窟の中は光が届かず、暗いかと思ったが、キャラクターの夜目が効くのか、ゲームの仕様かわからないが、光源も無いのに薄暗い程度だ。

入ってすぐに奥から複数のゴブリンが飛び出してきた!!

3・・4・・5匹!まだ奥にも居そうだ!

退くか・・・いや、何匹いようと棍棒しか持ってないゴブリンは雑魚だ!

なら、押し通るか!ははは!なんだか、今日は暴れたい気分だな!!


「は、はは、ははははは!何匹でもかかってこいよ!ゴブリン!」


「グ・・グギャ・・」


笑いながら構え、叫ぶ俺を見て、ゴブリンが一瞬戸惑う、が、すぐに向かってきた!

5匹・・・いや、後ろからさらに2匹!合計7匹か!だが・・・!!


「遅い!!」


1匹!2匹!鉄剣で連続切り伏せる!3匹目!ここは・・・!!

ゴブリンの顔面へ[膝蹴り]!棍棒が少しかすったが、HPは問題ない!

消滅せず、後ろに吹っ飛ぶ3匹目、その後ろから4匹目、5匹目!!

二匹同時に棍棒を振り下ろしながら飛び掛かってくる!!


俺はその攻撃をバックステップで避ける!そんな遅い攻撃、ガードする必要さえないぞ!

二匹が同時に棍棒を空ぶらせた、そこへ・・・・


鉄剣で一閃!二匹まとめて消滅!!


「グ・・グギャ」「・・・グギャグギャー!!」


その光景を見た一番後ろの2匹は洞窟の奥へ逃げ出した。


「おーい!あらら、行っちゃった」


逃げ出すゴブリンの後ろ姿に向けて声を掛けたが、返事は無かった。

残ったのは、膝蹴りを受け吹き飛んだ3匹目、見れば、体勢を崩していたのか

よたよたと体を揺らし、棍棒を構えた。

ふと、昔やったゲームを思い出した、VRではないが、そのゲームではモンスターを倒した後、まれにモンスターが起き上がって仲間になることがあった。

勝敗は決しているし、仲間にできないかなぁと、剣を下ろして、声を掛ける。


「ねぇ、戦うのはやめて、友達にならない?」


「グギャグギャー!」


ゴブリンが棍棒を振り下ろしながら飛び掛かって来た!

あーだめみたいだ、残念。

棍棒を避け、一閃、ゴブリンは消滅した、そこにはいつも通りのゴブリンの耳がドロップ。

そううまくはいかないかぁ、とちょっとがっかりする。

ゴブリンの中にも、ミコブのような、モンスターではなく、プレイヤーでゴブリン族を選んだ人も居る。

だが、ミコブの話では、ゴブリン族を選ぶプレイヤーは、他のプレイヤーを襲う事を楽しむ[PKプレイヤーキラー]が多いそうで、「襲ってくるのは大体モンスターかPKだかラ、気にせずぶっ殺しちまえばイイ」と言っていた。


いつも戦闘前に声を掛けているが、ミコブ以外のプレイヤーには、☆が付いていたレア種族だからあまりいないのだろうか?

襲いかかってきた中にPKのプレイヤーが混ざってたりして、なんてな。

プレイヤーだろうと、モンスターだろうと、襲いかかってくる、声を掛けても仲間にならない、なら遠慮はいらないかな。

俺は逃げた二匹を追い、洞窟の奥へと進んだ。



先へ進むと、すぐに広い空間にでた。

そこには棍棒を持ったゴブリンが2匹と・・・

棍棒と盾を持った[ゴブリンファイター]

帽子を被り、杖を持った[ゴブリンメイジ]

合計4匹が待ち構えていた!!


あー、そういえば門番さん、を持ったゴブリンはいないって言ってた

盾や杖を持ったゴブリンなら居ても嘘じゃないな、ははは

いいさ、やってやろう!今日の俺はなんだか気持ちが昂ってるのさ!


「お前たちで最後みたいだね、どうする?降参するなら見逃すよ」


「グギャァ!」「グギャギャ!」

「グギャ!」「グギャ!」


ははは、やっぱりね。

剣を向け、降伏を迫った俺にメイジが詠唱を開始、2匹のゴブリンが向かってくる!

応えはNOって事だ、わかっていたけどね!

最初にメイジの放った火の玉が俺へ迫って来たので、木盾でガード、軽い振動を受ける、魔法はガードしても割とダメージを受けるんだよな・・・。

HPの最大値が上がっているのか、今の俺にはそこまでではないが。

続けて、その間に二手に分かれたゴブリンが俺に向けて、棍棒で攻撃してくる。

目についた片方の側に飛び、一閃して切り捨てた、もう片方のゴブリンも棍棒による攻撃を空振りし、そのスキをついて俺はさらに一閃!

2匹のゴブリンが消滅した所で、再びメイジの詠唱が完了、火の玉が俺に迫る!

魔法は避けにくいし、ガードしても矢よりダメージが大きいから嫌だな。

その分、詠唱に時間がかかるが・・・

来ると分かっていれば避けれない事はないのだが・・・

複数相手だと、避けた後の隙が気になる、最初の火の玉をガードしたのもそのせいだ。

今もファイターが一定の距離を保ちながら構えている。


火の玉を木盾でガード!さらにHPが削れる。

だがまだ半分以上残っている、敵はファイターとメイジのみ。

ファイターはメイジを守るような位置で、俺に立ちふさがっている。

戦いが長引くとまずい、メイジは次の詠唱を始めようとしている!

メイジを倒すにはファイターが邪魔だ!なら被弾覚悟でファイターをさっさと仕留め、HPが無くならないうちにメイジを倒すしかない!

今の俺には退くという考えは存在しなかった。


火の玉をガードした瞬間、俺は一気にファイターに突っ込んでいく!

咄嗟に盾を構え、防御態勢に入るファイター!

俺はそのファイターに向かって


盾でぶん殴った!

ガンッ!という鈍い音が響く!


「グギャ!グ!?」


反撃しようとしたファイターが盾をずらし、攻撃態勢に入った瞬間!

俺の鉄剣による攻撃がファイターの顔面に直撃!クリティカルヒット!

鉄剣で盾ごと攻撃しても大きなダメージを当たられたかもしれないが、先ほど火の玉をガードした時、二手に分かれたゴブリンが丁度盾に重なって見えなくなった事を思い出し、閃いたのだ!その時俺は見えていたゴブリンに向かって飛び、切り捨て、たまたま攻撃も回避できたが、例えば顔に向かって攻撃されていたら視界がほとんど塞がれてしまう。

[ゴブリンファイター]は盾を装備し、棍棒を持った[ゴブリン]だ。

その体格は人の子供のように小さく、装備した盾で顔を防いだら、前が見えないはずだ。


前にファイターと戦った時、その盾で攻撃を防がれた後、すぐに反撃してきた。

その時は厄介だと思ったが、それを逆手に取った形だ!

盾で攻撃を防いだら、反撃してくる、その一瞬の隙にさらに攻撃できれば!と!

思惑通りに事が進み、俺の会心の一閃を受けたファイターは消滅。

残るメイジが火の玉を放ち、ダメージを受けたが、HPは半分ぐらい残っている。


「グ・・ギャギッ!」


「やらせないよ!」


俺を仕留めきれなかったメイジが、次の詠唱を始めようとするが、待ってはあげない。

鉄剣による一閃によりメイジが消滅すると、頭の中に声が響いた。



 クエストを達成しました 報告し、報酬を受け取りましょう





久しぶりに感じる、エアのアナウンスを聞いた俺は

ふぅーっと、一息つき、「よし!」軽く片腕でガッツポーズする。

素材を回収し、クエストの報告をするため、来た道を引き返し、ナナバの街へ戻る。

帰り道に今日は何であんなに熱くなってしまったんだろう、と、ふと考える。

ジョブを取得し、戦士になったのがうれしかったからだろうか。

一瞬悲しそうな妹の顔が浮び、心がズキッと痛む・・・いや、違うぞ。

妹に誘いを断られたとかは関係ない!うん関係ない!

ほら、人間誰だってそういう気分になることがあるはずだ!

むしゃくしゃしてやった!ってやつだ!


「・・・って俺は誰に言い訳してるんだ」


独り言を零すと、また悲しそうな妹の顔が頭に浮かんできたため、

首を振って振り払い、心の痛みをかき消そうと

ナナバの街へ全力ダッシュして帰ったのであった。


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