第16話 ジョブ

サービス開始二日目の朝。

いつものように朝食を作り終えたが、妹が下りて来る気配は無い。


なるちゃん、朝だぞー?」


返事が無い為、部屋に入るとそこにはピクリとも動かない妹が・・・!!!


・・・・・VRの機械を付けたまま、ピクリとも動かない妹の傍に行き、もう一度声を掛ける。

すると、ようやく手を動かし、VRを外す。


「おはよ・・・・ふぁ」


「おはよう、GMOが楽しいのは分かるけど、なるちゃんが早起きしてまでやるなんて・・・珍しいね」


「ふぁ・・・んー」


ゲームに夢中になって部屋に引きこもる事は多いが、基本的に朝は弱く、今まで早起きしてまでゲームをやっていた事はなかった、それだけGMOが楽しいのだろう。

気持ちは分からないでもないが、食事はちゃんと取ってほしい所だ。

眠そうな妹を抱きかかえてリビングに下り、椅子に座らせる。

手を合わせ、食事を開始するのだが・・・・


「はむ・・・・はむ・・・こくり・・・こくり・・・」


トーストを一口二口かじりながら眠そうに頭を揺らし・・・・目を閉じて動きが止まる妹。


なるちゃん・・?大丈夫?」


「・・・・だい、じょーぶ・・・ふぁぁ」


口ではそう言っているが、これはダメそうだ。

うーん、ここは兄として、どうするべきだろう。

今日はゲームを止めるべきか?これが続いたらまずそうだし。

無理しすぎて体調を崩したら大変だ、もともと妹は体が強い方ではない。


「今日は・・・ゲームをやめて外にお出かけしない?」


「ん・・・んー・・やー・・・」


ぐはっ、断られてしまった!

妹は俺がお願いしたり誘うと大体は応じてくれるが、外に出かけるのは断られた事がある、だがそれも滅多に無いし、特にここ最近は無かったのに・・・

ああ、そういえば断られたときはねーさんがなるに可愛い服を買う!とうるさかった時だったっけ・・・・まぁそれはともかく。

・・・・うーん、苦手な朝に早く起きてやるくらい、楽しんでいるんだから、もう少し様子を見るか・・・?

そう結論をだした所で妹が口を開いた。


「おにー・・ちゃん」


「ん?どうしたの?」


「・・・・たー・・べ、させてー」


はぁ、とため息をついて、要望に応じて食事の手伝いをする。


「はい、口開けて?あーん」


「ふぁ・・ん、もぐもぐ」


なんだか、小さい頃に戻ったみたいだなぁ、と懐かしむ。

いや、妹は今でも小さいが、もっと小さい頃だ・・・・

・・・俺が妹にご飯を食べさせていた時に、ねーさんがやりたがって、やらせてみたらなるちゃん大泣きしたっけ・・・そしたらねーさんの方がもっと大泣きしだして・・・・はぁ・・・。


なんとか食事を終えると、眠気が覚めてきた様子の妹に声をかける。

先程は断られたが、もう一度・・・!!


なるちゃん、今日はお出かけして、お昼は外で食べない?」


「んー?んー・・・今GMOいいとこだから・・・・」


少し考えた様子で、悲しそうにそう話すなる

ぐぬぬ、またしても断られてしまった、おのれGMO!!

しかし、GMOが楽しいのは事実、出かけないのであれば俺もこの後プレイするであろう。


「あ、そうだ、おにいちゃん・・・」


「おお?どうした?出かける気になった?」


「今日のお昼も、部屋で食べれるのが良い・・・」


「・・・・・・・」


俺はにっこりと笑顔を作りながら、無言で妹の前に行く。

妹の顔の正面に顔を近づけ、笑顔のまま・・・・


妹のぷにぷにほっぺを両手で軽く引っ張った!むにーーー


「ふぁ、おひいひゃ・・・」


「・・・・だーめ!お昼は休憩して、一緒に食べよう?」


あまり引っ張り続けてもかわいそうなので、すぐ離してあげた。

妹は上目遣いで


「どうしても・・だめ?」


とおねだりしてくるが、兄として妹のため、心を鬼にして首を振る。

・・・・だが、しょんぼりした妹を見ていると、心が痛くなるので、何か気分が上がるような話題を掛けてあげたい。

うーんと・・・そうだ!


「そうだ、なるちゃんは、GMOのキャラ、レベルいくつになった?」


「え、えっと・・・・ひ、ひみつー」


むむむ、これは・・・あとで驚かせようと考えているのかな?

なるちゃんの事だし、15・・・いや、20はいってる気がするが・・


「そ、そっかー・・・昨日の夜、もう一人フレンドが出来てさ、なるちゃんと4人で早く遊びたいなぁー」


「・・・おにいちゃん、フレンドってどんな人?」


お、食いついてきたぞ!妹だって、俺と一緒に遊びたいはずだ!人見知りの妹だが、

俺が一緒なら大丈夫だろうし、ミコブもバンも良い人だからきっと楽しいはずだ!


「ああ、人族の熱血な・・・いや、年上で優しい良い人だよ!」


「年上で優しい?・・・・女の人?」


「いや、男の人だよ」


「ふーん、そっかー・・・」


なるちゃんも含めて4人で遊ぼうよ!」


さぁ、どうだ!一緒に遊べば無理しすぎる事もないだろうし、絶対楽しいぞ!

妹は、うーん・・・と悩むと、口を開いた。


「おにいちゃんと一緒に遊びたいけど・・・もうちょっとだけ待って・・・

今ね、なるがいる場所、たぶん人族の最初の街と離れてるから・・・

一段落したら、絶対そっちに向かうから、もうちょっとだけ・・・」


本当に悲しそうに話す妹の姿を見て、俺は何も言えなくなってしまい、こくりと頷いた。





妹が部屋にこもってしまったので、結局俺もGMOにログインする。

前回と同じく、カッセイラの町からスタート。

ああ、そうだ!今日はジョブを手に入れようと思っていたんだっけ。

フレンドリストを確認すると、ナル以外ログインしていなかったので、ジョブを手に入れようと神殿を目指す・・・が、場所が分からないので門番さんに聞いてみる事にした。


「神殿はこの町には無いな、近くだとナナバの街にあったはずだぞ、ナナバの街へは―」


「あ!俺、ナナバから来たので、道は大丈夫です!ありがとうございます!」


「そうか、それならポータルですぐ帰れるんじゃないか?」


「ポータル?」


門番さんによるとある程度の規模の町にはポータルという、他の町へ瞬時に移動できる施設があるそうだ、ただし移動できるのは自分が訪れた事がある場所に限る上、移動先が仲の悪い別の国だったりすると移動が制限されているそうだ。

ポータルは街が管理していて、利用するのに金がかかり、基本的に距離が離れた移動先ほど金がかかるそうだ。


「確かナナバの街なら50Gでいけるぞ、場所はこの大通りをまっすぐいった、左手側に大きな広場があって、魔法陣と、門番がいるはずだ、いけばわかる」


「ありがとうございます!いってみます!」


昨日換金し、50Gなら余裕で払えるので、利用してみる事にした。

大通りを進み、冒険者ギルドの前を通り、さらに奥へ進んでいくと

公園のような場所の中心に大きな台座があって、ゲーム開始時に乗ったような魔法陣があり、その前に二人、門番と思われる格好をした人が立っていた。

俺がそこへ向かう途中に、別のプレイヤーが魔法陣に入り、何か操作して光となって消えた。


間違いなさそうだ、俺も魔法陣の前まで行き、門番に挨拶してから魔法陣に乗る。

ウィンドウが出てきて、リストにはナナバの街があり、選ぶと、荷物から50G消費され、瞬間、光に包まれ、気づいたときには目の前に、見覚えのある噴水がある大きな街の中に居た、振り向けばポータルもあり、どうやら、魔法陣の上に転送されるのではなく、魔法陣の近くに転送される形だった。

とは言え、ポータルの魔法陣の台座もそれなりに大きいため、10人以上一緒に乗っても全然余裕がありそうだが・・・

また、ポータルをこちら側から利用する人も多いみたいで、この噴水の周りはプレイヤーが多く行き来していた。


お!あっちではプレイヤーがPTのメンバーを募集しているぞ!レベル10以上の回復ができる方・・・か、ダメだ回復魔法は覚えてない。

ま、今はとにかくジョブだな!と、神殿を探す、がナナバの街は広くて、道も多いのでどこにあるか検討もつかず、やはりここは・・・と、町の人に聞いてみる事にする。

噴水の周りから離れ、適当な道を歩いていると、屋台や露店が並ぶ場所についた。

その中から、一軒の現在客が居ない店の店主に、声を掛けた。


「すみません、ジョブを入手できる神殿は、どこにありますか?」


「いらっしゃい、神殿ならあっちをまっすぐ行って左に行けば見えてくるはずだ」


「ありがとうございます!あ、それ1本ください!」


「まいど!30Gだ!」


売っていた串にささった肉を買う、HP回復ポーションと同じ値段だが美味しそうだ!移動しながら頬張ると、口の中に肉汁が広がる、ジューシーで、ほんのり炭の香がする、美味い!だが、これは何の肉だろう?牛?豚?羊・・・のようなクセは無いけど・・・・むむむ

使用されている肉の種類が気になるが、引き返すのもアレなので、そのまま進む。

まっすぐ進んで、突き当りを左に進むと、すぐに大きな神殿が見えてきた。

神殿の前にも門番のような人がいて、近づくと声を掛けられた。


「止まれ!・・・ふむ、lv10を超えているみたいだな、通って良いぞ」


どうやらここで、lv10以下の人は止められるようだ。

門番さんに話しかけ、聞いた所、ここがジョブを習得できるウェイ神殿だそうだ。

最近TVを見ると、うぇーい!と叫ぶ若者が出ていたりするが、恐らくそのうぇいではなく、ハイウェイとかのウェイだろう、変な事を考えてしまった。

神殿の中にウェイ神の像があり、そこでジョブを得られるらしい。

また、そのさらに奥に行くとなんと種族を変更できる転生の間というのがあり、そちらはLV20から利用できるそうだ。


神殿に入ると、多くのプレイヤーが像の周りにいて、ウィンドウを操作している。

ちなみにウェイ神は女神だったらしく、綺麗な女性に天使のような翼が生えた大きい像が手を広げ、鎮座していた。

近づくと、俺の前にもウィンドウが出てきて、ジョブのリストが並ぶ。


戦士 剣士 弓士 魔術士 癒術士・・・あれ、これだけ?


表示された5つの職業から、戦士と剣士を見てみる。

戦士は近接戦闘向けのジョブで、近接武器全般と、盾、重鎧に適性があり、攻守バランスの良いジョブのようだ。

じゃあ剣士はなんなんだっていうと、同じく近接向けではあるが剣と盾、軽鎧に適性があり、防御より攻撃に向いたジョブのようだ。

[タンク]を目指すなら攻撃向きの剣士より、攻守バランスの良い戦士が良さそうだ。

俺は戦士を選ぶ、すると体がレベルアップの時のように光を放った。

・・・特に力が湧いてくるとかはないな?

だが、ステータスを見ると、ちゃんと更新されていた。





名前[ジン] 種族[人族] ジョブ[戦士]


スキル [クリティカルアップ] クリティカル率上昇・威力上昇

    [踏み止まり] 現在のHP以上のダメージを受けた時、瀕死で耐える

     超過ダメージが多い程発動確率低下、発動時にノックバック・ノックダウ

     ンを無効化する。   

    [アピール] 相手を挑発し、自分に注意を向ける

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