第14話 VSゴブリンウォリアー
カッセイラ城址草原の奥、深い堀に囲まれ、崩れた古い洋風の建物の残骸が所々に存在するが、草原とエリアを分ける門と壁以外には大きな建物は存在しない。
せいぜいが人の背ぐらいの残骸がぽつぽつあるぐらいだ。
その陰にゴブリンが隠れていたり、逆にそこに身を潜めてゴブリンを奇襲するといった事はあるが、特に[宝]があるわけじゃない。
池はきついと判断した俺たちは、ゴブリン達を狩りながら別の方向へ向かっていた。
ただ、この場所は結構広く、そして奇襲を受けたりする距離ではないが、遠くは霧がかかったように何があるか見えなくなっている。
「ここってダンジョンなんですかね?」
俺はふと気になり、先ほどからPTを組んでいるバーンズさんに聞いてみた。
「いや、違うと思うな、私もこのゲームではまだダンジョンに入った事は無いが、そうだな、ナナバ東の草原にあった森みたいなものだろう、つまり、ダンジョンではないが、ダンジョンがある可能性が高い・・・そうだな、城址というくらいなんだからどこかに城でもあるんじゃないか?」
「なるほど、遠くは見えませんし、こう広いと探すのも大変ですね」
「そうだな、ま、時間が経てば誰かが見つけるさ、とはいえその情報がいつ流れるかは分からん、探してみるか?」
森のダンジョンの情報はサービス開始1日目ですでに広まっているみたいだった。
それを考えればここにダンジョンがあるなら、近いうちに場所も広まりそうだ。
他にもバーンズさんが言うにはナナバ西の草原を進んだ所にもダンジョンが見つかったらしく、大きな街があるという事も広まり、たくさんの人がそちらに行っているらしい。
結構人が居る気がしても、ここに居るのはごく一部だそうだ。
「西の情報はすぐ広まるだろう、それなら私はあまり人が来ていないような場所を先に探索しておこうと思ってな、そういう人間は一定数いる、なぜかっていうとだな」
バーンズさんはそこで一旦言葉を飲み込み、俺の目を見る。
「おいしい狩場や、クエスト、イベントなんかがあるかも知れないからな、そしてその情報を独占できれば・・・・」
俺はゴクリと喉を鳴らす。
「他の奴らより、優位に立てる、ゲームは楽しむものでもあるが、競争でもある、人より強くなったり珍しい装備を持っていたら、自慢できるだろう?強いモンスターを倒したら達成感を感じるだろう?そうして満足感を得るのさ」
なるほど、俺はゲームは楽しむための遊びだと考えていた・・・が、楽しい遊びを真剣に、本気で取り組む人達もいる、妹だってそうだ。
バーンズさんは社会人らしく、日中は仕事があるので、ゲームに人生を捧げている人達と競争するのは難しいと言った。
「だが、それでも私は、そういう奴らに追いつきたい、勝ちたいと思ってしまう、難しい事だがな、だがVRMMOというのはプレイ時間だけが絶対的な強さじゃないんだ、例の一つとして、そうだな、単純に100回に1回の確率で手に入るアイテムがあったとしよう、プレイ時間をかけ、100回以上かけ、手に入れるヤツもいれば、運よく1回で手にいれる奴もいるだろう、そこで差が縮まる」
バーンズさんが続ける。
「他の奴らが到達していない、発見していないものを見つけることができれば、レアな装備を手に入れる事ができるかもしれない、もしかしたら先着で世界に一つしかないような装備・・・なんてのもあるかもしれん、私みたいなプレイ時間の限られているヤツはそういうものを狙って行かなければ、最前線組とはやりあえん」
ま、最前線の奴らの方がそういう物を手に入れる事が多いけどな、とバーンズさんは苦笑した。
俺だってゲームをやっていて、強くなりたい!珍しい装備が欲しい!と思う。
バーンズさんの言葉に同意し、ダンジョンを探すため、行った事がない方角へどんどん進んでいく。
狩りをしながら進んでいく間に、俺とバーンズさんはフレンドになった!
「ああ、私の事はバンって呼んでくれ、バズでもいいぞ」
フレンド登録して、ガシリと握手した折に、そう言われる。
VRMMOでは呼び名が長いより、短い方が、指示やピンチの際の呼びかけに有利らしい、ほんの少しの差が生死を分ける事もあるそうだ。
なので、以後、俺はバーンズさんの事を[バン]という愛称で呼ぶ事にした。
しばらく進むと、坂があり、その上に入り口にあった物と似た、門が見えてきた。
付近にはモンスターが居ない。
坂を上り、二人で、慎重に門を抜ける・・と
4人PTと、2匹のモンスターが戦闘をしていた!
少し距離はあるが、バンと二人でその様子を覗き見る。
池に居たPTとは別のPTだ、木盾とメイスを装備した前衛の人と、魔法使い風の人が3人のPTで、一人は回復役のようであった。
相手のモンスターは剣と大きな盾を装備したゴブリン[ゴブリンナイト]
その後方に両手剣を装備した、[ゴブリンウォリアー]
前衛の人は、ウォリアーの攻撃を盾で防ぎつつ、メイスを振り回す!
上手い!守りを固めながらも無駄のない動きでウォリアーとナイトを牽制している!
多少ダメージをくらっている様子はあるものの、回復役の人が回復魔法をかけ続けている!二人の魔法使いが絶え間なくナイトに火の玉と水の玉を放ち続けており、安定感がある!
しばらくして、ナイトが沈み、ウォリアーだけになると、集中攻撃により瞬く間に倒してしまった!そして4人は奥へ進んでいく!
思わず見入ってしまった!あの前衛の[タンク]の人の動きを真似できれば複数の敵に対処できるはずだ!今まで1匹で居るモンスターしか狙わず、二体で襲ってきたゴブリンの時も1対1で分散して戦ったので、1対2で戦ったことは無い。
不利ではあるが、できないわけじゃないんだ!俺もがんばるぞ!
そこへ、バンが声を掛けてきた。
「またゴブリンか、だが先ほどより強そうだぞ?どうする?」
「そうですね、近くで1匹で居るのを探して、やってみましょう!」
そう返事をすると、門の近くから索敵を開始する。
だが複数で居るゴブリンばかりで、中々1匹だけのゴブリンが見つからない。
しばらくして、ようやく1匹で居る[ゴブリンウォリアー]を発見し、挑む事にした。
「いくぞウォリアー!」
声を上げ、ウォリアーに向かって行く!気づいたウォリアーが両手剣を引きずりながら、向かってくる!そして重そうな両手剣を振り上げるのだが・・・!
「遅い!」
「グギャゥ!」
ウォリアーの攻撃を回避!わざわざ木盾でガードしなくても、この速度なら避けられる!それに、ガードしてもこの両手剣の一撃は痛そうだ!
俺は反撃に移ろうと鉄剣を振り上げ――
「いかん!ジン!危ない!」
バンの声に咄嗟に反応し、バックステップでウォリアーから距離を取った!が!?_
横から強い衝撃!なんとか踏ん張る!ウォリアーじゃない、これは!?
攻撃を受けた方向を見れば、大きな弓を持ったゴブリン[ゴブリンスナイパー]が俺に矢を放ち攻撃してきたようだった!そして今まさに2発目の矢を俺に向け、放ってきた!!
木盾を構えガード!軽い衝撃を受ける!
くそ、1匹じゃなかったのか・・・ウォリアーは!?
ウォリアーの方を向けば、バンが後ろから攻撃しており、ダメージを与えていた!
が、ウォリアーのヘイトが俺ではなく、バンに向いた気がした!
いけない!
「おい!お前の相手は俺だ!」(アピール!)
強く意識し、叫ぶ!ウォリアーはこちらを向き、ヘイトが移ったようだ!
そしてウォリアーが飛び掛かってきた!
く、ダメだ!避けられない!
瞬間的に木盾を構え、ガード!がっ・・・!
激しい衝撃を受け、後ろに吹き飛ばされた!
「うぐっ・・・この・・・!」
「ジン!うおおおりゃああああ!!」
「グギャ!?」
バンの追撃がウォリアーにヒット!だが、まだ倒せていない!
吹き飛んだ俺にさらにスナイパーの攻撃が飛んできた!
なんとか木盾でガード!しかし体勢を崩し、片膝をつく!
ダメージを受けすぎると、強制的に体勢を崩すのか!?
くそ、ウォリアーは!?
再びウォリアーの方を向けば、バンが攻撃を加え、またヘイトがバンに移ったようだ!
「ジン!こっちはまかせろ!体勢を整えるんだ!」
俺は体勢を整えつつHPを確認、残り少ない!そうだ、ポーションを!
ポーションを使い半分ほどまで回復、だが、またスナイパーの攻撃が来て、防いだものの少し削れる。
体勢を整え終えた時
「うおおお!!!」
「グギャァアア!」
バンとウォリアーの攻撃が同時にお互いにヒット!
どちらも後方に吹き飛ぶ!ウォリアーはまだ生きている!
まずい!今の一撃でバンの体力が半分以上削られている!
もう一撃食らったらバンは・・・!
「お前の相手は、俺だって言ってるだろぉ!!」
俺は叫びながらウォリアーへ向かって行く!ダメだヘイトが移らない!
「うおおおおおぉぉぉ!!」
鉄剣を振り上げ、ウォリアーへ突撃!一閃!くそ!まだ倒せないのか!
ウォリアーがこちらを向く!突っ込んできたため、回避もガードも間に合わない!
両手剣を振り上げたウォリアーの一撃が俺に・・・!!
瞬間
ウォリアーの動きが止まり、消滅!バンが後ろから攻撃して倒したんだ!
た、助かった・・・あの一撃を食らっていたら俺は死・・・ぐわっ!?
ほっとしたのも束の間、強い衝撃を受け、俺はその場から吹き飛ばされ、倒れる!!
スナイパーだ!まだスナイパーが残っているじゃないか!くそ!!
「ジン!大丈夫か!?くそ、てめぇええええ!」
俺は立ち上がろうとする・・・が、バンが走っていった先で・・・
こちらへ向け弓を構えるスナイパーを見つけた。
HPはもうほとんど残っていない、今攻撃を受けたら間違いなく死ぬ。
避ける事もガードすることもできない、立ち上がる前に確実に攻撃が来る!
「てめぇええ!ぶっつぶしてやるぞぉおお!!」
「グギャギャ!」
「く、バン・・・すみま―」
叫ぶバン、スナイパーはそれを気にもせず、こちらをまっすぐ見ている。
スナイパーが矢を放った、その矢は吸い込まれるように俺に向かい・・・・ヒット。
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