第13話 PT組みませんか?

装備を整えた俺はカッセイラ城址草原に来ていた。

現在は昼、ゴブリンがぽつぽつ沸いていて、遠目に一人で戦ってる人が見えたり、門の近くでPTを組んでると思われる人達とすれ違ったりしていた。

とはいえ、そこまで混雑している訳ではなく、近くに沸いていたゴブリンで、試し切りをする事にした。

近寄ると、ゴブリンはこちらに気づいたが遅い!先手はもらった!

鉄剣は重そうに見えたが、ゲームだからか棍棒と変わらない、ただ片手に盾を装備している分と、鎧の分の重量があり、今までと比べ若干動き難い。

振り上げた鉄剣でゴブリンを一閃する!


「はぁっ!」


「グギ!?」


ゴブリンは力を失い消滅、一撃・・・一撃で倒したぞ!?

今では楽勝になったとはいえ、最初は苦戦したあのゴブリンを!しかも一人で!

強くなった実感を得た俺は、思わず口角が上がるのを抑えながらジロリとあたりを見回す。

すぐに次のを見つけた俺は、喜々としてへ駆け出した!




少しの間テンションに身を任せ、ゴブリン狩りをしていた俺だが、ふと

物足りないなぁ・・・と、感じてしまう。

レベルも8から上がっていない、そろそろ上がりそうではあるがゴブリンだと効率が悪いのかもしれない。

スケルトンは夜しか出ないし、恐らくゴブリンのワンランク上であるファイター、アーチャー、メイジは鉄剣があるとはいえ、一人で倒すのは一歩踏み出せなかった。

普通のゲームなら物は試しと行く事もできるが、このゲームはリアルすぎて、本当に死ぬわけじゃないのに、死にたくないと考えてしまう。

ちなみに死んでしまったら、カッセイラの町ではなく、ナナバの町に戻されるみたいだ。


どうしたものかと考える、ミコブが居てくれたらなぁ・・・フレンドリストを見てもミコブはログアウト中、ナルを呼び出すのも憚れるし、兄として妹に泣きつくみたいな事はしたくない、うん・・・。

いや、待てよ?何も妹やミコブじゃなくても、この世界には他にもプレイヤーが居るじゃないか、そうだ、一緒に戦ってくれる人を探せばいいんだ!

とはいえ、俺は初心者だ、誰でも良いから声を掛けるというのはダメな気がする。

足を引っ張る可能性があるし、他のプレイヤーにも都合があるからだ。

それを気にしてばかりではPTなんて組めないが、ミコブの時を思い出そう。

俺はあの時どうだったか?ミコブは?ああ、そうか、わかったぞ。


ゲームが上手い人でも、一人だと選択肢が少ない。

二人なら必然、使える戦術も増え、選択肢が増える。

条件その1、[一人で居るプレイヤー]だ。

しかし、いくら一人で居るとはいえ、俺は初心者だ、俺から誘うなら・・・

条件その2、[実力が近いプレイヤー] だ。

俺と同じように、初心者だったり、レベルがまだ低かったり、装備を新調していなかったり・・・

うーん、まずは一人で居るプレイヤーを見つけて、様子を伺い、声を掛けてみよう。

この辺りに居るプレイヤーは、数人連れで歩いている事が多いが、一人の人が居ない訳じゃない、ああ、見つからなければ[ナナバ東の草原]まで戻れば良いのか。

俺はあたりを見回してモンスターを探すふりをしつつ、プレイヤーをチェックしていった。





カッセイラの町に戻りつつ、一人で居るプレイヤーを探していると、ゴブリンと丁度戦い始めたプレイヤーを発見した。

この人は・・・先ほど遠目に戦っていた人か?

装備は初期の布シリーズに、棍棒だ、俺は戦闘の様子を観察する。

その人はゴブリンに向かって攻撃すると、反撃を受けた、が!そのままさらに連続攻撃!再び攻撃しようとするゴブリンに構わずもう一発!あ、倒したようだ・・・!

その様子をみた俺は決心をし、恐る恐る声を掛けた。


「すみません、ちょっとよろしいですか・・・?」


「む!?私に何か用か?」


身長は俺ぐらいで、赤色の短髪に前髪を上げたスタイル、引き締まった肉体と鋭い眼光、自分より年上で、そうだな、20代後半ぐらいの印象を受ける。

大きな声のハッキリとした口調で返事をしてくれた。

俺は続きを告げる。


「良かったら俺とPT組みませんか?」


俺の装備を確認したのか、視線を下から再び上に向け、俺の目をまっすぐ見て口を開いた。


「ああ、いいぞ、私の名はバーンズ、君は?」


「ジンって言います、よろしくお願いします!PT誘いますね」


「わかった、よろしくな」


バーンズさんがPTに加わった!

レベルは5で、俺は8なので俺より低いが、先ほどの戦闘を見る限り問題無さそうだ!断られたらどうしようと考えもしたが、上手く行って良かった!

改めて自己紹介をし合う、俺はVRゲーム初心者である事と、剣と盾を装備していて、[タンク]志望であり、アピールとクリティカルアップのスキルを使える事を話した、バーンズさんはVRゲームはそこそこ経験しており、[アタッカー]を好み、[蛮勇]というスキルを持っているそうだ、なんでも相手の攻撃を受けても怯んだり、体勢を崩しにくくなるスキルだとか。

自己紹介が終わると、ではどうするかという話になった。


「ゴブリンなら楽勝だろうな、手分けして狩るか?何か、他に良い場所知ってるか?」


「この草原の奥に進むと、盾や弓を持ったゴブリンが居て、二人なら狩れると思うんです!いかがですか?」


「おお、そうか!実はさっきこの草原についたばかりでな、まだプヨンとゴブリンしか倒してないんだ、森は危険そうだったんで、草原を進む奴らのあとを追うようにして進んでいたら町が見えてきたんで、そこを目指して進んでたって訳だ」


「では、先にカッセイラの町に行きます?ギルドや店もありますし」


「そうだな、装備を変えたい、少し待たせてしまうが良いか?」


「はい!案内しますよ!」


カッセイラの町を案内し、ギルドで換金したのち、向かいの武器屋に入る。

もう戻って来たのか!?と驚く話好きの店主に挨拶している間にバーンズさんが装備を決めた、店を出て城址草原の奥に向かいながら、会話をする。


「本当は両手剣が良かったんだが、売って無くてな、鉄剣より重そうだったんでこっちにした」


そう言ってバーンズさんが装備したのは鉄製のメイスだった、片手でも扱えるが、後々、両手剣を使うなら、何かスキルを覚えられるかも!と俺が教えて、両手で使う事にしたようだ。


「最初に声を上げて、注意を引いていたら覚えたんです、何か意識的に行動したら目当てのスキルを覚えられるかもしれません!」


「なるほど、行動によってスキルをねぇ・・・確かに、私はゴリ押しで敵を倒していたからな、蛮勇なんてスキルを覚えたのか」


両手でメイスを持ちブンブン振り回すバーンズさん、これでモンスターに攻撃したらすごい威力がでそうだ!

進んでいると都合よくゴブリンが目の前に沸いていたので、バーンズさんがメイスで攻撃したところ、哀れゴブリンは一撃で消滅。


「威力は申し分ないようだな!感触も良い、棍棒より多少重量があるから、両手で使うと丁度いいな」


目的地が見えて来ると、2~4人のPTがチラホラと居て、ファイター達を狩っているようだ。

俺達も中に入っていき、他のPTの邪魔にならないように距離を取りながら索敵を開始、一体のゴブリンアーチャーを発見した。

バーンズさんとアイコンタクトをし、事前に話した通りにまず、[タンク]である俺が敵を引き付け、その後ろから[アタッカー]であるバーンズさんが追従、二人で攻撃する!

と言った具合だ。

俺がアーチャーに向かって行くと、気づいたアーチャーが弓を構える!


「いくぞ!アーチャー!」


走りながらアピールをすると共に、木盾を構える、アーチャーの放った矢を木盾で受け止める!ガード!上手く行った!多少振動は受けたが、HPは減っていないようだ!そして鉄剣による一閃!

・・・さすがに一撃は無理だったか!と思った瞬間!俺の後ろを追従していたバーンズさんがメイスで攻撃!アーチャー消滅!


「フハハ、楽勝だなぁぁ!」


「はい!」


バーンズさんは名前の印象の通り、熱い男と言った感じで笑う、俺も片手でガッツポーズしながら答える、やっぱりパーティーは良い!

テンションの高いバーンズさんに釣られ俺もハイテンションで、獲物を探して走り回る、見つけ次第先ほどと同じように攻撃すればファイターさえノーダメージで倒せた!メイジだけは盾でガードしてもほんの少しだけダメージを食らうが、索敵中に回復する程度なのでノーダメージも同然だ!



しばらく狩って、俺がLV9、バーンズさんがLV7になっていた。

今、俺たちは門をくぐった、所から結構奥まで来ていて、大きな池を発見した。

そこには二種類のカエルがいて、注視すると、それぞれ青い「ポイズントード」と黄色い「パライズトード」だ。


「あれはやめておいた方が良さそうだな、見て見ろよジン」


バーンズさんが顎を向けた先には、4人PTが黄色いカエルと戦っていて、様子を見ると、一人は、膝をついて動かず、前衛の人が必死に黄色いカエルと攻防を繰り広げている、回復役と思われる人が膝をついている人に魔法をかけ、後衛の魔法使い風の人が火の玉を黄色いカエルに当てたが、倒せず・・・あ!まずい!青いカエルも寄って来た!そこで、黄色いカエルが黄色い球を吐き出し、それが前衛の人にヒット!


「ぐあ!しまった、麻痺った!フォロー頼む!」


「青いのも来たぞ!こっちは無理だ!」


「くそ、こっちはHPは回復したが麻痺がまだ解けねぇ!」


「あわわわ、ど、ど、どうすんのよこれー!」


4人PTでも大変そうだ、黄色いカエルは麻痺を使ってくるのか、というと青は名前の通り、毒か。


「アレ、危ないんじゃないですか?助けに行きます?」


俺がそういうと、バーンズさんは


「いや、ゲームなんだし、ああいう事もあるだろう、あそこから建て直して倒せば達成感があるだろうし、負けたら負けたで本当に死ぬわけじゃないんだ、邪魔しちゃ悪い、だが、私達にはまだキツそうだってのは分かっただろう?」


「なるほど、そうですね・・・では戻りましょうか」


俺たちに池はまだ早いと判断し、踵を返す、戦っていたPTの健闘を心の中で祈った。


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