第12話 剣と鎧
ログアウトした俺は、スーパーへ夕飯の材料を買いに行き、帰宅して、諸事を済ませてから、キッチンに向かった。
本日の夕飯は、アスパラの肉巻き、キャベツのサラダ、コンソメスープにご飯だ。
ちなみにねーさんは今日も帰ってこない、ゲームからログアウトし、スマホを確認してみれば、不在着信履歴が100件を超え、一言程度のメールも大量に届いていた。
溜息をしつつ確認し、要約すると
二人分の食事を準備し終えれば、時間は18時過ぎ、やはり時間が立つのが早く感じるなぁ。
いつもはこれくらいの時間になれば、妹は自分で降りてくるのだが、今日は来ない。
これは夢中になってるなぁ、気持ちはわかるけどね、と思いつつ呼びに行く。
妹の部屋のドアを軽くノックして、呼びかけるが返事は無い。
部屋に入るとふかふかのベッドの上でVRを装着した妹が寝ている。
前に体を冷やして風邪を引いた事があり、注意したが、ちゃんと約束を守り、布団に入っているようだ。
机の上を見れば昼食もちゃんと食べたようで、お皿の上に空の包みが置いてある。
妹の隣に行き、再び声を掛ける。
「
しばらくして妹がログアウトしたのか、機械を外すと、こちらを向き
前かがみになっていた俺のに、抱き着いてきた。
「おにいちゃん、ただいまー」
「おかえり、さぁ、ゴハンだよ、下に降りよう」
「だっこしてー」
「んー、今日はあまえんぼさんだなぁ」
そのまま
テーブルの上にはすでに食事の準備を済ませてある。
ねーさんが連休明けまで戻らない事を告げると、「ふーん」と興味無さそうに答える。
手を合わせ、食事を始める。
食事の合間に
「それでね、できないかなぁーって試したら上手く行って、新しい魔法を覚えたんだよ!それを使っていっぱいモンスターを狩った!」
「へぇ!すごいなぁ、妖精は最初から魔法が使えるんだね?しかもイメージして魔法を覚える事ができるなんて知らなかった!さすが
「えへへー、
「俺は魔法はまだ使えないかなぁ、クリティカルアップってスキルは覚えたけど!ああ、でもねゲームの上手い頼もしい人に出会えてさ!PT組んで、フレンドになったんだ!」
そう答えた瞬間、
「・・・
「・・・・なんでもない、良かったね、どんな人?」
「え、うん、そうだなぁ、さっき言ったようにゲームが上手くて、色々教えてくれて、頼もしい感じがして、一緒に居て楽しい人かなぁ、種族はゴブリンで、最初はグギャ!しか言えなかったんだけど、今は話せるようになってさ!」
「ゴブリン・・・?おにいちゃん、その人ぜったい変な人だから気を付けた方が良いよ」
「ええ!?そうかなぁ、確かにゴブリンになりきってプレイしてて、話し方とか独特だけど、良い人なのは間違いないよ!」
「ふーん・・・まぁ、おにいちゃんがいいなら、いいけど、ゴブリンなら、まぁ・・・」
「どうしたんだ?
「おにいちゃんの最初のフレンドは
むー、おにいちゃんID教えて!フレンド送るから!本当はすぐにでもおにいちゃんと合流したいけど、まだ無理そうだから・・・先にフレンドになってお話できるようにする!!!」
なんでもVRでは一人一人数字のIDが割り振られていて、それを入力すればVR本体でフレンド登録され、GMO内で誘いを送る事ができるようになるらしい。
個人登録後に発番されるため、
フレンドになれば通話機能が使えるので、
また、リアルの友達を登録すれば、GMO内で合流しやすくもなるだろう。
連休明けたら友人らとID交換するか、今メールしても良いが、直接会って驚かせたいしな。
食事を終え、
を起動しIDをメモすると受け取った
風呂で汗を流したら、明日も休みだし、少しだけGMOをやろうかな・・・
先に
身近に大人になってもそんな事をする人が居るから、聞かないのだろうか?
・・・やはり、
女の子が望ましいな、できれば同い年の・・・
とはいえ、俺の知り合いには心当たりはない、クラスメイトに頼むわけにもいかないし・・・
やはり、VR内でフレンドを作るというのが手段として良さそうだ。
それに、VRゲームって・・・すっごい楽しいしな!妹がハマる気持ちも今ならわかる・・・。
と、
現在時刻は20時少し前、風呂を早めに済ませて、すぐログインするとしても・・・、21時・・いや、22時ぐらいまでプレイしようかな・・・。
VRを起動すると妹から勧誘が来ていたので承諾し、GMOにログイン。
カッセイラの町中から始まるとこちらにもフレンド勧誘が来ていたのでもちろん承諾
ああ、妹のキャラクター名は[ナル]なのか、実名をカタカナ表記にしただけじゃないか、いくら珍しい呼び方だからって大丈夫なのか?いや、珍しい読み方だからこそ不特定多数の知らない人が身近にいる世界で実名そのままなんて、万が一トラブルに巻き込まれるって事もあり得る、俺は心配だよ妹よ・・・
とはいえ、世界は広い、言ったら俺だって読み方は違えど逆に分かりやすいような名前なんだし、うん、大丈夫かなー、でもやっぱりちょっと心配だ。
すると妹、[ナル]から通話が来た。
「おにいちゃんやほやほ、ザザザっちは今ザザザしながらザザザ」
「ナルちゃん、なんだか雑音がすごいよ」
「うー、そっか、今魔法で狩りしながら話してたんだけど、そうすると雑音が入るみたい、今はちゃんと聞こえる?」
「うん、聞こえるよ」
特に何かあった訳ではなく、ちゃんと連絡できるかの確認だったみたいだ、狩り中は雑音が入り聞き取り難くなるようで、とりあえずは通話を終える事にする。
「じゃ、何かあったらいつでも連絡してねー、ばいばい」
「ありがとう、ああ、あまり夜更かしはしないようにね」
「・・・・はーい、気を付ける~」
通話終了。
・・・ナルちゃん、夜更かししないよな?なんかちょっと返事が怪しかったぞ・・・
いや、可愛い妹を疑うのは良くないな、信じよう。
さて、と、まずは鉄剣でも買おうかな、と町の中を移動する。
お、少ないがカッセイラの町中にもプレイヤーが居るな。
恐らくカッセイラの町一番乗りは俺とミコブだったが、だからと言って特に賞品があるわけでもなく、ログアウト中に少ないとはいえ、他のプレイヤーもたどり着いたようだ。
そういえば、ミコブは深夜にログインすると言っていたが、うん、今は居ないようだ
。
歩いていると、すぐに冒険者ギルド前の武器屋に到着し、入店。
店内にプレイヤーは居ない。
武器に近づけばリストが出てくるが、買うものは決まっているので
店主の人に話しかけて、買ってみる事にする。
「先ほどはどうも、鉄剣を購入したいんですが、良いですか?」
「おー、兄さんか、鉄剣だな、ちょっとまってろ」
すると店主の人は店の奥に入っていき、鉄剣を持って戻って来た。
「それにしても最近の冒険者ってのは無口で不愛想な奴らが多いんだな。
兄さんのあとに何人か来たんだが、商品見てすぐ帰っちまうか、取引だけして帰る奴らばっかりだったよ」
「そうなんですか?ちなみに商品の所から買うと、どうなるんですか?」
「ん?ああ、兄さんは知らなかったからこっちに来たのか?近くに行くとリストが出るだろ?そこで買うもん選べば金が消費されて、あんたらの荷物に直接モノが入るんだよ、国が各店に魔道具を配っていてな、便利ではあるんだが、商人としてはなんとなく寂しい所もあるなぁ」
なるほど、そういう事だったのか、ここの店主さんは感じの良い人で話好きみたいだ。
代金を払い、鉄剣を受け取る。
「兄さんは見た所[戦士]かい?盾や剣も大事だが、死にたくなけりゃ防具も買っておきな、防具屋はこの店のすぐ左隣りだぜ」
「そうですね、お金があまりないので買えるか分かりませんが、覗いてみます!」
「おう、見るだけ見て、金稼いで来たら買ってやりゃいい、ああ、今度[戦士]向けの良い装備仕入れておくからよ、よかったら今度また寄ってくれ、もちろん金も忘れずにな!がはは」
店主に礼を良い、隣の防具屋へ行く、看板が出ていたので実は知っていたが、親切で教えてくれた手前、知ってるなんて言うのも野暮であろう。
店内に入り、店主のおばちゃんに挨拶して商品のリストを覗く。
現在の装備は初期装備の布服、布ズボン、靴
その三つがそれぞれ、50G、ワンランク上の皮鎧上・下・皮のブーツが
200G、そこに皮の手袋、皮の帽子が加わり、こちらも200G
皮の上のランクが鉄シリーズ、鎧の他に胸当てや、軽装のフードやベルトなんかも売っている、それらがすべて500Gだ。
鉄鎧がカッコいい、鉄シリーズをそろえたいが金が全然足りない。
手持ちは290Gだ、皮の鎧だけ買うか。
今回はリストから買ってみて、店を出るときにおばちゃんに挨拶した。
鉄剣と皮鎧を装備したところ、皮鎧は布服の上から装備できた。
てことは、皮鎧下もズボンの上から装備できそうだ、ブーツは無理っぽいが。
お金を貯めて鉄シリーズに行くか、まず皮シリーズを揃えるか悩む俺だった。
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