第6話 初フレンド
ゴブリン二体を倒した俺達は、HP回復のため、その場で休憩することにした。
戦闘状態で無ければ徐々にHPとMPが回復していき、特に座ったり寝ころんだりといった、休んでいるという行動をすれば、回復力も高まるらしい。
薬草等のHP回復アイテムがあれば良かったのだが、二人とも持っていなかった。
街で売っているらしいが、GMOではモンスターが直接お金をドロップしないため、所持金が心もとない、最初から持っていた100Gだけだ。
ちなみにGというのはゴールドではなく、[グロウ]とされている。
モンスターを倒すことで入手できるアイテムを売ると、お金になる、プヨンゼリー、モスピーからはモスピーの皮、それと今入手したゴブリンの耳、これを町で売れば良いみたいだ。
今はHPの総量が低いため、休憩することでも全快まで早いが、レベルがあがっていけば時間もかかるだろうし、回復アイテムは必要であろう。
大きめの木を背に二人並んで座り込み、周囲を警戒しつつも、会話をした。
ミコブさんはレンケイ イイネと褒めてくれ、ありがとうと返し、マダ イケル?との問いで、時間を確認すると丁度11時30分であった。
12時には昼食にしようと思っていたので、一度ログアウトしたいが、森の中では危険かな、ああ、今のGMO内は時間経過がリアルの半分に設定されているため、あと1時間程はプレイできるのか、という事はすでに体感3時間冒険していた事になる。
楽しい時間はあっという間だなぁ。
1時間あれば、街に帰れるだろう、帰り道に何もなければだが・・・。
「昼食のため、一度街に戻って落ちようと思うんです」
「グギャ・・・」 ワ カ ッ タ オ ク ル ヨ
「ありがとうございます!」
ゴ ゴ ハ ヒ マ ?
「昼食後で・・・そうだなぁ16時までなら」
フ レ ン ド イ イ カ ?
「はい!よろこんで!こちらこそお願いします!」
フレンドとは仲良くなった友達を登録するシステムで、メッセージを送る事ができ、ログイン状態も確認できるようになる機能だ、設定でメッセージ拒否したり、隠す事もできるが、それを使うならフレンド登録する意味があるのだろうか?と疑問にも思った。
ミコブさんがまた、サソッテと書いたのでヘルプで調べ、登録した。
初PTで初フレンドゲットだ!嬉しいな~!
その後昼食後にまたPTを組み冒険する約束をし、来た道を戻る。
通った道はマップに表示されるので、表示されている場所を戻れば草原に戻れるはずだ。
途中、モスピーを二体を余裕で倒し、ゴブリンが現れる事もなく、草原に到着した。
ミコブさんは森に残るそうなので、そこで別れる。
「ありがとうございます!では、またあとで!」
「グギャ!」
俺が手を振ると、ミコブさんは棍棒を持ち上げて振り返してくれた。
森の近くにも人が来ていて、遠くでは続々と人が森へ入っていく。
俺が森に入った場所はプヨンを狩るため移動していたので
人は居なかったのだが、マップを確認すると、街からまっすぐ歩いて、森に
到達する地点が、ほかのプレイヤーで賑わっている。
森から離れると、草原のプヨンもまだまだ盛況で、混雑している。
街まで走っていき、門をくぐった後、兵士さんに会釈をし、
道の脇でログアウトした。
機械を外し、ふーっと一息つくと、階段を降り、キッチンに向かう。
昼飯は
冷えた麦茶を飲み、鮭・昆布・
塩気が効いた白米と、ほんのりと磯の匂いが香る海苔の組み合わせがシンプルに旨い。手軽に作った物だが、たまには手作りおにぎりも良いな。
最近はコンビニのおにぎりが、とてもおいしいが、手作りは手作りで良さがある。
っと、ごちそうさまでした。
ササッと片付け、トイレも済ませ、自室に戻ればもう12時50分。
リアルの時の流れがすごく早く感じるぞ・・・
機械を装着し寝転がって再びログインした・・・。
先ほどログアウトした門の近くの道の脇から再開した俺は、周囲が薄暗くなっている事に気が付いた。
どうやら夜が近いらしい、GMOの世界では基本的には昼が長く夜は短いらしい、夜は暗くて視界が悪い上、強いモンスターが出るとかなんとか・・・。
周りを見渡していると、門の兵士さんと目が合ったので軽くお辞儀する。
そうだ、せっかくだから話しかけてみよう。
「こんにちは!」
「・・・・なんだ?」
「回復アイテムを売っているお店の場所を教えていただけませんか?」
「・・・・この道をまっすぐ行って、最初の路地を曲がれば看板が見えるはずだ。」
「ありがとうございます!」
「・・・・ああ」
この兵士さんはぶっきらぼうな様子であったが、ちゃんと場所を教えてくれたので良い人だな!俺はお辞儀をし、教えられた通りの道を進んでいるとピコンと機械音が鳴る、意識すればメールマークが出てきて、操作して開く。
ミコブさんからだ!
オカエリ!PT組めるかい?
おお!メール機能ならゴブリンのミコブさんでも会話ができるのか!って、筆談ができるのだから当然か!
俺は「はい!大丈夫です!」と返事して、PT勧誘を送るとすぐにミコブさんがPTに参加した。
おお!ミコブさんレベル上がってる!
俺はまだLV4だが、ミコブさんはLV5になっていた。
別れた時は同じレベルだったので、俺が一度ログアウトした後に上げたのであろうか。
メールでやり取りし、回復アイテムを買ってから行くと伝え、夜の森は危険なので、森の近くの草原で合流することになった。
プレイヤーとはいえ、ミコブさんはゴブリンなので、他のプレイヤーの目につきたくないらしく、街からまっすぐ行って、森沿いに少しいったところを指定された。
PTを組んでいれば、近くに居るとマップに表示されるので、暗くても問題なく合流できるだろう。
やり取りをしている間に路地を曲がると、瓶のマークの看板を出した露店が見えた。
丁度ほかのプレイヤーと思われる人が店主とやり取りしている所で、後ろに並ぶ、
店の前にはメニューの看板もあり、HP回復ポーション、MP回復ポーション、解毒剤の3種類が売られているようだった。
HPポーションは30G、MPは100G、解毒剤は10Gだった。
今はまだ魔法は使えないので、回復ポーションを3つ購入し、備えとして解毒剤を1個買うことにした。
店主の人は無口な人で、伝えると無言で瓶を差し出す、お金を払い受け取ると荷物にしっかりと表示された、見れば数値などは書いておらず、おおざっぱにHPを少し回復するとだけ書かれていた、解毒剤は毒状態を回復する だ。
店主に素材を買い取ってもらえるか聞いた所、無言で首を振られてしまい、どうも会話をしたくない様子に見えたので、その場を後にする。
VRゲームの人って、ああいう表情とか対応とかもやけにリアルで、個性があって、本当にこの世界で生きてるみたいだなぁ、と考えながら、ミコブさんと合流するため街を出る、途中先ほどの兵士さんに無事買えたとお礼を言うと、「そうか」とだけ返される、だが街から出るときに「夜は危険だ、無理するなよ」と後ろから声を掛けられ、振り向くと兵士さんはこちらを見ていなかったが、「はい!」と返事を返しお辞儀し、なんだか嬉しくなって、つい、草原を走っていく。
兵士さんと少し仲良くなれた気がする。
移動している間に日が暮れて、森につく頃にはすっかり夜になっていた。
森に入らず先ほどの場所まで迂回するよう歩き、マップに表示されたミコブさんの近くまで来ると、木影からミコブさんが顔を出した、辺りにはほかのプレイヤーは居ない。
「あ、ミコブさん!先ほどぶりです!」
「ヤァ!ジンさん、どうもどうモ!」
「あれ!?ミコブさん、話せるようになったんですか!?」
「良い反応するねェ!レベルアップしたら人語のパッシブを習得してたんサ!」
なんとミコブさんは話せるようになっていた!レベルアップ後に、ふと独り言を呟いたときに、「グギャ!」以外の言葉を発せて、試したところ話せるようになっており、ステータスを確認すると人語のパッシブを手に入れてたそうだ、パッシブとは常に発動する能力みたいなものだという。
「まァ、さっきメールなら普通に打てるって事に気づいたんだけどナ、話せるようになったんだし、わざわざメールでやり取りする事もないガ」
GMOにはフレンド登録すると、メールでメッセージを送る以外にも、ログイン状態の相手と通話できる、ただ通話中は、集中力が持っていかれるので、戦闘中や何かしている時などは通話できない事もあるだろう、当然ログアウト中には通話できないので、相手がログアウト中に伝えたいことがあれば、メールでメッセージを残す、といった具合で使い分けするみたいだ。
当然通話も設定で拒否できるとかなんとか・・・・
俺達は雑談しつつも、次の行動について、話し合った。
夜の森は昼より強いモンスターが出るらしく、また暗いので危険という事だった。
とはいえ、月明かりのおかげか、ゲームだからか、分からないが、リアルの夜の森よりはある程度明るいらしい。
遠目には他のプレイヤーであろう人影の集団が、今も森の中へ入っていっている。
「暗いのに大丈夫なのかなぁ、余程腕の立つ人たちなんですかね」
「あア、オデ達よりは強い奴らだろうガ、さっき近くを通った奴らが話してたが、この森でダンジョンが見つかったんだとヨ」
「へぇ!ダンジョンって、よくゲームである奴ですよね!」
「ン?ああ、そうだろうナ、このゲームのは分からんガ」
ダンジョン・・・洞窟や遺跡、塔とかの外見で、中に入ると迷路みたいに入り組んでいる、大抵の場合敵が強かったり、ボスモンスターが居たりするが、お宝がある。
ゲームの冒険では欠かせない存在だ。
GMOのダンジョンの情報は知らないので、詳しいことはわからないが・・・
妹なら知ってるかな?夕食の時聞いてみるか。
「とりあえずダ、この森をこのまま迂回して、先に進んで見ないカ?」
「はい!わかりました!」
移動中の会話で、なんでも事前情報ではナナバの街の西を進むとさらに大きな街があるらしいというのを、ミコブさんから聞いた。
俺がここは東の草原だと伝えると、ミコブさんの予想では西はもっと混雑していて、こっちに来てるのは情報を知らない人か、大きな街に興味がなく、周りを探索する事にしたもの、西が混みすぎて溢れた物だろうと、言っていた。
だが、東の森にダンジョンが発見され、広まりつつあるので狩場としてはここも美味しくなくなるらしい。
ちなみにゴブリンであるミコブさんはこの森のゴブリンの集落から開始したそうだが、ソロだと敵が強く、苦労していた時に俺に会ったらしい。
ゴブリンという種族は制限が多いらしく、集落のゴブリンとは意思疎通できたらしいが、人族である俺とは会話もおろか、PTやフレンドを送る事もできなかったとか。
俺はゴブリンがプレイヤーの種族として選べる事を偶然知っていたから良かったが、他の、特にゲーム好きなプレイヤーであれば、ゴブリン=敵・害悪 とみなされ
倒されていたかもしれないという、恐ろしい話だ。
今なら人語を喋れるので、問題無いかもしれないが、目立つのは避けたいという事でとりあえず街には行かず、森も危険なため消去法で、森を迂回した先を目指すという事になった、そこに何があるかは分からないが、それが冒険という感じがして、とてもワクワクする、楽しい!移動中に近くにプヨンがチラホラ沸いていたが、俺達二人はそれを無視して、未知のフィールドへ進んでいくのであった・・・・。
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