第4話 ゴブリン

その後歩きながらプヨンを倒し続け、6匹目のプヨンを倒したところで一瞬体が光った!頭にエアの声が響いた。


レベルアップおめでとうございます!あなたのこれまでの行動に応じて、能力が加算されます!いろいろなスタイルや、行動を試してみましょう!


GMOではレベルアップ時のステータス割り振り等がなく、今までの行動に応じてステータスが加算されていくようだ、しかもステータス画面に数値の表示が無く、レベル以外の数値を確かめる事が出来ない。

事前情報では、ゲーム内で鍛えれば筋力が、走れば持久力や素早さが上がる等と説明されていたらしいが、詳しい事は分からない、今度なるに聞いてみようかな


7匹目のプヨンを見つけ、危なげなく攻撃加えていくと、三撃目で倒すことができた、おお、攻撃力が上がっている!!

強くなった実感を得た俺は、意気揚々と次の獲物を探す・・・と、気が付けば先ほどから見えていた森の近くまで来ていたようだった。

夢中でプヨンを探していたから気が付かなかったが、近くに人が居ない・・と、今しがた遠目に何人かが一緒に森の中へ入っていったのが見えた。

この辺りはプヨンが少ないものの、見渡せばチラホラ動いていて、倒されていないようであった、一体一体の間隔は離れているが、混雑している場所で探すよりは確実に倒す事が出来そうだ。

俺はプヨンへ駆け出し、棍棒を振り下ろす、もはや慣れたもので1・2っと連続攻撃する、プヨンも負けじと体当たりしてくるが、少し身を反らせば回避できるし、そのまま攻撃し三撃目で消滅だ!

そして倒したら次の再び駆け出す、それを繰り返し次のレベルアップを目指す!



それは14匹目の事だった。

森のすぐそばに沸いたプヨンを仕留めるべく駆け出す俺、あと少しと武器を振り上げようとした瞬間、森の中から何かが出てきて、プヨンに攻撃したようだった。


「おわぁっ・・・とっ!」


「グギャ!?」


緑色の肌の小さな鬼のような生物、どこかで見たような・・・ああ!ゴブリンだ!

キャラクター作成の際、表示された中に有ったやつで・・・という事はプレイヤーなのかな?見た目はモンスターと言われても違和感が無いけど・・・

ゴブリンは驚いたようにこちらを見ていて、俺も突然の事固まってしまい見つめあう。

その時プヨンがゴブリンに体当たりをした事で、ゴブリンは一度視線を外しプヨンに攻撃をしていく、五発、初撃を入れて六発の攻撃を危なげなく加えてプヨンを倒した、この様子なら俺に気を取られなければノーダメージで倒せていただろう。

観察していた俺とプヨンを倒し終わったゴブリン、再び目が合った。

なんだか気まずい感じがし、思わずかける。


「こ、こんにちは!・・・」


「グギャ・・・・」


グギャ?挨拶を返してくれたのかな?と考えていると、ゴブリンは何か思案し、棍棒の柄の方を地面に向けた。

これは・・・文字を書いているのか?

少し待つと再びこちらへ顔を向けたので、地面に書かれたものを見た。


コ ン ニ チ ハ P T ク ミ マ セ ン カ


おお!やはりプレイヤーだったようで、しかもPTに誘われた!

先ほどの様子から、ゴブリンという種族は会話ができないのかもしれない。

体格以外にも種族によってそんな事になるとは・・・やはり人族で正解だったか!


「はい!是非!俺、ジンって言います!よろしくお願います!」


「グギャ!」


そう鳴いて顔を上げるゴブリンさんだが、そのまま見つめあってしまう。

・・・・するとゴブリンさんがまた棍棒で文字を書きだす。


サ ソ ッ テ


「あっ!えと、ちょっと待ってください、俺初心者で・・・えーと・・・」


エアを頼り、教えてもらった通りにメニューから、パーティを押してっと

付近のプレイヤーを選ぶと一つの名前が表示される、えーとコレかな?ぽちっと


「ミコブさん?ですよね?今お誘い送りました!」


「グギャ!」


ゴブリンの[ミコブ]さんは親指を立て、頷く。


ミコブさんがパーティーに加わると、頭上にゲージが表示された、HPだろうか?

種族の影響で、やはり会話を制限されているようで、俺が話しかけるとミコブさんはボディーランゲージと、筆談で返事をしてくれた。

さて、どうしようか というところでミコブさんが俺の力が見たいと言うので、プヨンを一体倒す、ミコブさんは頷くと森に行こうというので、二人で森に入った。


前を歩くミコブさんについていく俺、小さい背中がなんとも頼もしく思える。

ゴブリンという難しそうな種族を選ぶだけあって、ミコブさんはゲームが上手そうというか、VRMMOに慣れていそうというか、そんな感じがした。

少しづつ森の中を進んでいると、前のミコブさんが立ち止まりこちらを見て無言で

指を指した。


その先には、一匹のモンスターと思われる生物がいた。

注視すると、名前が表示される、モスピー 緑色の芋虫だが、モンスターという事もあり、小型犬くらいの大きさがある。

俺は頷くと、モスピ―に向かって行き、戦闘を開始する!

近くまで行くと気が付かれたが、こちらが先手を取って、棍棒を振り下ろす!

まず一発!瞬間モスピ―が飛び掛かり、体当たりをしてくる!くそ!避けられないか!

プヨンより大きな振動を受け体勢を崩した、見かけによらず強いぞこいつ!

だがモスピ―が着地した瞬間その後ろからミコブさんが棍棒を振り下ろす!

ヒット!モスピ―は軽く吹き飛び、今度はミコブさんに向かって行く!

あれ、これスキだらけじゃないか?

体勢を整えていた俺はすぐさまその背後から攻撃する!

ミコブさんとの挟み撃ちのような形になったモスピ―はこちらに振り返るが、そのスキにミコブさんが攻撃を加え、気を取られたところでまた俺が攻撃をし・・・

結局、最初の1発以外は攻撃もできず、挟み撃ちでぼこぼこにされ、モスピ―は消滅した、これがパーティーの力か!

ミコブさんがグッと親指を立てたので、俺も親指を立て、返す。


またミコブさんが前を行き、獲物を探す。

少しして、またモスピ―1体を見つけた、先ほどより少し大きい気がするが、モンスターにも個体差があるのだろうか?プヨンはあまり変わらなかった気がするが。

とはいえ、先ほどと同じ要領で戦闘したところ、問題なく勝利できた。

そこで俺の体とミコブさんの体が同時に光る!二人ともレベルアップしたようだ!

現在の俺のレベルは3、ミコブさんも3という事だった。

俺と同じレベルだが、戦闘を見ているとやはりミコブさんの方が手慣れた動きをしているように思える。


先ほどと同じようにモスピ―を探し、戦ったところ、慣れかレベルアップのおかげかモスピ―の飛び掛かり体当たり攻撃を避ける事ができて、待ち構えていたミコブさんの所へモスピ―が行かず、続けて俺が攻撃し、その間に移動したミコブさんが背後から攻撃し・・・先ほどより少ない手数で倒すことができた。

次のモスピ―は俺が避ける前提でミコブさんが動いていて、同じ手数でも少し早く倒すことができた。

モスピ―狩りを続け、二人のレベルが4になったところで、不意に近くの木陰から何かが飛び出してきて、俺に攻撃してきた!強い振動を受け吹き飛び、体勢を崩す!


「うわ!・・・ってえ!?」


「グギャギャ!」


俺を襲ってきたのは緑の小鬼・・・ミコブさん!?

いや、違う、似ているが、頭上にゲージがない!

というか、その横からミコブさんが小鬼[ゴブリン]の頭目掛けて棍棒を振り下ろした!ヒット!しかし、ゴブリンが反撃をし、ミコブさんも食らってしまい、少し吹き飛ぶ、すると反撃したゴブリンの後ろからもう一体同じ姿をしたゴブリンが現れる!

二対二!初めて戦う相手なのに、これはまずいかもしれない!


「うおおおお!」


「グギャギャ!」


俺は最初の小鬼に突っ込み棍棒を振り下ろす!ヒット!しかし、小鬼の反撃も食らう!ここでミコブさんが後ろから攻撃してくれれば、モスピ―と同じように倒せたかもしれないが、視界の隅にはミコブさんの前にもう一体のゴブリンが立ちふさがっているように見えた。


そこでふと、HPが持つか?という事が頭によぎる・・・

意識すれば自分の体力ゲージが見えたが、半分ぐらいまで減っている、細かい数値は分からない!だがゴブリンの攻撃を受けた時から、先ほどに比べて体が重くなってきている気がする、痛みはないのだが、攻撃された場所に少し不快感を感じる。

HPが減ってくるとこうなるのか・・・

HPが0になると行動不能になり、街に戻されるらしい、パーティーを組んでいれば

しばらくの間その場所で倒れ、動けない状態になり、蘇生等されないとそのまま町に戻されるとか・・・

どちらもサービス開始までの間パパっと流し見したヘルプの情報で、実際経験した事がないが、ゲームとはいえ、こんなところで死んで街に戻されるわけにはいかない!


向かい合っていたゴブリンが、こちらに突っ込んでくる!

俺は構えながら、相手の様子を良く見る!・・・・今だ!

攻撃に合わせて体を反らし避ける!そしてカウンター!

ゴブリンの後頭部に棍棒の一撃がヒットし、軽く吹き飛ぶ


「うおおおお!まだまだぁ!」


間髪入れず、近づき、追撃を食らわそうと棍棒を振りかぶる!

体勢を崩していたゴブリンの頭に一撃!確かな手ごたえを感じた!クリティカルヒット!会心の一撃というヤツだ!

ゴブリンはそのまま力を失ったように倒れ、消滅した!

いや、まだだ、まだ戦闘は終わっていない!


近くを見れば、ミコブさんと、ゴブリンが向かいあっていて、ミコブさんのHPゲージが3分の1程度になるぐらい削れていた!


「ミコブさん!今行きます!」


「グギャ!」


「グギャギャギャ!」


ミコブさんが向かい合ったまま返事をすると、敵のゴブリンがミコブさんに向かってグギャグギャ鳴きながら突っ込んできた!

ゴブリンの棍棒攻撃をバックステップで避けるミコブさんだが、攻撃する余裕は無さそうだ!無理に攻撃すれば反撃をもらうだろうし、HPを気にしているのかもしれない!だが、今の状況は2対1だ!ミコブさんが回避に専念している間に俺が到着!

横から攻撃を加える!ヒット!だが、ゴブリンの反応もモスピ―より良く、すぐにこちらを向いて攻撃をしようとする!その瞬間ミコブさんが前に飛び出し攻撃!体勢が崩れたゴブリンの攻撃を俺が回避し、攻撃!

さらにミコブさんがそのまま連続攻撃を決めるとゴブリンは力を失い消滅した!

その様子を見て、緊張の糸が切れたかのように、大きく息を吐きだすと、その場にへたり込む、ミコブさんも同様に息を整えながら座り込み、無言で親指を立てる。

俺も親指を立てながら、こういう時はなんて言えばいいのかわからなかったが、頭に最初に浮かんだ言葉を口にした。


「ふぅ・・・ナイスファイト!」


「・・グギャ!」


ゴブリン語は分からないが、「お前もな!」と言われた気がした。





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