第3話 冒険の始まり
窓の外から光が差し込み、チュンチュンという鳥の鳴き声が響いている。
窓を開けると新鮮な空気が部屋に流れ込む。
気持ちの良い朝だ
世間では今日から
最先端技術に加え、超高性能AIが作ったという話題のVRMMO
最初の情報が出た時から世間で大きく取り上げられ、注目されてきた。
サービス開始前だというのにすでに社会現象とまで言われている。
前に妹が話していたが、テストプレイヤー等も募集されていなかったようだ。
つまり、誰もやった事が無いゲームだというのに、こんなにも話題になっている。
しかもそれを作ったのは人ではなく、AIだというのだ。
なんでも人がゲームを作るなら、1人1日8時間ほどだが、AIなら24時間作り
続けられるというので、仮想現実という世界を作るならAIに勝てないという事だ。
たとえ人が24時間ぶっ続けで作り続けたとしても、疲労で体が壊れてしまうだろうが、AIならそれもない。
しかもVR技術の発達により、仮想空間に関する技術も飛躍的向上しており、その超高性能AIが無数に存在しているというのだ、そしてAIがAIを作りそのすべてが一つのゲームに注力する、とてつもない話だ。
一応、[運営会社]は存在しているみたいだが、有名な会社ではないし、影が薄い。
詳しい事は分からない俺でも、それだけ聞いただけで、すごいゲームだと思うし、話題になるのも頷ける。
GMOのおかげでVR本体の普及率もどんどん上がっているそうだ。
俺が通っている高校でも、最近の話題はGMOで持ち切りであった。
ただ本体が高額という事もあり、俺も含め何人かは興味はあれどプレイしないという人もおり、少し肩身が狭い感じもしていた。
今思えば、友人達は最初は一緒にやろうと誘ってきたが、俺がプレイできない状態だと知ると、違う話題を振ってくれたり、気を使ってくれていたと感じる。
だが、それももう終わりだ!この連休中に友人達には内緒でプレイし、連休明けに実は~と打ち明け、なんならみんなで冒険するのだ。
そう考え気づく、ああ、妹が―とかじゃなくて、俺自身も羨ましかったし、プレイしたかったんだなぁと・・・
とはいえだ、俺の欲望は二の次で、目標は妹の現状を良い方向に持っていく、だ。
特に人見知りで、他のゲームでも仲間を作らず一人で遊んでいる妹に、友達や仲間の良さを感じたり、他人とのコミュニケーション力を上げてあげたい。
だが、いきなりは難しいようにも思う。
妹はサービス開始直後のスタートダッシュで忙しいみたいだし、その間、俺は俺で動き、楽しみ方を探したり、何なら気の合いそうな子を紹介したりという事もできるはずだ。
ゲームや強さという面では追いつけないかもしれないが、それだけがVRMMOのすべてじゃないはずだ。
そのような事を考えている間に、いつものようにキッチンで朝食を作り終わると、妹がトテトテと下りてきた。
「おはよ~、ふぁー」
「おはよう、
「うんー・・・ふぁ」
眠そうな妹が洗面所で顔を洗い、席に着くのを待って朝食を開始する。
二人で手を合わせて
「「いただきます」」
と、朝食に取り掛かる、本日の朝食はご飯、わかめのお味噌汁、刻んだ野菜入りのオムレツに、市販のヨーグルトだ。
食事をしながら
「おにいちゃん、今日のお昼ゴハン、部屋で食べれるものにしてほしい」
と
なにせ、リアルで過ごす時間が増えれば、ゲーム内では2倍3倍の時間がその分経過するのだ、夜更かしを禁止していることも加味すれば、それくらいなら許してあげよう。
「うーん、分かった、だけどそういうのは連休中だけだぞ?」
「わかってるよ~ありがと!おにいちゃんこそ、夢中になって夜ごはん忘れないようにね!」
「ははは、そうだね、実は昨日から楽しみでさ、気を付けるよ」
食事を終えると、
楽しみで機嫌いいのかなぁ~と、温かい気持ちになる。
この家には約1名絶対にお手伝いなんてしないというアレがいるので、それに比べれば
さて、そろそろサービス開始の時間が近づいてきた。
その際、おにぎりと水筒を包んで渡したので、夕飯まで出てこないと思われる。
俺も、高校生なら連休中は友人と遊ぶとかあったかもしれないが、俺の友人は全員GMOをプレイすると言っていたので、特に予定はない。
適度に休憩しつつ、夕方の買い出しまでプレイできる。
俺も待機するかーと、VRの機械を装着し、ベッドに寝転がった
5・4・3・2・1・0!
魔法陣の前で待機し、数字が0になると同時に消え、黒かった魔法陣が光を放つ。
あの魔法陣の中に入れば良いのかな?
辺りを見回しても一面草原が広がるだけなので、恐らくそうであろう。
俺はゆっくりと光の中に入ると、瞬間、浮遊感を感じ、辺りの様子が一変した。
なんというか、光の流れの中に浮いていて、イメージとしてはワープ中のようだ。
「まもなく、グローリー・マイウェイ・オンラインの世界に到着します!
申し遅れました、私はあなたの冒険をサポートするAIシステム、エアと申します!
以後、サポートが必要になりましたら、お呼びください!」
やはりワープ中だったようだ。
目の前にエアの説明ウィンドウが出る。
サポートAI エア 呼びかけるか意識する事により冒険のヒントや行先のナビをしてくれるようだ。
「人族の街・ナナバに到着致します、足元にご注意くださいませ!」
まるで電車のアナウンスのような事をエアが言い、すぐに周りが真っ白な光に包まれる、瞬間西洋風の建物が並ぶ街の、大きな噴水の近くに俺は立っていた、周りには似たような服を着た人々が大勢居て、人型の光が出現したかと思うと中から人が出てきて、今も増え続けている。
光から現れた瞬間、転んでしまう人も居た、足元に注意しろとはそういうことか。
きょろきょろと見回すと、周りの人々は各々あたりを見回したり、急に走り出したり、エアに話しかけたりしていた。
どうすればいいのかわからない俺もそれに習い、エアに尋ねる事にした。
「エア、まず何をしたらいいのかな?」
するとエアのアナウンスが直接頭に響くように聞こえてきた。
武器を装備し、モンスターと戦いレベルを上げましょう!
ステータス画面の装備欄から、お好きな装備を選んで装備しましょう!
町の人に話しかけ、情報を得るのも良いですね!
なるほど、と俺は言われた通り、装備欄を開く、荷物には棍棒・弓・杖が入っていた、棍棒を選び装備すると、腰に棍棒が装備される。
よしっ、これを使ってモンスターと戦えば良いんだな!
モンスターはたぶん、町の外に居るんだろう。
適当にあたりを見ながら歩きだすと、他のプレイヤーと思われる人々は町人と思われる人々に話しかけていた、さらに歩いていくと町人と思われる体格の良い強面のおじさんが一人で居たので、話しかける事にする。
「すみません、ちょっとよろしいですか?」
「おう?最近増えてきた冒険者ってやつか、何か用かい?」
「モンスターを探しているんですが、どこへ行けばいいですか?」
「あん?そんなもん・・・」
そう言っておじさんは値踏みするような視線を俺に向ける。
すると納得がいったかのように頷き、話を続ける。
「ああ、兄ちゃん駆け出しか、このまままっすぐ進むと[ナナバ東の草原]に出るから、そこで戦うといいぜ!」
「どうも、ありがとうございます!」
「おう、またな!がんばれよ!」
おじさんはニカッと笑うと手を挙げる、俺も軽くお辞儀をして手を挙げると、言われた通りに道をまっすぐ進む。
良いおじさんだったなぁ~と考えていると、大きな門が見えてくる、扉は開いていて左右に槍を持った兵士風の人が立っている。
俺はそのまま歩いて行くが、兵士の人がチラリとこちらを見たので、ゲームとはいえ思わず軽く頭を下げると、兵士の人も軽くうなずき視線を外す。
VRのゲームはリアルだなぁと感じながら門の外へ行くと、草原には戦ってる人が何人も居て、ゼリー状の丸っこい生物と戦っていた。
それを横目に歩いてモンスターを探す、が出てきた瞬間からほかの人が戦い始めてしまうため中々見つからない。
街から離れるとモンスターも多くなっているみたいだが、戦う人も多くなり、中にはレベルが上がっているのか1発で倒して、走っていく人も居た。
お、誰も戦っていないモンスター発見!って、あ!どこからか矢が飛んできて倒されてしまった・・・残念。
さらに歩いてモンスターを探していると、遠くに森が見えてきた、俺はとりあえずその森の方へ敵を探しながら歩いて行く。
少し歩くと目の前にモンスターが現れた!先ほどほかの人達が戦っていたゼリー状の丸っこいやつで、プヨンという名前らしい、プヨプヨとゆっくりこちらに向かってくる!
俺は腰に下げた棍棒を右手に持ち構える、他の人の戦う様子を見ていたので、プヨンが弱いモンスターという事は分かっている、俺はプヨンに向かっていき棍棒を振り下ろす!ヒット!だが、一撃では倒せず、プヨンが体当たりをしてきた!
少し振動を受けたが、痛くはない、二撃目!三撃目!と連続で攻撃するとプヨンが少し後ろに吹っ飛んだ、だが、まだ倒せていないようだ。
プヨンがまた体当たりしてきた、それを打ち返すように四撃目の攻撃を加えるとプヨンはその場に転がり落ち、消滅した!プヨンが消えた場所には代わりにアイテムが落ちている、拾い上げると光になり消え、荷物に追加されていた。
プヨンゼリー プヨンの体の一部
よし!初めての戦闘だったが、上出来じゃないか?上手くやれば一発も攻撃されずに倒せそうだ!
そうして初戦を快勝した俺は、自信をつけ、次の獲物を探して再び歩き出すのであった。
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