第3話

 やってはいけない。



 そして、今まで全く興味はなかったけれど、”エゴサーチ”をしてしまった。


『おい、田島~~』


『ないわ』


『絶対あいつのせーじゃん』


『5分はやめてくれよ・・・』


『ぜってー気を抜いてたような、あいつ』


 指で画面を上下にスライドすればするほど止まらない。

 非難の声。


「えっ」


 私はスマホを隣からかっさらわれた。

 隣を見ると、長谷部さんがいた。

 私と同じように画面を上下にスライドする。


「ちょっと・・・」


 私が返してもらおうとするけれど、身体を私とスマホの間に入れて手が届かない。


「なーに、険しい顔をしてみてると思ったら・・・あっ、くっそ、私をディスりやがって・・・。ねぇ、田島さん、このアカウントで反撃していい?」


「ちょっと、そんな・・・っ」


「冗談よ、じょーだん」


 ぽいっと、私のスマホを投げてくる。

 私はコメントしてないかどうか、確認するがさすがにそこまでしていなかったようだ。


「まっ、次は決めてやる」


 真っすぐした目の長谷部さん。見据えるのは、ゴールキーパーも誰も届かないゴールネット。


 そこからの予選リーグは長谷部マジックだった。何かが降りてきたのか、それともゾーンに入ったのか。

 格上相手のザクセン公国にまさかのハットトリックを決め、Aリーグ2勝1敗で2位通過を果たした。


 ただ、私はというと、気持ちは追いついてきたのだけれど、精細を欠き失点を許すようなプレーをしてしまっていた。




「昨日も今日も、そして決勝トーナメントも私が勝利に導きますよ!!」


 チームミーティングでも、自信満々で輝く彼女はスーパースターだ。

 今は国内で活躍しているけれど、今回の活躍を見た海外のクラブチームからオファーが相次いでいるらしい。


 栄光が高いところにあるとしたら、彼女が飛行機で急加速して手に入れた。

 けれど、そんな特別なアイテムは与えられていない私は、コツコツと階段を作って登って来た私。

 急激な落下はないと思っていたけれど、私は転げ落ちてしまい、何かがズレてかみ合わなくなってしまった。

 

 積み上げた階段のどこかに欠陥があるのか、見直そうとしても、ピラミッドのように大きくなってしまった階段の

どこに原因があるのだろうと、点検を行っているような感覚だ。



 

 

 

 


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