まず初めにマッチ売りの少女、アイカが出て来る。義理の父に命じられ大晦日にマッチを売らされる可哀そうな少女だ。一見童話か何かのパロディに思われるだろう。その後にエルフという単語も出て来る。なるほど、これはどうやらファンタジー世界が舞台のようだ。そして銃も出て来る。なるほど結構文明が進んでいるようだ。その後に真紅のコスチュームに身を包んだ六尺を超える長身の女、超人のロラが出て来る……六尺?超人?
そう本作は超人が跋扈するファンタジー世界で起こる大騒動を時代小説風の文体で書き綴るという異色の冒険活劇なのである!
世界が滅びかねない陰謀あり、怪しげな宗教組織あり、悪の女幹部あり、謎の殺し屋あり、大巨人対謎の生命体あり……そんな種々雑多な要素にも負けないのが正体不明の超人にして大女ロラ。記憶を失って自分のことすらよくわかっていない彼女だが自分が超人であり、めっちゃ強いことだけは自覚している。そんなロラに振り回され、大事件に巻き込まれつつもめげないアイカちゃんが可愛らしく、この主人公二人に限らず、敵役から脇役に至るまで登場するキャラが皆魅力的なのも嬉しい。設定から文体までユニークすぎる要素を散りばめながらも、物語自体は文庫一冊分ほどの分量で綺麗に完結しているのもお見事。
オンリーワンの魅力に満ちている極上のエンターテインメントだ!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)