架空千記

偶然×水平線に沈む夕日×リピート

　あれ？誰だろこの番号。

　はいはいどちらさまで……うるっさ！声でっか!!

　え？誰？Dr.No.9（ドクターナンバーナイン）？

　それってつまり……あー、まあ深く追求するのも野暮ね。

　あたし？この番号は間違いなく不死川千（しなずがわ　せん）のものだけど。

　そもそもどこで知って……

　え？

　偶然と夕日とリピートをキーワードにして思い出す場所を今すぐ教えろって言われてもさぁ!?

　でも、えーと待ってね、なんとなくなら思い出せそうな気がする。

　確かね、結構昔の……アメリカのダイナーで心当たりあるかな。

　あたしはそこでウェイトレスとしてバイトしてて、ロブスターとか巨大なフライドチキンをお客さんに運んでた。チップ沢山貰ってたなぁ。

　それでね、そこに設置してたジュークボックスが壊れた日があるの。

　お客さんが回し始めた途端、セットしてあるレコードのワンフレーズばかりをリピートするようになっちゃってさ。

　それが機械に詳しい人間もいなかったしで止めることもできないの。

　午後の間中同じメロディ聞かされて、もー頭がおかしくなりそうだった。

　そして夕方。

　偶然来た日本人男性が「直してあげようか？」って言ってくれたの。常連客の人。　買ったばかりのレコードだから助かりますぅーってオーナーが猫撫で声出してて……

　曲名？えー、覚えてないって。

　ええ～……あ、でもジャパニーズ・サンドマン……だったかな。

　サンドマンは違うかも。

　とにかくジャパニーズ繋がりで、なんか面白いなーって思ってた気がするからさ。

　その人がジュークボックス開いて、中に詰まった何かの破片を取り除いてくれたんだ。

　そしたらその人、急に「もうここに来ることはないだろう」って言って出て行っちゃって……

　その直後だった。

　ダイナーを出てすぐ、その人は破片を海の方に思いっきり投げた。

　瞬間、空で爆発が起こったの。

　そう。破片に見えたそれは爆弾だったんだ。

　しかも水平線に沈む夕日をかき消すぐらいに炎の上がる爆弾。

　うん。だんだん思い出してきたけど、よく考えてみるとあの時代にあんな小さな爆弾って、おかしいよね……？

　薬のカプセルくらいの大きさなの。

　今思うとジュークボックスが壊れる直前、お金入れてた客が犯人で仕掛けていったのかな。

　いやでもなんのために？

　へ？ダイナーの住所？覚えてるわけないじゃんそんなの。

　……はいはいわかったわかった声大きい！

　えーとねー、アメリカで夕日が沈む方に海がある場所……

　いや無理！方向音痴にこんなこと考えさせちゃダメだって！

　とにかくルート66があった！これ以外は覚えてない、思い出せない！以上！

　……はい？ありがとう？これだけで住所絞れんの？マジ？

　どういうこと？

　これで俺のいる世界の不死川千（しなずがわ　せん）を助けることができる、って……

　あのさあ、ここで平和に電話してるあたしのこと誰だと思ってる？

　うん、不死川千だけど。

　えぁ、俺がジャパニーズサンドマンになってくるとか言われても……

　ま、まあ、頑張ってって言っとこうかな。

　ねえ、あず…………うわ、切りやがった。

　いやいや流石に意味不明過ぎるでしょ。

　もうちょっと説明してもらわないとわかんないって！

　ていうかあたしはあっちの番号知らないっての。履歴履歴……あれ？

　おかけになった電話番号は現在使われておりませんって。

　じゃあ、今かかってきたのは、誰の電話番号？

　いつ、どこからかかってきた電話……？

　ま、いっか。

　なんつーか、霊障とか怪奇現象とかもね、軽いもんなら慣れちゃったんだわ。

　言うなればあたし自身が怪奇現象みたいなもんだしね。

　何かあったら、また次の夜にでもかかってくるでしょう。

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Dr.No.9(Vtuber)からのキーワードで思い出した記憶です。

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