AI×民主主義×少数意見の尊重
偽物のジョン・スミス…さんね。
まーた特徴的な名前だねえ。いや、逆に特徴がないのかな?
スミス……Mr.&Mrs.スミスぐらいしか心当たりないな。
あと、スミス同盟?…殺し屋じゃないよね?うん。
はは、冗談冗談。
とにかくスミス君。君と会ったのは…勇者時代の、次の次の次ぐらいの人生だ。
今の時代から見れば全くの異次元時代、ファンタジーな世界観だと思ってもらっていい。
あたしが勇者だった頃はいわゆる絶対王政がメインだったんだけど、さすがに時代が変われば流れも変わる。
民主主義を求めて、いわゆる平民たちが決起集会を起こしたりし始めた頃だった。
毎日権力者達が民衆に襲われたり罵倒されたりしていたな。
当時あたしの立ち位置は権力者側で、スミスくん。君は民衆側だった。
まあ権力者側といっても、その頃は前世の記憶をきっちり覚えて行動していたからねー。
いわゆるブレイン役……アドバイザー兼軍師のような形として抱え込まれてたな。
多くの民を扇動するリーダーを、そう、君を押さえつけるよう命じられていた。
日夜権力者を攻撃する民衆の中には声の大きいマジョリティもあれば、少数意見の尊重を求めるマイノリティな派閥もいる。
あたしは一枚岩ではないわずかな隙間に着眼して、敢えて君をサポートしたんだよ。スミスくん。
君の行動がまるで神の思し召しかのように上手くいくように。
もちろん、こちらに大き過ぎるダメージが来ないように裏でコントロールしてね。
それを知ってか知らずか、微妙にバラけていた集団の意見は偽物のジョン・スミスを崇めるようになり、統一されていった。
元々集団をまとめあげるカリスマもあったようだしね。
あたしに転がされていることを知ってか知らずか、君はどんどん祭り上げられていった。
そして今ある政権をひっくり返すより、自分達の国を作った方が早いと考えを変えてくれたんだ。あっさり別の地に移動して、独立した国家を作り上げた。
君は民主主義を叫ぶ子羊達の扇動者になり、神になり、そして王座に君臨したんだ。
ただ、その土地は地下帝国に鬼的な……六本足で高速移動する気象の荒い種族が住んでいてね。
そ。勇者時代に取った杵柄ってやつ。
その国が無事にその種族と和解できたのか、それとも暴力に屈したかは思い出せないままかなー。
とにかく、いくらあたしが美人で優しい花屋の娘の姿をしていたからってあんな簡単に絆されちゃ駄目よ?って話だよ、偽物のジョン・スミスくん。
あー……そういえばスミスと言えば映画のマトリックスも思い出すよね。
エージェントスミス。電脳世界のお話。
電脳。
そうだ!AIの起源って知ってる?
「神を人の手で作り上げたいという古代人の希望」なんだって。
君を無事王座につかせて、危険な土地に誘導し終えた時は敵ながらとんでもない達成感だったな。
神を作りたい古代人の気持ち、わかっちゃったかもなんて。
まあ、悪いのはあたしに依頼してきた権力者っつーか国の大臣なんだし、許してよ!
それじゃーね。また次の夜にお会いしましょ。
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「偽物のジョン・スミス」さんからのキーワードで思い出した記憶です。
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