鶏皮×柚子胡椒×ペペロンチーノ
チャオ!
はは、なんとなくイタリア語で挨拶しちゃった。
そうだね。りょうぞうさんと出会った時、まさにイタリアだった。そしてあたしは一羽の白い鳩で、りょうぞうさんは、船で海を行く冒険家チームの料理長だった。
その船は内部で二つにわかれて派閥争いしてたみたいでね、こう言っちゃ悪いけど……見てて退屈しなかった。
マストに止まって見下ろしてると、船旅中のはずの人間達が自分の所属派閥を叫んで争ってるの。これがなかなか面白くてさ。
片方は「リモーネ、リモーネ!」って叫んでる。もう片方は「ペペロンチーノ!ペペロンチーノ!」って叫んでる。
そう。
リモーネはイタリア語でレモン、ペペロンチーノはイタリア語で唐辛子。
彼ら、料理の香り付けには何が最高かで争ってたんだ。馬鹿にしちゃ駄目だよ?船旅する上で食事ってメンタル維持のためにも本当に大事なんだから。ビタミンC不足は壊血病も起こすしね。
困ったのは板挟みにされた料理長……りょうぞうさん、君だ。片方の味付けにすれば片方が怒り出すし、だからといって設備的にも同じ料理を二種類作るなんて難しい。
限界だったんだろうね。激怒した君は、レモンと唐辛子両方とも料理にぶち込んだ。もうお察しだね?その判断が新しい味付けを生んだ。
ちょうど柚子胡椒みたいになったんじゃないかな。あの胡椒ってさ、唐辛子を指してるんだって。胡椒の古語が唐辛子らしいよ。
船員は全員柚子胡椒ならぬレモン胡椒を歓迎し、二つに分かれた派閥も無事一つのチームに戻って平和になった。
ただ、その発明から1週間ほど経った頃、残念なことにその船は漂流状態に陥った。食べるものがなくなって、全滅は避けないといけないって状態。
調子に乗って人間観察してたあたしはあっさり捕獲されて、りょうぞうさんの手で美味しく調理された。鶏皮の中までレモンと胡椒を擦り込まれてね。あー野生の鳩の臭み取りにも使えるんだねーって思いながら意識が消えて行ったよ。
当然、あなた達の冒険がうまく行ったのか、失敗したのか、そこまで見ることは出来なかったよ。だって食べられちゃったからね。
ふふ、気にしないで。鳩に生まれた時点で食物連鎖には抗えないこと気付いてたから。
大丈夫。ウミガメのスープみたいにはならないよ。あなたが前世、口に入れたのはあたしの肉でもあるけど、ただの鶏肉なんだからさ。
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「りょうぞう」さんからのキーワードで思い出した記憶です。
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