勇者×水×エコロジー

 今日はあたし、不死川千しなずがわせんが勇者だった時の話をしてあげよう。

 あたしが経験した勇者は、今の時代で言う交渉人みたいな存在だね。人間の国の王から、その土地や生活を脅かす魔物の国の王……いわゆる魔王に「魔物が人間を殺しているのでやめさせてください」って交渉する役だった。

 ざっくり言うと領地問題かな。

 まあ、交渉と言う名の破壊活動ではあったけどね。地位の高い魔族の子供人質に取って脅したりとか……あたしにとっての黒歴史なので。この辺りの話はやめとこっか。無意味だし。


 これを国に依頼されたテイじゃなくて、あくまで第三者である勇者が自分の意思で魔王に意見しに行ったという形式で謁見しなきゃいけない。聖剣を引き抜いたものが魔王と対峙する勇者に選ばれるっていうのは、その大義名分の押し付けね。

 国王に依頼されたってバレたら、魔物の国VS人間の国って対立構造が出来ちゃうもんね。

 だから実はカリスマ性とか戦闘力とかは必要ないんだ。

 そう。勇者に一番重要なのはカリスマ力でも、戦闘力でもない。交渉するための話術と、 魔物の立場にもなって考えられる頭だったってオチね。

 一番最初の人生の時の話だからさすがに記憶薄れてるけど、何千年何億年も経った今だから冷静に分析出来てるだけとも言えそう。


 それでさ。

 よくさあ、ゲーム見てると魔力や体力回復のポーションが出てくるよね。

 あれ、液体で描写されることが多いと思うんだけどさ。あたしの頃は粉だったんだよね。粉薬みたいな感じで流通してた。

 だってそれだけの量の液体運んで旅するって相当きついよ?水分含んでるってだけで腐りやすいし。

 まー、実際水に溶かして飲んでる人もいたから、液体でポーションを描写するのも間違いではないんだけど…そう言う時代があったのかもしれないけど!

 当時を知ってる身からするとだいぶ不便そうだなーって思いながらゲームしちゃう。

 空になった入れ物も邪魔だろうしねぇ。

 もしかしてポイ捨てしてたのかな?エコじゃないねえ、エコって概念が生まれたのも最近だけどさ。

 これから君たちはゲームで瓶入りの液体ポーション見るたびに「効率的でない上に自然に優しくない人たちだ!」って思っちゃうことになるね。

 ちょっとした呪いをお裾分け。あたしも意外にも患ってる人いたら教えてよ、昔の仲間だったかもしれないもん。

 ……なんてね!

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