第12話 残響

 スワイプ。

 君のことを早く忘れる為、スマホの写真を整理する。

 色んな思い出を清算する。

 スワイプ。

 最初の写真。

 教室のテラスで笑う君が可愛くて思わずシャッターを押した。

 桜の花弁を頭に乗せたまだ付き合う前の君。

 スワイプ。

 懐かしい写真。

 海に沈む夕日を背に君がこっち見て笑っている。

 講義の後バイクに君を乗せて海岸に向かって走ったけ。

 スワイプ。

 わりと最近の写真。

 忙しくて君に会うのも億劫になっていたのに君は面白い仮装ととびきりの笑顔で僕を元気づけてくれた。

 スワイプ、スワイプ、スワイプ…

 思い出から今に近づいていく。

 君の写真が少なくなって、とうとう一つもなくなった。

 外は雪が降り出した、明日はいつもより早めに出なければ。

 寝支度を済ませ、ベッドに全身を放り投げる。


 せめて夢の中では君に会いたくない。

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〈短編集〉インスタントフィクション 有田 賢生 @aritaka1998

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