第9話 缶コーヒー決戦

 街灯の真下。白い灯り。照らされる自販機に招かれた、そんな気がした。

 いや、そんな気がしただけで単純に寒いからHOTな缶コーヒーが飲みたかっただけなのだが。

 真っ白いLEDの前に立って品定めだ、ブラックさんが本命だが頭が糖分を欲している…がカフェオレちゃんは俺には甘すぎる……よし。

 ここは折衷案として微糖、君に決めた。

 狙いを定め、コイン投入口に小銭を飛び込ませる、百円玉、十円玉、そして最後の十円玉を探し求めて指を財布にいれハッと気付く、十円足りねぇ、既に百円玉一枚しか財布には残って居なかった。

 ちくしょう、ひとりごちて百円玉を挿入する、すると「カラン」と間を置かずに釣り銭の所から先刻の百円玉が顔を覗かせている、裏切者め。

 お札の面々には残念ながら英世の姿はない。

 この世はなんと残酷なことか。

 「硬貨って全然『玉』じゃないよな『円』だよな、百円円だよな」

 夜空に向かって負け惜しみ、コンビニに向かって歩き出す。

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