第3話 夕景

 街が沈んでいく十八時過ぎ。


 君と歩いた商店街が目に映る。

 君の好きなお店達、君の好きな人達。

 八百屋のおじちゃんも、魚屋のお姉さんも、花屋のおばちゃんも、だんだん元気を取り戻してきたよ。


 僕らの学校が目に映る。

 君と僕の始まりの場所だ。

 みんなもやっと落ち着いてきたよ。

 時々泣きだしちゃう子はまだ居るし、僕に対しても遠慮がちだけど、みんなは頑張っている。


 君の家が目に映る。

 告別式の後お父さんにもお母さんにも愛美ちゃんにも、誰にも会いに行けていない。


 目の前を鳥が通り過ぎた、君の好きだった鳥だ。

 なんて名前だったっけ?

 こんなことなら、もっと真面目に聞いておけばよかった。

 涙が何秒か掛けて地面に落ちる。

 僕の代わりに。


 僕は臆病な足を、後ろに一歩踏み出した。

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