第11話 邂逅④
二人の間合いは約3メートル。どちらかが一歩でも踏み込めば相手の間合いに入るだろう。ジェリドはふっと息を吐くと、サシャに言い放った。
「お前の剣技はなかなかのものだ!だがエルドラドの金貨はいただく。お前は俺にひれ伏す。両方だ!」
「ふん!さっきからお喋りなやつ!」
サシャが再びレイピアで突きを繰り出す。
「こんな単調な技で!何を!」
ジェリドが長槍で弾き返す。西方民は武器の扱いが苦手と言われるが、ジェリドの槍さばきはなかなかのものだ。素早いレイピアの突きを長尺の武器で弾くには相当な技量がいる。
「お前!なぜ、レイピアなんぞを使う!」
既に技を見切ったか。ジェリドは次々に繰り出される突きを弾いては、反撃の機会を窺った。レイピアは、細見の刀身が美しい剣だ。だが、その見た目に反して一定の重みがあり扱いが難しい。一撃突きを繰り出した後は、その細い刀身故に防御に難があるのだ。一瞬の隙を見て、ジェリドは横殴りに長槍を振り回した。サシャが細見の刀身で受ける!
「叩き折ってやる!」
だが、長槍はレイピアの切っ先に一瞬触れたものの、穂先はふわりと空転し、ぶわんと風を切った。
「こいつ!このタイミングで流すか!」
ジェリドがガキン!と剣を弾けば、返す刀でサシャが再び突きを繰り出してくる!サシャの攻撃の一瞬の間に、ジェリドが槍を振り回して反撃する!
攻防は速度を上げ、激しさを増していく。
赤馬が嘶き、ぎりりと金属が擦れる音がしたかと思えば、ジェリドの黒髪と、サシャのブロンドが目まぐるしく靡いては、美しいコントラストを描いている。
阿吽の呼吸で攻防を繰り出す二人の所作は、まるで熟練した技を持つ師弟の激しい演舞を見ているようではないか!
ブラッドは、この闘いを固唾を飲んで見守っている。
「なんと・・・」
ハッと我に返り、防御魔法で加勢しようと体制を整える!しかし、まるで二人の攻防には隙が見当たらないではないか!このまま回転速度を上げ続けたら、どうなってしまうのか。二人とも溶けて美しい黄金色のパンケーキになってしまうんじゃないだろうか、と下らない妄想に浸りながら、この初老の宰相は、美しい決闘に暫し陶酔するのだった。
暫しの攻防の後、サシャの突きがジェリドの浅黒い頬を掠めた。
「ちっ!こいつ、まだ速度をあげるかっ!」
長槍で大きく弾くと、ジェリドは一定の間合いをとった。
「剣技だけで、調子に乗るなよ!」
「どうせならお前らにも見せてやる!〝トリガー〟を・・・!!!」
ジェリドが長槍を天に向かって突き上げると、立ちどころに砂塵が舞い、空気が一瞬歪んで見えた。砂塵が竜巻上になり、ジェリドのまわりを吹き荒れる。青白い閃光がジェリドのまわりを方円上に包み込み、やがて球体のバリアを形成した。
「なんだ!あれは!」
ブラッドは叫んだ。先に屋上のバルコニーからも見えた眩い光だ。ガイア魔法ではこのような青白い閃光は見たことがない。
「トリガーだと……!?」
西方にはない魔法だ。しかし、呪文も唱えずに一瞬でこのようなバリアを張るとは、一体どのようなトリックを使ったのか!
「さあ、こいっ!」
サシャが構える。トントンと軽く飛び跳ねると、着地と同時にぐっと深く左足を地面に踏み込んだ。刃先の照準をジェリドの首筋に合わせる。
「いい加減、殺してやる・・・!」
一閃!!!サシャが飛びかかろうとするや否や、紅蓮の矢が眼前を掠めた。
「ファイヤースピリット!!!」
「クロス・ボウ!!!」
リナ・ローレンスとメロウ・アリーナの登場である。
亡国のエルドラド 蓮太郎 @kou1225
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