第6話 ガイア軽騎兵②

 ジェリド・アッサムは、大きくゆっくりと白い息を吐いた。

 敵陣中央で騎馬を止め、悠々と長槍を大きく振り被っている。


 ガイア軽騎兵団は既に周りを取り囲み、敵陣にただ一騎。

 敵後方部隊には一切の動きがない。

 この異様な様子に、軽騎兵団はただ見守る格好となった。

  

 ガイア軽騎兵隊長は叫んだ。


 「狼狽えるな!敵はただ一騎!近衛兵長ジェリド・アッサムを打ち取る栄誉は誰か!千載一遇の好機を逃すものがあるか!!」


 各々が顔を見合わせる中、いち早く、セシルとネビルが再び動く。騎馬を翻し、勢いよく突撃する。


 「我の名は、『政策と貴族』の家、ビラク家の長男。セシル・ビラクだ!名を名乗れ!」

 「同じく、我の名は、『政策と貴族』の家、エルンスト家の三男ネビル・エルンスト!」


 ジェリド・アッサムが黙って顧みる。二人はたちまち間を詰める!ロングソードを振り下ろし、ネビルは頭部、セシルは胸部を狙う。

 ガキン!!頭部と胸部に確かな手応え!


 「やったか!」


 セシルとジェリドは顔を見合わせた。鉄仮面超しの表情は分からないが、確かな手応えに反して、ジェリドは、まるで無傷の様相である。

 

 しかし、まさにその刹那!

 ジェリドが長槍を荒々しく振り下ろす!眩い光があたりを包む!青白い閃光が波状に拡がり、瞬く間に暴風が吹き荒れた。

 二人の躰は遥か彼方へ吹き飛ばされ、バザールのテントに突っ込んでいる!


 ガラガラドシャッ、陶器やカゴが割れる。散乱する。むくっと起き上がるセシル。頭部から一筋の血が流れる。傍らでは、ネビルが横たわっている。


 (なにが、おきた……今この瞬間、我らが吹き飛ばれたのか……!)


 四方八方にほかのガイア軽騎兵も吹き飛ばされているようだ。

 


 呆然とするセシルに向かってくるものがいる。

 長槍を振り翳しながら、こちら目掛けて突進してくる!ガッガッガッ…赤馬が目前に迫る。ようやく我に返るセシル。

 ジェリドは声を荒らげた。


 「あまり調子に乗るなよ!」


 (ま、まずいぞ…!!!武器は…!)

 

 手許のロングソードは真っ二つに割れ、手槍は数メートル後方まで飛ばされている。


 (くっ!このままではやられる!!!)


 ジェリドが長槍を振り下ろした瞬間!!!


 

 「ファイヤースピリット!!!」



 火柱が囲む!線上の炎がジェリドの前髪を焦がす!


 「くっ、女っ!魔法使いか!」


 セシルは慌てて飛び跳ね、数メートル後方に下がると手槍を掴んだ。

 

 「リナ・ローレンスか!」


 「まったくだらしない!ね!しかし、今日はなんて日なのかしら!」


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