プロローグ

プロローグ エルドラドの金貨

 この世界は、大きく分けて3つの地域から成っている。

 東方、西方、そして中央である。


 東方は、古来より伝統を重んじ、大国ガイアを盟主と仰ぎながら、何千年と王政を保っていた。国民は真面目で、勤勉で、争いを好まない。

 ガイアの王シグルドは、国民の信頼厚く、質実剛健。正に、王の鏡である。

 伝統を継承すること、これが東方の文化である。


 西方は、変化を好む。古来より小規模国家が乱立し、それぞれが独立独歩の気概を持っている。国民はハイカラで、享楽的で、喧嘩は日常茶飯事。

 都市国家の盟主たるガラリア王オグマは、多弁で明るく、そして行動的である。

 持って生まれたカリスマ性。これが国民を惹きつけて止まないのだ。

 革新こそ正義。これが西方の文化である。



 そして、中央。

 中央は、〝へそ〟と呼ばれている。

 東方と西方のパワーバランスに必要不可欠な戦略的緩衝地帯だ。

 中立、不戦地帯であり、この地の占有は、世界に大厄災「アヴァリス」を引き起こすという。古来には、黄金文明エルドラドがあったとされるが、所以伝説上のことである。

 


 だが、とある日のこと、ガラリア領内で、ひとつの古びた金貨が発見される!

 金貨は、大分劣化していたものの、そこには、はっきりと白樹ミラードが描かれていた。さらに、この金貨は金の純度が100%であり、この技術は東方でも西方でも存在しない。そして、なによりも、白樹ミラードは、〝へそ〟にしか存在しない樹なのだ!


 オグマ・ライオンハートは叫んだ。



 「これは、黄金の国エルドラドの金貨だ!」



 その頃、東方では、サシャ・アルバが窓から外を眺めている。

 少領主メジト・アルバの嫡男である彼は、ガイアの首都ロトに人質として軟禁されているのだ。


 ドカっと荒々しくドアが蹴り上げられ、屈強な兵士が2人入ってくる。

 

 「サシャ・アルバだな!屋敷からでろ!今すぐにだ!!」


 「なぜ」


 「王宮に向かえ!決して寄り道などするでないぞ!」


 不満気な顔をしながら、サシャは身支度を整え、屋敷を出た。


 早朝。太陽はまだ東の低い位置にある。

 柔らかな陽光が、サシャのブロンドの髪をさらに黄金色に照らした。



 今、世界を変える冒険がはじまろうとしていた。  

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