第19話 お嬢様の来訪
予約投稿日間違えました。
一日早いです……ごめんなさい。
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──レイナ王女の来訪から一夜明け、俺はリビングで紅茶を飲みながら寛いでいた。
休日というのもあり、学校へ向かう必要もないので忙しくない素晴らしい朝だ。
因みに姉ちゃんは休日だとこの時間には起きて来ない。
どれだけ普段優しくとも所詮ヤンキーだからな……意味もなく、こんな健康的な時間に起きては来ないだろう。
「……ふぁー……おはよーゆうじー」
レイナ=クイーンブラッド。
静かな朝だと思ったのにコイツが居たわ。
そういえば客間で寝てるんだったな。
場所はリビングの直ぐ近くだし、テレビと生活音で起こしてしまったか。
もっと静かにすれば良かったな。
「……ちっ」
だけど、パジャマ姿で現れたから思わず舌打ちしてしまった……服がはだけてんだよ。
「どうして舌打ちするの?ねぇ?」
適当に言い訳しとくか。
いきなり舌打ちは失礼だよな……
例え相手がメスガキでも……
「だって優雅な朝が台無しなんだもん」
「そんなの知らないもん」
「言い方、真似してんじゃねーよ」
「……ダメ?」
「別に」
「へへ〜……だもん!」
「おいおいおいおいおい、今のは『全然気にしてないから何回でも使って良い』って意味の『別に』じゃないわ」
「じゃあ沢◯エリカ?」
「なめてんの?」
「……ふふ」
「あん?どういう笑いだよ?」
「子供みたい!!」
「………やっぱり舐めてんの?これ以上はケンカになるぞ?ええ?」
もう嫌だわ子供は……凄く嫌、メスだし。
でもメイドのクソフィアさんが居ないだけマシか。泊まって良いのはレイナだけって事を強く通したんだからな。
……いや……待てよ?
「クソフィアバカメイドと護衛は何処に泊まってんの?」
「んー?護衛は二人が交代で近くの車に待機してー、残りはク……ソフィアと一緒にホテルに泊まってるよー」
(ソフィア凄い言われようだなぁ、わたしも間違えて言いそうになったよ)
「………じゃあお前もホテルで泊まったら良いやんけ」
「……うーん……れいなね?むずかしいはなしわかんないの」
「………やべぇ、怒りで頭が変になりそう」
俺は紅茶を飲んで気持ちを落ち着かせる。
(ふぅー落ち着いてきた)
落ち着いたし、もうこのガキ外へ放り出そうかな。
でも一度引き受けてるし、前金も半分頂いてしまってるし、今更それは無理だ。
「ユウジー!ホットコーヒー飲みたいー!」
俺に作れと……なんて奴だ。
ってか、黙ってればしれっと今から作ってやるつもりだったのに、催促されたら途端に嫌になるわ。
「……ホットコーヒーは匂いきついから作りたくない」
「え?」
「……苦手なんだよ、コーヒーが」
「でもコーヒー牛乳飲んでたよね?」
「苦味ないじゃん。コーヒー牛乳とかカフェオレは好きなんだけど……何ていうか、苦い飲み物が苦手かもしれない」
「でも今飲んでる紅茶も苦いよー?」
「いや、紅茶は大丈夫」
「なんでー?」
「なにが?」
「苦い飲み物が苦手って言ってたのに、それじゃ矛盾してるよー?」
「いやだってさ……」
「じゃあさー、緑茶とかは?」
「え?普通に飲むけど?」
「でも緑茶も苦いよねー?」
「…………」
「あれれ〜?おかしいな〜?さっきから矛盾してるよー?」
「なんでそんなに追い込んで来るの!?別に飲み物の好みなんて人それぞれだし、別に良いじゃん!!俺だって自分の味覚について詳しく知ってる訳じゃないんだよ!!ある程度は適当に生きてるんだからコーヒーが嫌いでコーヒー牛乳が好きで問題ないんだよ!……違うか!?」
「ご、ごめん……そんなに怒るとは思ってなくって……」
「分かれば良いんだよ」
「……意外に良く喋るね」
「……ありがとう……コーヒー飲む?」
「褒めてないけど……え?良いの?」
「いいよ、自分で飲まなきゃ被害ないし」
そもそも最初は作るつもりだったし。
「匂いは?」
「いや、そこまで神経質じゃないよ」
「そ、そう……」
(さっきまでの会話なんだったんだろう。でも突っ込むと激しい返しが来そうだから辞めとこう)
──それはレイナの直感的防衛本能。
そして、その直感は当たっていた。
レイナは王族的ロイヤルな直感で、面倒事を回避したのである。
「因みに」
雄治は徐に口を開いた。
「うん?」
「俺、休日の早朝はテンション高いから、変な絡みしないでね?」
「うん、先に言って」
(あーめんどくさかったぁ)
「……………なぁ」
「ん?」
「今、めんどくさいと思っただろ?」
「ひぃッ!?」
─────────
それから時間が過ぎ、昼頃になると姉ちゃんが2階から降りて来た。
そして3人で談笑しながらゲームをする。
何だかんだで客人が居ると気を使う。
歓迎している相手ではないけど、一日中暇そうにされると坂本家の恥になる。
退屈そうなレイナの欠伸を見てしまった以上、もてなさない訳にはいかないのだ。
……因みに、コーヒーは出してやった。
今はパジャマから私服に着替えている。
「くっ……弟よ、腕を上げたな」
「姉ちゃんは鈍ってんね」
今は対戦格闘ゲームで姉ちゃんをボコってしまった後だ。
次に、俺とレイナの戦いが控えている。
「……へへへ」
「姉ちゃん、何で負けて笑ってるの?」
「久しぶりに雄治と遊べて嬉しくてね」
「対戦ゲームにそこまで飢えてたの?」
「ちゃうわ」
「え?違うの?」
じゃあなんで喜んでるんだよ。
全く、意味がわからない……俺はこんなにもまともなのに、血の繋がった姉とは思えないイカレっぷりだぜ。
…………俺はまともなのにな!!
「ユウジー、勝負勝負ー!」
「よっしゃ!!」
俺はコントローラーを握ったレイナとの勝負に集中すべく、テレビ画面と向き合う。
実はこのレイナが中々に曲者だ。
現在、姉ちゃんとレイナ、共に六戦ずつ戦っている。
姉ちゃんには余裕で六連勝中だが、レイナとはなんと3勝3負。
つまり、互角の勝負を繰り広げているのだ。
ハッキリ言ってしまうと、姉ちゃんとの勝負は接待だ……あまりボロ勝ちしちゃうと申し訳ないので手加減していた。
それでもボロ勝ちしてしまうんだが……
正直、あまり面白くない。
雑魚とやっても得るものは無いのだ。
だがレイナは違う。
このガキとの戦いは本当に面白い……なんせ100%の力を出せるのだから。
「いったれ雄治!!」
負け犬(姉ちゃん)の遠吠えを合図に、俺とレイナは戦いを開始する。
「くっ!」
「あっ……ユウジ強い!」
案の定、戦いは白熱する。
手に汗握るとはこの事か。
初めてレイナを泊めて良かったと思わなくもない。
──ピンポーン、ピンポーン。
「ん?……客が来たみたい──ちょっと出て来るわ」
チャイムが鳴ったので、姉ちゃんは俺たちに声を掛けてから玄関へと向かう。
隣のレイナはクッションに正座した姿勢で、声を掛けてきた姉ちゃんに会釈した。
──この隙を、俺は逃さなかった。
客人……その立場が仇となった。
俺と違い、レイナは声を掛けられたら無視せず反応しなくてはならない……礼儀として。
それが王女となれば尚更だろう。
そんなレイナが姉に声を掛けられた瞬間に垣間見せたほんの僅かな綻びを、俺は一気に攻めたてる。
「ああっ!?」
「よしっ!勝った!」
「ずるい!!私が頭を下げた隙に!!」
「え……ごめん気付かなかった」
「嘘だッッ!!!!」
「おぉ、怖……雛◯◯症候群末期かよ」
俺が勝ち誇り、俺の作戦に気が付いたレイナが悔しそうにしていた。
そんな時だった──
「レイナに客だよ」
「お邪魔しますわ、雄治様」
「ん?……あ、金城さん」
姉が客人を連れて来たかと思ったら、相手は金城可憐さんだった。
彼女は俺に満面の笑みで頭を下げると、次に険しい表情でレイナを睨み付ける。
「クイーンブラッド!!雄治様の家で何をされているのですか!?」
「………ふんっ!」
そういえば喧嘩してるのだったな。
レイナ王女はめちゃくちゃ嫌そうに目を背けている。
「クイーンブラッド!!」
「……私はユウジと添い遂げるの!」
「は?そんなガン◯ムのパイロットっぽく言っても無理だから」
「今日は変なネタが多いねー……でも、お金受け取ったでしょー?」
「ほ、ほほ、本当ですの雄治さま!?」
「いや、お金払うって言うから、仕方なく泊めただけよ?」
「じゃ、じゃあ私は1億円払います!!わ、わたくしも泊めて欲しいですわ!!」
「……1億円?」
「た、足りないのでしたら10億円払いますわ!!」
……え、そんな金額提示されても普通に引いちゃうんだが。
「カレン……ユウジの扱いが分かってない」
「ク、クイーンブラッド……貴女は一体、いくら積んで雄治様を落としましたの……!?雄治様ほど素晴らしくて、尊くて、気高きお方を幾らで落としましたの!?」
「…………………………15万」
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次回は6月26日 12:00に投稿します。
この作品も、連載を再開してから大勢の方に読まれるようになりました。
恋愛週間ランキング、日間ランキングの一桁に何度も輝いております。
フォロワーさんも少し前に2000人を超えたばかりだったのですが、早くも2500人を突破しました!!いつも読んで頂けて本当に嬉しく思います!!
次回は途中から母親の話になります。
めちゃくちゃモチベーションが上げりますので、これからも応援宜しくお願いします。
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