第4話 ”迷いの森”

 夕方になり、街に灯が灯る頃。

午後から出かけたきり帰ってこない二人の妹達が心配になって、

教会へとやってきたエイミーがいました。

物知りおじいさんに二人のことを話しましたが、

午後にお祈りをしていたのを見たきり、

帰ってきた気配はまだないと言いました。

そして、おじいさんは、

「見かけたら連れて帰るから、家で待っていなさい。」

と伝えました。

おじいさんはしっかり者だというのを知っているので、

心配で仕方ないながらも、頼るべきだと思い、

エイミーは家で帰りを待つことにしました。

そして、どうか早く帰ってくるように、

神様にお祈りするのでした。


 一方こちらは森の中。

二人は静かで穏やかな風景の中、

風に揺らめく木々や足下に咲いている小さな花に見とれて、

つい森の奥の方まで迷い込んでしまっていたのでした。

一面木に囲まれた中で、どの道を通ってきたのかもわからず、

ただただ時間は過ぎ、とうとう夕方になってしまったのでした。

すると、今まで穏やかだった森の中は一気に顔色を変え、

どこからか動物たちのうなり声が聞こえてきました。

さすがに怖くて仕方がなくなってしまったアイリーンは、

その場所に座り込んで動かなくなってしまいました。

その時、暗い森の奥の方から、黒くて大きな影が...。


 サーヤはその黒くて大きな影が怖いながらも、

”このままでは危ない”と強く感じたので、

嫌がるアイリーンの手を引いて、必死に逃げ出したのでした。


が、


サーヤは足下にある何かに足を取られて転んでしまいました。

体のあちこちに擦り傷を作り、ちょっと痛みも感じましたが、

それでもサーヤは妹を守る為に必死に立ち上がるのでした。


しかし、


振り返るとアイリーンの姿が見当たりません。

何度名前を呼んでも声が返ってきません。

次の瞬間、どこからか強い風がどっと吹いて、

そして、どこからか低い声が聞こえてきました。


「妹は預かった。

返してほしければ身代わりを連れてこい。

さもないと...。」


声が途切れると、足下からうめき声が。

すると、地面から何かがはい上がってきました。

それはサーヤの周りの地面からいくつも出てきました。

そして、それらはサーヤにゆっくり近づいてきました。

暗くてなんなのかよくわからない。怖い。

サーヤは大声をあげながらそこから逃げ出しました。

どこまでもどこまでも続く森の中。

気がつくと、サーヤはどこにいるのかもわからず、

ただただ怖くて、どうしたらいいのかわからず、

その場にうずくまって泣いてしまったのでした。

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