第2話 物知りおじいさん

 次の日。

太陽は雲にかくれて、灰色の世界を映し出していました。

今日は末っ子のアイリーンがお出かけをする日。

まだ幼いアイリーンの事が心配なので、

二番目のお姉さんのサーヤが一緒についていきました。

向かった場所は、時計台の北にある古い教会。

そこには、アイリーンが大好きな物知りおじいさんが住んでいました。

今日ここに来るのにはちゃんと理由がありました。

エイミーが聞いた噂話の詳しい話を知りたかったのです。

その事をおじいさんに話すと、おじいさんはこう言いました。


「その昔、教会の裏側にある森の中で、若い猟師が飼っていた犬達が姿を消してしまった。

 その後も、猫や他の動物達が森の中でいなくなってしまった。

 噂によると、森の奥には大きなオオカミが住んでいて、

 みんな、そのオオカミに食べられてしまったのかもしれない。

 人々はその森を”迷いの森”と呼んで、それ以来誰も近づかなくなった。

 だから、二人もあの森には絶対に近づいてはいけないよ。」と。


 この教会の裏には二つの道があって、

左側を行くとその”迷いの森”に続いていて、右側を行くと街の人達のお墓がある。

そのお墓の奥にも森があって、そこには古くから住む墓守の神様が住んでいるという。

その神様の名前をとって、そこは”バルタザールの森”と呼ばれている。


 そんな話をしていると、

「今日は暗いからもうお帰り。」

 とおじいさんは言った。


 帰り道。

アイリーンは”迷いの森”の話がどうしても気になって仕方ありませんでした。

すると、サーヤがこう言いました。

「明日の午後、お父さんとお母さんのお墓にお花をあげにいこう。」と。

そうすれば、森の入り口がどんな風になっているのか見る事が出来ると思ったのです。

アイリーンは”うんっ!”と言って喜びました。

二人はにっこり手をつないで家へと急ぎました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る