第9話 第一回目カウンセリングを終えて

 ここまで語った内容は、入院してからほぼ自身で思考してきた考察であり、メモを取ったりしてまとめたものをより深く練って考えたものであった。話し終わるまで五郎先生は最低限の相槌を打つに留めてくれたため、ひたすらに自分の考えをしゃべることに集中してしまっていた。

 入院生活によって、人とここまで長い時間話すことがなかった私は、第一回目の遁走までの話を終えるまでの体力が持たなかったようで、五郎先生にここまででの中断を申し出た。先生は快く応じてくれたため、この続きは次回、二日後とすることとした。

 カウンセリング終了後、五郎先生からは冷静な自身の人生の振り返りに驚きました、と言葉をもらった。私は疲れから、力なく笑みを返すばかりであった。いくらジムで体力をつけても、こういった会話の体力は短期間でひどく衰えるようだ。一応、電話での友人や家族との会話はしているものの、対面しての会話となると、別種の力が必要となる。そのことを五郎先生に伝え、私は自分の病室へ向かった。


 病室への帰還後、私は何をする気力も起きなくなってしまい、久しぶりにジムを休んだ。昼食はいつも以上に素早く平らげ、購買でひそかに購入していたポテトチップスも、あっという間に空けてしまった。失った精神的カロリーを取り戻そうと、体が必死なのだろう。

 その後はひたすらに眠った。夕飯を採った記憶はないが、どうやらしっかり食べてから寝たようである。

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