第8話 カウンセリング第一回目②
小学校へ進学した。私の通っていた小学校は、3つの幼稚園と一つの保育園から集まってきた子供達であったが、やはり出身の幼稚園の友達とずっと仲良く過ごしていた。水泳と空手を習い出したのも、この頃だ。まぁ、ほとんど遊んでいたようなものであったけれど、楽しかったのは覚えている。
ごくごく普通の小学校低学年を過ごした。ただ、父も夏休みが長かったので、その期間はキッチリと我が家の掃除に駆り出されて、そこまで手放しで楽しめる夏休みではなかったと思う。
高学年になり、この頃に初恋を経験した。はじめはよく分かっていなかったが、その頃に70年代フォークソングを家族で聞いたり弾き語りするということがあったため、その歌詞から類推して、自分が恋に落ちてるらしい、と把握した。結局、なにも伝えられないで終わったがね。
学校生活でも、勉強は出来た方で、その頃から勉強に対して慢心していたと思う。それと、学ぶ事の楽しさ、と言うものを、身につけられなかった気がする。
人を笑わせる事に、とてもやり甲斐を感じて、クラスの中では面白い人、という立ち位置になった。細かい記憶はないが、生徒会に入って、色々お笑い大会を企画したりしたよ。あの頃は、まだ向上心というものが擦り切れていなかったんだ。
少しずつ思い出を掘り返す作業は、精神的疲労も蓄積する。思い出したくない思い出や、痛みを伴う思い出を掘り返してしまうことがあるからだ。疲れを感じながらも、私ははじめての遁走までの思い出を再び掘り起こしにかかる。
中学生の頃の自分は、徐々に時代に追い付けなくなって、笑いの中心から、時代遅れの変わり者へとその立ち位置が変わって行った。家族で弾き語りをする70年代フォーク、特にさだまさしに心奪われて、その頃に流行っていた音楽を見下していた。アニメや漫画も見ずに、歴史シミュレーションゲームや、親の好きだった漫画にハマっていた。今思い返すと、あの頃は本当に、自分主体の趣味なんて無くて、ほとんど親の影響ばかりを受けて、それ以外を寄せ付けなかった空気を纏っていたかもしれない。逆らっちゃいけない、という念が、強く私の心を支配していた。勉強もそこそこ出来たが、あの時代に、自分独自の趣味や嗜好を発展させるという体験がなかったから、その後の人生で「上昇志向」が育たなかったのかも知れない。
自分の部屋はあったけれども、プライベートなんてなく、いつでも親は侵入してきたし、友達を家に呼ぶのは歓迎されていない様に感じていた。どこか心の中で、疎外感と寂しさ、自分なんてどうでもいい、という思考が、毒のように私の心に回り始めた時期なのかも知れない。
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