第6 ジム~午後の過ごし方

ジムには作業療法士とトレーナーが常駐しており、利用する各個人に合わせたメニューを考えてくれるという、至れり尽くせりな施設環境である。使用簿に記名し、軽く準備運動をした後、トレーナーからメニューを渡されるため、それに沿って運動をしていくのだが、必ず従わなければならないというものでもない。そのため、ランニングマシーン3キロの行程に、私はひっそりと心の中でバツ印をつけるのだった。

無理のかからない程度を見極め、1時間で本日の運動を切り上げる。シャワーは予約制であるが、本日は残念ながら夜にしか取れなかったため、部屋に戻った私は濡らしたタオルで体を拭くこととした。何か伝言がある場合、看護師が入ってくることがあるため、最初の1週間は部屋で体を拭くことにとても恥ずかしさがあったが、人間生きててそうそうハプニングが起きるものではないということを実感したため、今では遠慮なく全裸で体を拭くことにしている。

ちょうど昼飯時になった。

本日の昼は、ラーメンであった。かつての給食を思い出すが、ここはその何倍もおいしいラーメンを提供してくれている。付け合わせのサラダとラーメンを、ものの5分ほどで平らげてしまい、しばし昼寝をすることにした。


うっかりである。やらかしてしまった。昼寝から覚めて起きたら、時計は16時を指しており、その間に予定していた読書をこなすことができなかったのだ。司馬遼太郎著作の「燃えよ剣」、本日は読み始めるつもりであったのに。私は読書を断念し、入院当初から続けている、自分の生い立ちからどうして遁走をするようになったのか、という考察ノートを開き、思考の海に沈んでいくこととした。

改めて、自身の八方美人としてのふるまいの原因を探るところで、本日のシャワーの時間が来てしまう。私は「烏の行水」の異名をとるほど、風呂やシャワーに時間をかけないため、そそくさと済ましてしまえば、夕飯の時間となった。本日は生姜焼きとキャベツ、ヨーグルトであった。

食事が済めば、薬を飲むこととなる。私は今のところ、夕食後に安定剤を一錠処方されているため、ナースセンターでその薬を受け取り、水とともに嚥下した。

部屋に戻り、イヤホンを耳に装着。適当に音楽を流しながら、また自分の遁走について思いをはせつつ、眠気がひどくなれば眠りに落ちてしまう。大体午後9時には寝入ってしまう。

これが、ここ三か月で見つけた、私の療養中の過ごし方であった。明日は五郎先生のカウンセリングが待っている。おそらく長い話になるだろう。

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