6
01:48
なんだか無意識に印象に残る時間だ。
4:44みたいに。
今日はうなされるような事は無かった。
夜中にふと起きてしまっただけ。
トイレに行きたいちょっと起きよう、とか
そんな感じだ。
それでも俺が起きるまでに見ていた夢の内容はしっかり記憶に残っている。
しかししっかり覚えているつもりでも朝には忘れてしまうのが夢というものだ。
さっさと書くとしよう。
風が吹きすさぶ。
空を見上げると夜の帳が降り切っていた。
月が良く見えているので晴れているようだが星があまり見えない。
それは恐らく自分がいる場所に問題があるのだろう。
俺はどこか知らない大きな都市の摩天楼郡の中で最も高い所に1人立っていた。
黒タイツ一枚で。
今が何時かはわからないが俺の見下ろす町は未来的にきらびやかな輝きを放っておりどこか1つ明かりが消えればまた違う所に明かりが点く。
時折明かりの点いていない所が見つからない程にも明るくなる。
その光と光の間の道筋には多くの人々が行き交っていた。
きっと今、誰1人寝ている者なんていないのだろうなと思っていた。
黒タイツ一枚で。
その町の光が強すぎるから、
町の住人達は夜空の星のような遠く弱い光には気付く事等無いだろう。
今この世界に星座を見て楽しむ者はいるのだろうか。
いやきっといないのだろうな。
最早文明は自然からの完全なる独立を果たしていたかのようだ。
しかしきっとそれは
森羅万象からの孤立に他ならないのだと俺は眉をひそめ他を戒めるように強く思った。
黒タイツ一枚で。
いや俺は一体黒タイツ一枚の格好で何をしているんだ。
それもこんな強風の吹くビルの上で。
これでは2:50だ。
今回の自分の夢では自分という存在の意味が全くわからなかった。
このビルの管理人なのか。
気が触れたタイプの人なのか。
はたまた、神のような存在なのか。
何もわからず何も考えずにただ光る町を眺めていた俺は
見えない星の下でピョンと跳んだ。
すると信じられない事が起こった。
黒タイツ一枚の俺がまるで特殊能力系スーパーヒーローのような驚異の跳躍力を発揮し自分から遠く離れているビルの天辺に難なく飛び移ったのだ。
そこで俺は半覚醒状態となり今回の夢について察した。
ああ、これはきっと楽しい夢だ。
そう思うと俺は更にビルからビルへと跳び回りながら未来都市を見下ろしていた。
もちろん黒タイツ一枚で。
どれだけ文明が発展しても人は己の力のみで飛ぶ事など出来ない。
自然からの独立と言えど結局大地に根を張って生きるしかないのだ。
そんな事を切なく考えていた俺は飛び跳ねながらふとなんとなくその大地に根付く街に右手の掌を向ける。
すると
音もなく街の一部が消し飛んだ。
俺は驚きもせず続けて今度は左手の掌を街へ向けた。
同じように街の一部が跡形も無く消し飛ぶ。
これは俺の掌から発射される巨大なレーザービームのような光によるものだった。
何故そんな力があるか等考えていない。
ただ俺は街の光に向け更に強大な俺の光を当てているだけだ。
掌から発射された円柱状の光が街に当たるとその部分が消滅していく。
その消滅した大地の先がどうなっているかは漆黒の闇に包まれていて全く見えない。
恐らく生命の一つも残ってはいないだろう。
俺はいつの間にか空高くに滞空して俺の手によって街が消えていく様を鳥瞰図のように見ていた。
大地からは離れすぎていて街の人々がどうなっているかもわからない。
きっと明かりを求めて逃げ惑っているのだろうな。
俺はそんな事を考えつつも淡々と手を街に向け続ける。
やがて街は暗く沈んでいき、静かにその存在を闇に溶かした。
ここまでが俺の今回見た夢だ。
最近見た夢の中では一番恐怖を感じていない。
寝汗も久しぶりにかかずに起きたものだ。
ただあれは何の夢なのかと考えると目が覚めていく。
あの黒タイツの俺は神だったのか。
だとすれば何故街を滅ぼしたのか。
神からすれば大地に巣食う虫を駆除したぐらいなのだろうか。
もしそうなら誰でも家に白アリが出たら駆除するのだからそれは“良いこと”か。
しかしその“良いこと”の基準を作ったのが人類であったならばその人類に攻撃を仕掛けてくる神は“良いこと”をしているとは認められない。神ではなく敵になる筈だ。
敵からの攻撃と思わずにこれを神からの天罰と考えてしまえば人類とは大地に巣食う白アリですと自ら認めるようなものだ。
もしもあの夢のような事が現実に起きたら、
そう考えを至らす事なんて熱心な宗教家以外する事は無いだろうな。
よし、人と神は相容れないと落とした所でそろそろ寝よう。
明日は休みだからただ寝よう。
予定も無いし。
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