5
まず最初に言っておく。
俺が見た夢は間違い無く、悪夢である。
それも最悪のだ。
正直書きたくない。
思い出すだけで吐きそうになる。
だがこの夢日記は、息が詰まるような俺の現実生活の中で唯一と言って良いほど熱中している趣味なのだ。
それをこんな所で止める訳にはいかない。
書かなくては。
…
今回の夢の始まりはベッドの上だ。
俺はそこに横たわっている。
全裸でだ。
何故か全裸で寝転ぶ俺は薄い毛布を1枚被っていた。
ちょうど下半身を覆いつくすように。
そしてその毛布の中には俺以外の何かがいるようだ。
もぞもぞと蠢いている。
以前までに見ていた悪夢ならばこの時点で言い様の無い恐怖を感じていただろうが今回の夢にはそれが無かった。
夢の中の俺は意を決して毛布を捲り上げた。
するとそこにはなんと、
エキゾチックでセクシーな、
黒く波打つ長い髪の美しい褐色肌の女性がいるではないか。
しかも全裸である。
いつぞや映画か何かで見た女優とかの記憶が今回の夢に影響したのだろうか。
現実でこんなお方にはお目にかかった事はない。
毛布の中、下の方で俺と同じく横になって肘を立てて頬杖をついている。
その姿から見える腰の曲線、張りのある大きな胸。先端の色形も綺麗だ。
胸にかかる長い黒髪がその谷間に流れていてなんとも艶かしい。
何も言わぬ女性と俺の目が合っている。
夢の中の俺も何も言わずただその大きな三白眼を見つめている。
この時、俺の夢の中にいる俺の“俺”は夢の中にも関わらず目を覚ましたかのように顔を上げ真っ直ぐ女性の顔を向いていた。
毛布の下の方にいたという事は“俺”の目の前に女性の顔が来ていたのだ。
これはとても正常な反応だと思う。
俺が2つの意味で硬直していると女性がおもむろに動き出した。
何をするのか。
俺は期待している。
夢だからこそ。
女性は目線をこちらへやりながらその口を大きく開け、
“俺”は一口ですっぽりと根元まで含まれてしまった。
ああ、こんな夢を見るのが子供の頃の夢だった。
見知らぬ異国の美女の口の中で“俺”は粘液と舌にもみくちゃにされている。
俺はただ無言で“俺”が受けた刺激に合わせて体をビクつかせている。
その刺激が強すぎたのか俺は女性の頭まで毛布をかけ直してしまう。
すると今度は俺には見えないが
毛布の中の刺激的な感触が変化し上下に動き出した。
これはなんとも筆舌し難い快楽。
まるで吸い取られるように、絞り取られるように、“俺”はされるがままに弄ばれている。
夢の中で夢心地に浸っていると上下運動に速度が加わり圧力も増してきた。
いよいよフィナーレが近づいて来ているようだ。
俺は何も出来ずにただ“俺”に意識を集中させていた。
するとやがて目の前が車に跳ねられた時のようにスローモーションに映る。
体の末端から電気のようなものが腕や足を辿り“俺”へと集まる。
その電気は一塊の大きな刺激的快感となりやがて“俺”の絶頂と共に破裂した。
素晴らしい夢だ。
こんな夢一生に数回見れるかどうか。
だが先にも書いたが、この夢は
悪夢だ。
快楽の最果てからようやく意識が降りてきた俺はふと毛布を捲り上げた。
そして毛布の中を見た途端、
夢の中の俺は大声で叫んだ。
女性がいなくなっている。
それは大した事ではない。
問題は毛布に隠れていた俺の下半身だ。
“俺”が
“俺”が縦に真っ二つに割れていた。
その光景は余りにも衝撃的過ぎる。
未だに顔を上へ向けている“俺”が頂点から唐竹を割ったかのように根元まで切れておりその断面は真っ赤に充血し血が滲み出ていた。
いつ?あの女性が?何故?
なんて事は考えもせず、強すぎるショックと夢ならではの幻想的な痛みに夢の中で完全に思考停止を喰らい、ただただその惨状を見続けていた。
目まぐるしく変わる筈の夢の世界で、
何故かそのシーンだけが俺の記憶に焼き付けるかの如く異様に長く感じた。
やがて俺は恐怖から目を背けるように跳ね起きた。
時計の表示は01:48
最悪の夢だった。
自分で書いておいて後半目を背けたくなる。
スプラッターに興味なんて無いのに脳は何故あんな夢を俺に見せたのか。
まだ脳裏に焼き付いている。
夢占いだ夢診断だと言うものの存在は知っているし少し気にはなってきているが。
こんな夢見たなんてとても人に話せるものじゃない。
何とか書き上げたが少し気分が悪い。もう少しゆっくり、タバコを吹かしてから寝よう。
俺の脳はそろそろ楽しい夢でも見ようとは思わないのだろうか。
それとも、楽しい夢を作り出す程の良い記憶や経験が、
俺には無いのだろうか。
そういえば確かに、
今日見た夢の前半部分も、現実では映像でしか見た事無かったな。
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