3
薄暗い。
しかしここは何処かは何故だかはっきりわかっている。
子供の頃住んでいた実家の2階だ。
その2階にある親父お手製の鉄骨ベッドに敷いたマットレスの上で俺は寝転がっていた。
どうやらまた子供の姿をした俺が主役のようだ。
寝転がったまま周りを見回す。
子供なら2人で寝ても余裕があるベッドが3つも並んでいる。
だがいるのは俺1人。
他の家族はいないようだ。
孤独の気配と薄暗さが夢の中を不安にする。
夢の中で過ごす実家は実物と違って家具や部屋の大きさのバランスがおかしくて気持ちが悪いし俺とはまた別の意識が有るように思えて不気味だ。
一度見た物をまたふと見ると、丸かった物が四角く変形していたり。
無かったはずの物が現れていたり。
また消えたりもする。
更に時々何者かの強い視線を受けているような気もする。
段々恐怖心が風船のように膨らんできた。
その強い視線に耐えかねるように俺は目を覚ました。
いや違うなこれは。
体がうまく動かない。
これは、まだ俺は夢の中にいる。
夢の中の夢なんて貴重な体験だ。
目を覚ましたつもりでいた俺は体を横に向けて寝転がっていた。
恐らく場所はさっきまでいた不気味な実家のベッドの上だと思うが何故か自分の周囲を認識できない。
起きてからもその記憶が全く無い。
多分、夢を見ている俺自身が見ている俺は目を瞑っているからだろう。
だが体が動かしにくい感覚はずっとあった。
そしてその感覚は段々強くなる。
ヒィーと低い耳鳴りが聞こえてきて徐々に音が大きくなる。
その音が恐らく最大に達したと思われたその瞬間、俺の体は自分の体をも包む程の大きな何かに押さえつけられているかのように動けなくなってしまった。
まずい、ヤバい、危険だ、
と夢の中で焦る俺は何とか見えない何かを振りほどこうと体を思い切り動かそうと試みる。
ダメだ、動かない、それでもこのままではいけない気がするから必死に体を振る。
この時、夢の中にあったはずの俺の意識は不思議な事に半分覚醒していた。
何と言うか。
現実の布団でうなされている自分と、その間下の別次元にいる自分が体を動かそうとしているのを同時に見ているような。
それを見ている俺の精神本体?も体を締め付けられるような感覚に襲われていてそれから逃げようと必死にもがいていた。
重い物を本気で持ち上げる時のような呻き声を上げながら寝返りを何度打とうとする。
そして、やっとの事で布団から飛び起きた俺は息も絶え絶えに目を覚ます事が出来た。
意識も目線も1つに纏まり己が成る。
しかし起きて尚急激な疲労感に襲われた俺はその夢の内容を書く事も出来ずそのまま再度布団に倒れ込んでしまった。
ヒィィィィイイイ
もう寝つきそうだという時、あの低い耳鳴りが遠くから聞こえ始めてまた徐々に近づいて来ている。
もう勘弁してくれ。
ヒィィィイイイイイ
耳鳴りの音が大きくなるにつれ自分の体がまた何かによって締め付けられていく。
もうこれは夢なのか現実なのか良くわからなくなっている。
俺は恐怖に身悶え声にならない声を上げながら体を必死に動かそうとする。
そしてまた俺は小さく叫び体を布団から跳ね起こした。
少しふらつく。頭も体も酷く疲れているようだ。
このまま寝たらまたあの得体の知れない夢に襲われるんじゃないか。
そう思うとすぐに寝る気にはなれず、一旦水を飲んで落ち着く事にした。
水を飲みながらふと時計に目をやると
01:48を指している。
何故だか気になる時間だ、やたら印象に残っている。
だが、
それよりも眠気が勝ちそうになる。
忘れない内に夢を書いたら、
もう寝よう。
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