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何処か知らない。見た事も無いような有るような。

場所は大きい部屋だ。

壁も天井も真っ白だ。

ドアが有ったかは覚えていない。

窓は確か有ったが外を見てはいない。


真ん中には10人ぐらいで囲めそうな程の大きな白いテーブル。

それでも部屋の半分も占めていない。

広い部屋だ。


壁際には俺のみぞおち程の高さの大きなテレビ台があり、その上にはテレビも置いてあるがテレビはさほど大きくなかった。古臭いブラウン管テレビだ。


真っ白な部屋ではあるが、夢の中の風景というものは気付けば色が着いている。


テーブルにはネイティブアメリカンとかの服でよく見るチマヨ柄のようなテーブルクロスがぴっしりと敷かれていた。

生成り色ベースで黒や赤、黄色に青と様々な色で柄を形成していて何となくキレイに思う。


チマヨのような幾何学模様は寝る前に目を閉じていると見えてくる光に似ている。

あれが見えてる時は体から疲れとか、そんな毒みたいなのが抜けてくような感じがして好きだ。



俺は部屋の中をゆっくりと、博物館でも回っているかのようにゆっくりと歩いている。


テーブル、壁、天井、テレビ、部屋に有るものは大体見尽くした筈だ。



ここで目が覚めればただの良い夢で終われたのに。


テレビ台に向かってテレビの左隅、台の上の空いているスペースを見ると何故か俺は急激な吐き気に襲われた。


夢の中で吐き気がするってどうも説明し辛い。

胃の中の物が上がってくる感じがして、でも痛いとか苦しいとかは無くて、涙目にもならない。

ただ、リズミカルに叩かれる音叉のように揺れる視界がとてつもなく嫌な気持ちになる。


そんな奇妙な吐き気に俺はテレビ台に手をつき身動きが取れなくなってしまった。


酒を飲み過ぎて吐く寸前の時みたいな深呼吸程ではないちょっと深めの呼吸で胃腸を抑えようとすると。



急な眩暈や立ち眩みのように体が一瞬だけ平衡感覚を捨てたような気がしたと思ったら俺は一気に、

テレビ台の上に胃から上げた物を吐き出してしまった。



勢い良くジャラジャラともカラカラとも音を立てて吐瀉物がテレビ台の隅に積み上がっていく。


ええ?と思う。

音がおかしいだろう。


俺は一体何を吐いているんだ。

今も吐き続けてる物を見ようとするが何故か視界が動かず自分の目線の先は壁だった。


夢の中ではどれぐらい時間が経ったかなんてわからないが結構長い事吐き続けていると嘔吐が急にピタリと止まり、俺はテレビ台に手をついた体勢のまま息を切らしていた。

吐くまでは苦しくなかった筈だ。


だが今そんな事より気になるのは俺が一体何を吐いていたのかだ。

その積み上がった“何か”を良く見てみる。




歯だ。




台の上に積み上がった歯の山。

俺のみぞおち程の高さの台の上から、俺の胸元までの高さがある。


何故俺の腹からこんな物が出てくるんだ気色悪い。しかも人間の歯では無いような気がする。

大量の歯は歪で大きく、それでも歯だと何故か分かる白みと質感があり、それでいて何者の歯かはまるでわからない。



急に例えようの無い恐怖感に体を包まれて俺ははっと鏡を見る。

さっきまで無かったような気がする壁掛けの鏡に映る自分にはしっかりと歯がある。


自分の歯がちゃんと生えている事を認めても安堵する事は出来ない。

再び自分の視界が壁を向き体が硬直する。


こんな夢にどんな意味があるのか。


もう夢を自覚した俺は覚醒を求めているのに、

俺は歯を吐き続ける。


テレビ台の左隅に歯を吐き続ける。




そして今。


布団から飛び起きた俺は早まる鼓動と不快な汗に悪夢の余韻を感じながらも忘れぬ内に、とペンを走らせている。



飛び起きた時、ふと見たデジタル時計は



01:48を示していた。


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