第2話 初めての友達
転校2日目にして豊宮 弥呼に気になる人物ができた。
惨状の自己紹介の後からずっと彼女を観察している。
恋愛感情から来る観察ではない。
新規官能小説のテーマは百合物。
彼女の欲望のままに白紙の上で踊らされる、謂わば、弥呼の
そう、哀れかな弥呼のターゲットになってしまったのは、
弥呼が盛大に転けた時、手を差し伸べてくれた女子生徒である。
現時点で判っている情報は、彼女はとある名家のお嬢様であり、才色兼備だということだ。
「豊宮さん。お昼、一緒にお食べにならない?」
突然、時雨に話しかけられ頭が真っ白になる。
「ハ....イイヨォ....」
「うふふ。豊宮さんって面白いですわね。」
(うふふ。って可愛い!)
「デ、デモ私コンビニノオニギリ....」
彼女が持っている重箱を見て、彼我の女子力に打ちのめされる。
「まぁ! 私、コンビニエンスストアのお握りを食べた事ないのですわ!」
「宜しければ、私のお弁当と交換なさいませんか?」
「ア....ムリムリ....!」
「何故ですの?」
「オ、オニギリ4ツト釣リ合ワナイ....カラ...」
結局、弥呼は時雨に押され重箱とおにぎりを交換した。
(うまっ! キャビア入ってるの凄い!)
「梅干し味美味しいですわね!」
(いやいや、貴女のお弁当の握り飯の方が美味しいよ....)
「ごちそうさまでした。」
弥呼はまだ食べている。
普段からかなり食べる人間だが、それ以上の量がある。
「無理なさらなくてもよろしくて」
咀嚼しながら弥呼は答える。
「コンナニ美味シイノニ、勿体ナイデス....」
ゴクン!っと飲み込み、満足感の中、合掌する。
「あー! 美味しかった!」
「ごちそーさまでしたっ!!」
時雨が両目を見開き、弥呼を見る。
「ふっ....やっと明るくなりましたね。」
「豊宮さんはそちらの方がよろしいですわ。固くならずに....ねぇ?」
自室にて、弥呼はパソコンに齧りついていた。
昼食からの記憶が殆どない。
時雨の台詞が頭の中を離れないのだ。
「ふふふ!! .......〇〇さん? 固くならずに、もっとリラックスして....そう。」
「ありのままの姿で私に身体を預けてなさいまし....」
弥呼は両手を頬に持ってきて悶える。
「きゃーー!! これよこれ!」
「私の求めていた台詞ぅー!!」
机に隣接した本棚を恍惚な瞳で見つめる。
これまで自身が執筆し書籍化した作品のタイトルが並んでいる。
空いているスペースに次なる作品が入るのが待ち遠しい。
まだ作案段階だが、自身がある。これは売れると。読まれると。
執筆者なら誰もが抱く感情であろう。
しかし、弥呼の場合、官能小説家としての経験が己に囁いている。
もっと仲良くならねば。
時雨の私生活から人には言えない秘密、性癖まで全てを調べ上げる。
「やってやろーじゃないの!」
そんな歪んだ感情が弥呼の脳内を支配する。
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