突然ですが、貴女たちを私の百合小説に登場させたいっ!!
桜子 さくら
第1話 自称官能小説家
「転校生の紹介です。豊宮さんどうぞ!」
教室と廊下を遮る
この前の学校ではクラスの隅っこで生きていたのだが、絶対に転校生デビューを飾ろうとしている。
教卓の前に立ち、教室を見渡す。
絶対に自己紹介で笑いの渦を巻き起こす。
これだけが今の彼女に許された、唯一の陽キャグループに入る方法。
「始めまして。豊宮 弥呼です!」
「あ、私のことは"やこっち"と呼んでください!」
「座右の銘は両目とも1.5です! ってー! それは座右の銘じゃなくて、左右の目じゃん!」
「ご飯は残さず食べます! 皆さんのお弁当、食べちゃうぞ〜!」
「趣味はー、特に無いかな! てへっ!」
全て出し切った。
何にも変えがたい達成感。
今頃教室は彼女の渾身のギャグで笑いに包まれいるだろう。
ニヤける口元を抑え目を開ける。
「..................」
時計の秒針が動く音だけが聞こえる静寂の空間。
(んんんーーー????)
(誰も笑ってない!!とゆーか、冷めた目をしてるーーーー!!!)
(やめて! そんな目で私を見ないでーー!!)
(私が陰キャだってバレてるの? いや、まだ諦めちゃ駄目よ! 豊宮 弥呼はこんな所で終わる女子ではない!)
「ま、まだ....」
「豊宮さん。」
「ア、ハイ....」
「豊宮さんの席はあそこだから。」
「ア、ハイ」
先生に促され、教卓から降りる。
「ッァ!」
彼女は転んだ。盛大に転んでしまった。
少々笑いが聞こえる。
(あっ、これ終わったわ。私の高校生活、転校1日目から終わったわ。やっぱ人生ってクソゲーじゃん。)
(あー、このまま死なないかなー。神様ー、仏様ー、キリスト様ー。)
優しい声が弥呼の耳に届く。
「痛いのですか?」
「保健室にお行きになられます? 私ご同行しますわよ?」
彼女が倒れた横の席の者が手を差し伸べている。
「ア、アリガト....」
席に着き、意識を手放す。
(来ったぁーー!!)
(次の作品の構想来たぁ!!)
(百合物を書こう!!)
(可愛くて美人で、めんこい女の子達がキャッキャウフフする小説を書こう!!)
彼女は気づいていない。
隣の席の女子生徒がゴミを見るかのような目で弥呼を見つめていることを。
(官能小説家miyako様に書けない展開はないのよ!)
(絶対売れるわ!)
(私ならわかる!!)
(エロ小説を書き続けて早5年....。高校2年生にして最高のエロ小説が完成するわ!)
(私の知識と経験を全力で筆に乗せる!!!)
(ま、私、"処女"なんだけどね!)
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