第一章 新米女中と嘘つき皇后②
風呂場の外は、
すると、化粧着から
「じろじろ見るな、少しでも変な
しかし、声は低いし口調も物騒。その激しい落差に、コチュンは百年の
「君がニジェナの風呂場に
〝彼〞と呼ばれたニジェナは、フンッと鼻を鳴らした。コチュンはそれを横目に見て、
「恐れながらお
「その通り。これはわたしたち二人で
「ぎっ、偽装結婚!?」
コチュンは目を点にして、二人を見比べてしまった。すると、ニジェナが
「この結婚は、バンサ国とユープー国が平和的に同盟を結ぶための政略結婚だ。しかし、おれの国の王女様が、どうしても輿入れに同意してくれなくてな。このまま王女を
ニジェナの話を
「男性が王女様の代役だなんて、いくら何でも無茶でしょう」
「そういうお前、おれの裸を見るまで、おれが男だなんて夢にも思ってなかっただろう」
ニジェナに図星を
「そうなるのも無理はないさ、おれは男にしとくのはもったいないほどの美形だし。化粧も
確かに、ニジェナは
「トゥルム陛下は、なぜ彼の噓に協力されたんですか?」
「そもそもバンサ国とユープー国は、領土と
トゥルムが
「この話がおじゃんになると、同盟関係は
「それに、わたしと彼はもともと見知った
トゥルムは、ニジェナに盟友を見る
「えっと……じゃあ、あなたは、いったいどこの誰なんですか?」
「それをお前に言う必要はない」
ニジェナ本人にばっさり
「自分の立場がわかっていないようだな。おれが噓の皇后、つまり、男だとバレたら、この偽装結婚は終わる。おれたちの秘密を知ったお前のことを生かしておくわけにはいかないんだぞ」
伝わってくる殺気の恐ろしさに、コチュンは縮みあがって悲鳴をあげた。
「ま、待ってください、わたしはお二方のことを誰にも言わないと誓います!」
「黙れ、平和のためだ、
ニジェナが声を張りあげたそのとき、トゥルムがコチュンの前に立ちはだかった。
「待て、さっきも言ったが、こいつを殺さなくても口を封じる手はある」
「どういうことだ?」
「わたしたちの偽装結婚を隠すためには、協力者がいると何かと便利だろう。そこで、この女中を利用するんだ」
トゥルムはコチュンに向き直ると、ゾッとするほど優しい
「名はコチュンと言ったか? 歳はいくつだ?」
「も、もうすぐ十五です」
「うん、少し若いが
「つ、
不安を押し殺して、しずしずと頭を下げるしかなかった。
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